第六十五話 「ポテトばっかり食うなよ」
午後。
奏は、たくさんの惣菜を買ってきたのだが……
ポテト、ポテト、ポテト。
あと少しだけ他。
売れ残りのポテトが大量に入ってたらしく、妙に安かったらしい。
「なんか安かった」
「偏ってる」
「ポテト余ってたみたい」
「だからって寄せすぎだろ」
「いっぱい入ってた」
「いらない方向にサービス精神」
「米は?」
「ない」
「成立してない」
言ってる横で、ポテトを一本取る。
また一本。
間を置かず、もう一本。
カチ、カチ、カチ。
修理台の上、ピンセットが止まる。
「……荒い」
顔を上げる。
壁の時計を見る。
「ステップモーター、トルク落ちてる」
立ち上がる。
裏蓋を開ける。
ほんの少し触る。
カチ。
音が揃う。
その手のまま、ポテトを取る。
「雄一」
「ん」
「今の流れでいくんだ」
「問題ない」
「精密から油に直行してる」
「別系統だ」
「便利な言葉」
「ポテトばっかり食うなよ」
「軽いから」
「理由になってない」
壁の時計を見る。
一瞬で表情が戻る。
「クォーツは一秒ごとに駆動してる。電池節約のためだ」
「カチカチは節約の音」
「合理」
「ちゃんとしてる感じするのに」
「印象だ。精度とは別」
「分けるんだ」
「分ける」
「めんどくさい」
「当たり前だ」
また一本。
ポテトが減る。
「機械式は姿勢で進み変わる」
「寝方の話?」
「違う」
即答。
「重力と摩擦だ。ヒゲゼンマイの振れが変わる」
「難しい方来た」
「だから置き方で日差が変わる」
「結局寝方」
「違う」
間。
「……例えとしては許容する」
「ちょっと好き」
ポテトをまた取る。
迷いがない。
「リューズはcrown。王冠だ」
「また王様」
「巻く場所だから当然だ」
「当然なのそれ」
「当然だ」
「強い」
「不用意に触るな。ズレる」
「偉くなった気分になるのに」
「壊す」
「夢が短い」
テーブルを見る。
ポテトが減っている。
はずなのに。
「……」
「さっきから」
「ん」
「減ってる?」
「減ってるよ」
「……そうか」
少しだけ近づく。
皿を見る。
一本、取る。
「……」
「雄一?」
「……いや」
首を振る。
「気のせいだ」
椅子に戻る。
また一本。
また一本。
「ポテトばっかり食うなよ」
「軽いから」
「理由になってない」
皿。
まだ、ある。
「……」
もう一度見る。
「……減らないな」
「減ってるって」
「……」
少しだけ間。
「……触るな」
「ポテトなのに?」
「だからだ」
スッ。
「おい」
「確認」
「何の」
「美味しいかどうか」
「今そこじゃないだろ」
もぐもぐ。
皿。
まだ、ある。
「……」
「……」
「雄一」
「ん」
「今何時」
「三時二十二分」
「ありがと」
スッ。
「……」
皿。
まだ、ある。
「……」
「もういいです」
カチ、カチ、カチ。




