表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

あそこに見える何か

作者: 孑孑(ぼうふら)
掲載日:2026/07/22

このアパートの3階へと続く階段には、決して振り返ってはいけない「音」があるという。

まだ誰も、その音の正体を生きて確かめた者はいない。

闇に包まれた古いアパートの階段を上るとき、いつも決まって奇妙な音が聞こえる。

コツ、ポツ、水滴のような、骨がぶつかるような歪な音。

「ねえ、あそこに見える何か、音を出してない?」

同居人のナオが青ざめた顔で廊下の突き当たりを指差した。常夜灯のうす暗がりの中、黒い人影のような塊がゆらゆらと揺れている。

耳を澄ますと、音は次第に部屋全体へ響き始めた。

タ、プ… タ、プ…

それは水滴の音ではなく、粘り気のある何かが床を這う足音だった。そして次の瞬間、音は不自然に跳ね上がり、私たちのすぐ耳元でささやき声に変わる。

「見つかった」

ビチャリ、と湿った音が鼓膜のすぐ奥で弾けた。意識が白む直前、私は理解した。あそこに見えた何かは、音そのものとなって私の頭の中に侵入してきたのだと。


     【了】

ご一読いただき、ありがとうございます。

「振り返ってはいけない」という古くからの禁忌タブーを、現代のありふれたアパートの階段という日常の空間に落とし込んでみました。

闇雲に恐怖を煽るのではなく、「もし自分がその階段を上っていたら……」という静かなプレッシャーを感じていただけたなら幸いです。

音の正体を知る者が誰もいない以上、次にその音を聞くのは、あなたかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ