2話 悪魔デーモの挑戦
俺はデスキラーダイグランドギャラクシアステッドクラシュリャクモ。悪魔だ。ツミキのヤツは俺をデーモとか腐ったような名前で呼ぶが、俺はでそう言うのを許している訳では無い。断じて無い。なのに勝手にデーモと呼ぶ。不本意だ。
あいつの親の親、キサラギの野郎にこの人形に封じ込められてから、良いことが全く何も起きない。
ちょっっと力加減を間違えて山1つ消し飛ばしただけで俺をこんな姿にするなんて、ほんと器が小せぇヤツだ。
確か現代太陽暦だと、大体70年か80年くらいか……そんな時間を人形に封じられて更に木箱に厳重に封じられて、時間経過で封印が劣化していなかったら今も木箱の中……恐ろしい。
あんな暇な時間はもうゴメンだ。絶対に嫌だ。
俺には今、3つの野望がある。1つは俺を縛るこの人形の封印から解き放たれること!2つは人形の封印の解除が無理だった場合に備え、脅威の無い安全な生活の構築!3つは…………いや、今はいいか。
まずその足掛かりとして、ツミキを俺の手足にしてやる。こんな姿じゃ何もできない。
人間1人を手足にすれば安定した生活は送れるはずだ。
その為に、まずはメシだ。俺特製の料理でツミキの胃袋を掴み、俺がいなければメシが喉を通らないほど依存させる!
その為まずは……って、料理ってどうすんだ?俺が最後に喰ったのは、気紛れに助けた人間から貰ったメシだったな。いやもう味なんてもう覚えてねー……
……まあ何とかなるか。
取り敢えずこれとこれを鍋に入れて油入れて火を灯したマッチを入れてその辺で拾った蜘蛛と木の枝と石とゴミ箱にあったティッシュにさっき見つけた中性洗剤とえんそ?系洗剤っていうヤツの中身を入れて……適当にかき混ぜて、できた!
我ながらよく出来たんじゃねーか?よし、一口味見を……
「かはっ……ま、まじぃ……にげぇ……毒食った味がするぅ……悪魔である俺が、ぶっ倒れるくらい……やり過ぎたか?変な物入れ過ぎたか……?と言うかありえねぇくらい不味過ぎんだろ」
まさか俺って料理の才能がねぇのか?いや、まだだ!こんなもんとらいあんどえらーだ!いくつも作れば1つ美味いもんは出来るだろ!
や、やべー……やっちまった……冷蔵庫と棚にあるヤツ、全部使っちまった。
やべー、こんなのバレたらツミキに殺される。散々殴られて嬲られて拷問に掛けられてゴミ箱にぶち込まれてそのまま焼却場で燃やされるんだー!
「はっ!」
い、いや、まだだ!まだ行ける!俺の泣け無しの魔力を使って……
「時よ巻戻れ!」
よし、この部屋の状況が俺が料理を始める前に戻った。
キサラギの野郎にあの木箱に封じ込められてから、俺の魔力は目減りする一方だった。
木箱の呪縛から解き放たれてからずっと、魔力の回復に専念して来た。だがそれもほんの少し。
本来なら数日休むだけで完全回復するはずの魔力は、枯れた井戸に水滴を一粒垂らすほど少量しか回復できていない。原因は分かっている。このパペット人形だ。この人形が俺の魔力回復の邪魔をしている。
今の時戻しの魔法で、ここ2日分の魔力を消費してしまった。こんなことに使うとは……本来なら、これは由々しき問題に他ならない。
だが今は、それよりも優先することがある……確かこの棚に料理本があったはず、あった!
今はまだ12時ちょい前。ツミキが帰るのは平均7時。その前にこの本を読み込んで、この俺に最適な料理を見つける!
できるだけ、簡単なのがあれば良いなー……
「凄い……中々のお味……知らなかったよ!デーモがこんなに料理が上手なんて!」
「当然のことだ」
あ、あっぶねー……あれから失敗しまくってもう何回か時戻しの魔法を使う羽目になったから、もう完全に後が無くなるところだった。
料理本にあったカレーってヤツを中心に作ったが……該当する食材やカレー粉が無かったりと、それ無しで代打アレンジを加えても失敗して踏んだり蹴ったり……
最終的に、俺のプライドからこんな簡単な料理を作ってもな……っと封印したチァーハンを作る羽目に……正直1発成功で完成したのは全く腑に落ちない。
今までの努力が水の泡と同義になったからなぁ……
「……疲れた」
「デーモ、どうしたの?」