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4話 悪魔が怖気付くやべぇ人形

ツミキのヤツは、いわゆる人形フェチと呼ばれるものらしい。意味は知らん。


まぁ人形と付いてることから、人形が好きとかそう言う感じだろう。現にツミキの寝室には大量の人形共が綺麗に並べられている。


種類や大きさは様々……何故か全く同じ人形もある。費用の無駄だ、同じヤツなんて必要無いだろうが……


正直言うと、ツミキは人形が好きとか……そんな次元では計り知れない気がする。


新しい人形を見るだけで息を荒げ、棚に並べられた人形を見る目は狂信者のそれだ。


その行動を見た瞬間、俺は悪魔だと言うのに悪寒が走った。ちょっとツミキが怖くなって来た。


……と、ここまで何だかんだ言って来たが、ツミキの人形への愛は本物だ。本物だからこそ、人形をこれ以上ないほど大切にしている。


だからツミキが滅茶苦茶忙しい時期の修羅場状態の仕事を、人形の世話の為に休むと言い出した時は俺は耳を疑った。


だって人形は意思を持たない無機物だ。


子供とかの世話ならまだ通るだろうが、その程度のことでツミキの仕事仲間に負担を掛けるほど重要なことじゃない。


だから俺はツミキをアパートから叩き出して強引に仕事に行かせた。


行かせるまでにツミキのヤツが色々と屁理屈を並べ立てたが、俺が代わりに人形の世話をすると言ったら渋々やっと行ってくれた。


……疲れた。本当に、疲れた。




ツミキの寝室には、ツミキが今まで集めた人形が棚やテーブルの上に並べられている。


人形毎に服や毛布が与えられ、1日に必ず一回はツミキに構われる。


そしてツミキが言う人形の世話とは、簡単に言えば掃除だ。人形に積もった埃や汚れを、敵将の如く見逃さず捉えピンセットで取り除く。前見た時は人形一体につき20秒で完了させていたそれは、熟練の職人技に等しい。


……やはりそこらの人間よりもツミキが1番恐ろしい。何で俺はあんな超人を手足にしようと考えていだんだ……少し考え直そう……


で、無論俺にそんなことをする根気もやる気も熱意も無いし、前提としてそもそも不可能。今の俺はパペット人形。人間とは大きさから違う。


今からやり始めても夕刻に差し掛かるだろう。だから俺は裏技を使うことにした。ツミキとは違う俺なりのやり方。


「風よ猛れ!」


風を生み出しその風を扱う魔法。汚れは無理でも、これなら風で埃を取り除き風を操作して一箇所に埃を集められる。


できうる限り威力調整には全精神力を注ぎ込む。もしこの風の魔法が人形に傷を付けでもした瞬間、俺はこの世に存在しないだろう。


俺はまだ死にたく無い。死にたく無いから全力で挑む。




「よし終わったぁ!」


大体人形の埃は取り除けた。あとは汚れだが……まぁそれはツミキに任せるか。こんな姿だと人形一体持ち上げるのすら困難だ。


ふぅ……さて、やることは取り敢えず終わった。あとは、集めた埃を片付けるか。


……さっきのように魔法でゴミ箱に入れられるが……この前のツミキの仕事場に隠れて付いて行った時、魔力を使い過ぎたからな……魔力節約を念頭にしておかないと魔力が枯渇するだろうな……


よし。魔力節約の為に、この集めた埃は塵取りで回収しよう。あの大きさなら俺も何とか持てる。


確かツミキが塵取りを使った時は、物置に入れたっけ……


物置を開けて……おっ、あったあった。良かった。想像以上に早く見つかった。


『ガタッ』


「ん?何だ?」

物置の奥に……何かいるな。


若干薄暗い……物置には確か懐中電灯も……あった。確かこのすいっち?とやらを上げることで光が灯る……はず。


よし、これで見えるは――――


『ガタッ……ガタッ!』


これは、笑えねぇ冗談だろ……呪いの、特段強力な呪いを背負った西洋人形……!!何で、何でこんなとこにあるんだ?!


見た限り本来あの人形は祠を造って封印しなくちゃいけないレベルだぞ?!人形と木箱に封じられていた俺よりもヤベェのが何でここにあるんだ……?!


一応ガラス箱に入れられているが、一応魔法陣による封印らしきものが見えるが、気休めに達するか怪しいレベル。


…………大人しいな。


……よし。俺は何も見なかった。俺はただ塵取りを取りに来て、今から集めた埃の回収に向かう。俺は全く何も見ていない……見ていない。




『ガシャン!』


「な、何だ?!」


音方向はあの物置……まさか!


もしあの人形が野放しになると、ここら一帯の人間に被害が出る。そして触れれば最後……


今の俺にどうこうできる力も魔力も無い。


そして最悪なことに今は7時。ツミキが帰ってくる時間帯だ。このままだと人形とツミキが鉢会ってしまう!それだけは絶対に避けなければ。


「ただいまー!」


「なっ?!」

最悪だ!最悪な状況に陥ってしまった!こうなったら一刻も早く人形を足止めし、ツミキに危険を知らせる!


『……ガチッ……ガチッ』


物置前に急行して来たが、やはりあのガラス箱を突破していたか。しかも歯を鳴らして、俺なんて用は無いという目をしてやがる。


「?!……が……ぁ……」


つ……強ぇ……一瞬で壁まで弾き飛ばされた。魔力の質も、俺が持ち合わせない呪いの強大さも……こんなふざけた姿じゃ足元に及ばないか……!


あの人形野郎……玄関に向かって……クソ!


「ツミキ!今すぐその人形から――」


「あっ……この子もしかして……」


……?ツ、ツミキのヤツ……あの人形の異質さを感じねぇのか?!……クソ!クソ!!俺を封じ込めやがったキサラギの野郎!こんな姿じゃ、あの攻撃を受けてから……床を這うことしかできねぇじゃねぇか……


「デーモが持って来てくれたの?この子を」


あの人形野郎!ツミキの視界に入った瞬間に動かなくなって……ただの人形を演じているのか!質が悪ぃ最悪な野郎……俺の生活の柱であるツミキを確実に奪おうと……


「あ、これ?実家から送られてきたんだけど……ガラス箱が勝手に割れるまで触っちゃダメって言われてたんだよねぇ……でも、でも!でも!!」


ツ……ツミキが目を輝かせて西洋人形を持ち上げそのまま優しく抱きしめた。あの人形から感じる呪いのレベルだと人体に影響が出るとかそんな次元では無いと思うんだが……


「……」


何だ?あの人形から何か聞こえて――――


『……ヘルプ……ヘル……プ……』


……よし。俺は何も見なかった。ツミキが欲求のまま色々と構い過ぎて西洋人形がそれに耐え切れず呪いが霧散消滅したなんてことは全く絶対見てない。断じて見てない。

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