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「怖い?」「……」
「怖い?」
そう、私[雨森弥太郎]は大変危惧していた。
ここ最近出番の無かった、社長[八王寺芽衣]の事を皆さん覚えているだろうか。
自称16歳の彼女は外見からして16歳と言われても不思議でなく、実年齢は誰も知らない。
その彼女が今、目前の机(社長室)に腰掛けている。
「怖い・・・とは―――何の事でしょうか」
「私の事だ」
「いえ、失礼を承知で私の正直な気持ちを言わせて貰おうと思いますが、
怖いとは程遠い、可愛いにあてはまるかと」
「それは子供に見えると言う事か?」
「いえ、タヌキの様な可愛さではなく、キツネの様な可愛さです」
入社当時では全く想像もできない肝の据わった発言。
どこか自棄っぽさも感じるが、少しは男前が増したと考えるのは、彼女の反応を見てまず無いだろう。
「……」