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火龍ファイさんが棲む滅びの山から南方に位置するカナンという街で宿を取った俺達は……というより俺個人は以前この街で見た光景を思い出して妙な警戒心を抱いていた。

「神さん、本当に行かないのか?」

「う〜ん、やめておく。なんか嫌な予感が収まらないんだよなぁ。遠慮なく行ってくれ。キュリヤも行くなら気を付けてな」

『肯定、情報収集に行ってくる』

「はいはい、免罪符みたいに言ってるけど名物料理なんだろ? ま、何かあったらすぐにな?」

部屋で1人になった俺は街中に分体を放ち、一方で最初の7体の(ドラゴン)最後の1体である金龍の居場所も探ってみる。後者はやはり難航しそうだ。なんせこの世界のどこに有名な鉱山があるのかも分からない。誰かに聞いてみた方が早いかもしれないとすぐに弱音が湧いてきた。前者は意外と早く不穏な言葉をキャッチした。

「さっき遅くなってから余所者が3人連れで街に入りました」

「そうか、で? どんな風だ?」

「滅びの山から来たと言っていたので、(ドラゴン)にまつわるのかもしれません」

片方は先程和やかに話した門兵、もう1人の男が誰なのかは街に来たばかりの俺には分からない。

「あんな所にわざわざ行くんだ。恐らく(ドラゴン)絡みだろうな」

「ならば白でしょうか? 俺の故郷の村にも寄ったらしいですし……」

「ほぼ、ってところだな。もう少し泳がせろ」

「承知致しました」

監視されている? 路地で別れた2人それぞれを分体に追わせる。程なく男は一般住宅へと入っていった。中まで侵入する事はやめておき近くで分体を待機させる。門兵の方は真っ直ぐ歩いて進むと俺達が泊まる宿へとやって来る。受付の映像を見てみると店主に顔を近付け小声で聞いていた。

「余所者3人、来てるな?」

「……」

店主は無言で人差し指を上に向けた後に指を2本立てた。上の2号室という意味だろうか?

「……」

そのまま2本指を出口の扉の方へ向けた。2人外出の意味だったか……。

「邪魔するぞ」

門兵は小声で店主に告げ受付を離れると階段を上がってくる。俺に用があるのだろうと身構えていると扉がノックされる。

「サイか? 開いてるぞ」

扉が開かれると第一声。

「いやあ、疲れてるだろうに申し訳ない。少しだけ故郷の話が聞きたくてね」

「あぁ、さっきの門兵の……」

「ごめんよ、どうしても1つだけ確かめたくてね。ヴルカンには会ってきたのかい?」

呼び捨てに引っかかったが考えもせずに答える。

「あぁ、会ったぞ。それで麓の村へ持って行けと鱗を託された」

「何っ!? それは本当か!?」

「お、おぅ、確かに村長へ渡したから確かめに行けば良い」

「嘘……を言う意味はないな。……会ったってだけならまだしも……」

ぶつぶつと何事か呟いてから続ける。

「ほ、他に何かなかったか?」

「何かって……連れの男の方が火山灰を一掴み持って帰ったけど、そんなもんだな」

「いや、何か言葉は交わしたか?」

「あぁ、雑談みたいなものだったけどね」

「た、例えば?」

「例えばって、そんなのは俺達の間の話だからアンタには関係無いだろ?」

「隠すのは良くないぞ?」

「隠すも何も、ほんとに大した内容じゃなかったとしか……」

「神の話は出なかったか?」

「神の? ミルユー……様とか?」

「いや、邪神ゲルボーヤー様についてだ」

「え……っと、なぁかった、うん、無かったと思う」

「本当だな? 隠し立てするのは本当に良くないぞ?」

「ほんとだって」

「じゃあ君は(ドラゴン)を崇拝しているのか?」

「崇拝? ……崇拝か、むしろ……い、いや、崇拝ではないけど尊敬はしてるかな?」

「そうか……」

門兵からは急に安堵した空気が溢れた。何に対してなのかは分からなかったが更に続ける。

「それじゃあ他に邪神ゲルボーヤー様について知ってる事や見聞きした事はないか?」

目の前にいるぞ! とは言えないので適当にはぐらかす。

「ナラン王国の教会では既に少数ながら信者が生まれているとか?」

「そ、そうか! そんな遠くにも……」

「あ、あと、とっても重要な情報があった!」

「な、なんだ!?」

「邪神ゲルボーヤーという呼び名は創造神ミルユー様が付けたあだ名の様なもので、本当の名は……」

あれ? ミチオと言ってしまったら逆に面倒な事になるかも? いや、新たな神と同じ名前だなんて光栄って線で誤魔化せるか?

「どうした? 本当の名が別にあるのか?」

「あ、あぁ、ミチオ様というらしいぞ。そしてなんと! 奇しくも俺は同じ名前なんだよ。いやぁ、光栄だなぁ……」

「ミチオ様……確かなんだな?」

「神の誕生に立ち会った筋からの情報だから間違いないぞ」

調子に乗って先走ってしまったか?

「ふふ、ふははははっ! 神の誕生に立ち会った者とは? どこの誰だ? 俺も会わせろ!」

「おい、落ち着けって、さっきからアンタ失礼過ぎるぞ? この街の兵士とはいえ旅行者個人の部屋まで訪ねてきて質問責めってのは如何なもんだろうな」

「何!? 君は尋問を受けているんだ。正直に洗いざらい話す義務がある!」

「尋問? ふざけるなよ? もう出てってくれよ」

立ち上がり部屋の扉を開けて退室を促す。

「君はまだ分かっていない様だね。こうなっては仕方がないから詰所まで来てもらうよ」

「だから、なんでそうなるんだよ?」

門兵が俺の右手を掴んできたのを素早く振り解く。

「憲兵の職務を理由なく妨害。よし、現行犯だな」

「待て待て元々の罪状は?」

「そんなものは詰所で聞く」

「話にならんな! アンタ故郷の話を聞かせろって言ってたんじゃないのか?」

「う、うるさい! とにかく詰所ま……」

不意にキュリヤの声が届く。

『ミチオ、憲兵を名乗る集団に囲まれた』

「ちっ! そっちもか。俺も今まさに罪状不明のまま憲兵詰所に連行されそうになってるんだ」

『詰所で合流?』

「そうす、いや、罪も犯してないのに従ったらそれを理由に詰められるかもしれん」

『強硬手だ……』

「それは最後の最後だ。……だけど、手は無いか……。オーケー、一旦連行されよう。ただし、その前にはっきり大きな声でこう言え……」


「『誰に向かってこんな事をしているのかよく考えて行動しろよ? 分かったか? 行動の全てに細心の注意を払え!』」


「な、何を偉そうに! とっとと来い」

「いいか? 俺ははっきりと言ったからな? 後悔するなよ?」

両手首を縄で括られる。屈辱だが甘んじてされるがままに任せた。直前の言葉で多少萎縮したのか乱暴には扱われずに対応は丁寧なものとなっていた。宿を出る前に店主に釘を刺す。

「戻った時に部屋の物が紛失していたら容赦なく宿を潰すからな」

手首の縄を引っ張られながら歩いていく。俺に背中を晒して隙だらけの門兵は素人なんじゃないだろうかとぼんやり思っていると、5人の兵士に囲まれて俺同様手首を縛られたキュリヤとサイが連行されていた。

「キュリヤ、痛い事はされてないか?」

『肯定、物理的な暴力は受けていない。多少の暴言があった程度』

「サイは?」

「ふっ、2人がおとなしくしてくれてるのが最大の安心材料だな」

(お嬢に痛い思いをさせられる人間なんか果たして存在するのか?)

「うるさいぞっ! 黙って歩け!」

程なくして兵士の詰所に到着すると奥の部屋へ通された。大きな机の向こう側で椅子に座った男が口を開く。

「誰か説明を……」

「はっ、不審な旅行者がいた為、連行致しました」

「不審……理由は?」

「信仰に対する件です」

「そうか、では下へ……」

偉そうな男は立ち上がり先導する様に部屋を出ると階段を降りていき、俺達もそれに続く様に縄を引かれた。地下に降りると通路の右側に狭い牢屋が並んでいて、そこを通り抜けると広間の様な場所に入った。先頭を歩いていた男が部屋の奥で振り返り、兵士が部屋の隅に置かれた椅子を用意するとそこへ腰掛けた。

「君達3人には嫌疑がかけられている。異論はあろうが発言は許可された場合にのみ許される」

上司っぽい男のやや後方の左右に1人ずつ、部屋の出入口の左右にも1人ずつ、俺達の真後ろに1人、合計6人の兵士と俺達3人で部屋はやや狭く感じられた。

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