瑕疵物件
脚色なしの実話で愚痴を聞いただけなんでエッセイ分類にしていますが微妙に水ネタなんで夏ホラータグ入れました。
職場の仲間が一人暮らしを始めた。
昼休憩の時間が一緒になったので何か困っていることはないか尋ねてみた。
「親と暮らしていた頃と違い1人ですることが多いですからそれなりに…まだ段ボールに入ったままの荷物もあるし…」
少し、彼女の表情が曇った。
「実は…大したことではないんだけど。
出るんだよね、風呂に。」
「…出るとは?触覚の長い黒いアイツか?」
「そっちは台所の下水溝付近にでるね。」
…風呂に出るのはじゃないほうらしい。
風呂にでるソレは彼女が引っ越してきたその日から湯船に自己主張してきたそうだ。
大した異変ではない。
湯船に無数の白髪が浮いている、それだけだ。
定番の黒髪長髪じゃないあたり地味に攻めている。
ちなみに彼女は探せばあるかもしれないが無数に浮かせる程白髪は無い。
「湯船に白髪?長いの?」
「10センチあるかないか微妙な長さ。」
団子頭の彼女の髪にしては短い。
「長く入居する人が居ないらしく家賃が安かったのよね。」
借り手がついて目尻が下がる大家を想像した。
都内でバス・トイレつきが4万超えないのは…まぁ、借り手がいないよりマシなのでしょう。
瑕疵物件の告知は前回の住居者で起きたことのようで数名挟んでいると説明義務はなく詳細説明はなかったらしい。
某サイトで独居老人が亡くなっていることは調べたら分かったそうだ。
しかし、彼女の決断は継続して住むつもりらしい。
「湯船で自己主張するだけで金縛りもないしね。」
家賃の安さが一番の理由らしい。
当事者が我慢の範囲内なら口出しは不要なんだろう。
風呂で自己主張してくるって死んだ元住人に入浴見られてないか?というツッコミはしないほうが良さそうだ。
やたら自己主張の激しい元住人が風呂にいる激安物件。
貴方は住む?住まない?
触覚長い黒いアイツは台所にいるらしい。
水場2箇所占拠されてるじゃん。