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滅びの山と呼ばれる火山帯で火の(ドラゴン)が朝のルーティンを終わらせて戻ってくるのを待っていた。

「やっぱり、あんた神様なんだな……」

「なんだよ、急に?」

「いや、あの怪物をちょっと懲らしめた? ふっ、冗談だろ……」

「今までも言ってたろ? なんかあったらどうにかするって」

「いや、まあ、そうなんだが、本当にどうにかしてるとは思ってなかったからな」

「ツーさんも言ってたからな、アイツは気性が荒いって。そういうのは最初に分からせるのが手っ取り早いだろ」

「犬猫の相手じゃないんだがな……」

暫く喋っているとファイさんが戻ってきてカラカラン……と、鱗を数枚足元に広げた。

「御前、俺様の鱗も持っていって下さい」

5枚だけ貰い例の如く1枚をキュリヤに渡した。

「それから……」

ぐんと大きく翼を広げるとゴロロロロ……と、喉を鳴らした。

発火(パイロ)

「お前の祝福を受け取った。ありがとう」

ぐいんっと頭下げると続ける。

「勿体ないお言葉です……」

その後、他の(ドラゴン)達との話を始め色々な話をしていく。

「闇と光のは仲良くしているんだな」

「ぬぅ、地の奴が……」

「木の野郎はのんびり過ぎだろう」

「水の奴は相変わらず自由か」

同胞の近況には感慨深く頷いていた。

「お前達最初の7体に会いに行くのも残り金龍だけになったな」

「御前、奴の居場所はご存知ですか?」

「いや、知らないんだけど自力で探そうと思ってるんだ」

「そうですか、少々面倒かと」

「やっぱそうなの? じゃあ、ヒントは?」

「ヒ、ヒント? ヒントですか……まず地上には出て来ないですね」

「あー、鉱山の中かな? とか予想してたんだけど……」

「流石です!」

「そうなるとあとは鉱物資源が豊富な土地を調べてみる感じだな」

「御前、ここはどうやって?」

「うん、火山かな? って予想からの、滅びの山(ここ)か海の向こうの暗黒の城って場所のどっちかに絞って、先にここへ来てみたらデッカい(ドラゴン)に脅されたんだ」

「御前、勘弁して下さい!」

「ハハッ、(いたずら)に命を奪うでもない限り咎めたりしないよ。お前達が星の守護者だって事は理解してるし尊敬もしてるからさ」

「ありがとうございます……」

その後も話は盛り上がったのだが、鱗を1枚麓の村へ持って行って欲しいと恐縮しながらお願いされた。(ドラゴン)達にとって落ちた鱗なんて無用の長物だが人間達にとっては極上の素材、或いは神聖視すらされる物。村にはこれまでに訪れた者が持ち帰った鱗が幾つかある筈と話すが、どの様に扱われているのかは不明との事。何かに加工されているのか、金に換えたのかもしれないと続けた。勿論、快諾するのだが一点気になる。

「ファイさんよ、俺がコレを村に持っていって理由とかを聞かれたらなんと答えようか?」

「はあ、山で(ドラゴン)に託されたとでも言えば良いのでは?」

「村の者でなくても大丈夫なのか? 不審に思われたり、妙な勘繰りを受けるのは嫌だぞ?」

「バハハハハ……御前がそんな事を気にされるとは……。そうなったら、その人間共を俺様が戒めてやりますよ」

「なあ、そんなに面倒な事なのか? (ドラゴン)様がご自分で持っていけば済むんじゃないかと思うんだが」

「サイ、コレはここまで訪れた者が手にする事が出来る物なんだよ」

「流石です御前……」

「良いか? 信仰の対象の元へ苦労して辿り着いて下賜される物と、その対象が自分達の集落まで降りてきて自分から差し出すのとは違うんだよ。実際的な行動も信仰の形としてもだな」

「御前の仰る通りです」

「ああ、分かった。物自体は一緒でも意味が違ってくるんだな。確かにその通りだ」

「そうと分かったなら、コレはお前が村の者に渡してくれ」

「なんでそうなる!?」

「元はお前の発言からスタートした(ドラゴン)巡りの旅だし、今の話を説明されなければ分からなかったペナルティだな」

「なんだよ、暴論にも程があるだろ」

(ドラゴン)の相手は俺がしたんだし、人間の相手は任せるぞ」

「まあ、分かった……」

「それでは御前、従者にはここの火山灰を持たせましょう。村の者共が訪れた際には持ち帰るという習慣があるんですよ」

「そっか、なんか小袋とかあるか?」

「そういうのは色々持ち歩いてる」

そう言ってサイは小さな巾着袋みたいな物に一掴みの火山灰を入れた。

「よし、それじゃあ村に行くか」

「御前、ご来訪感謝致します。何かあればなんなりと申し付けて下さい」

「おぅ、またな。あんまり人間に無茶すんなよ」

ファイさんに別れを告げて山を下っている途中。

『当機にお土産が無かった』

「ウォーさんが特別だっただけだろ?」

『肯定、ウォーさんは海の王者』

「ハハッ、デッカいウニ貰っただけで評価が違うねぇ」

大きなトラブルも無く麓の村までやってきた頃には昼時となっていた。塀や柵が見当たらないのは脅威となる魔物が周囲にいないという事なのだろうか?

「お母さん、誰か来たー!」

小さな女の子が俺達の姿を見て駆けていくと、母と思しき女性を連れて戻ってくる。

「旅行ですか? ここらの火山は見応えがありますよ」

「こんちは、旅は旅なんだけど火山からは戻ってきた所なんだ。ファイヤードラゴン様からこの村に鱗を運ぶように頼まれてね。誰に渡したら良いだろう?」

「まあ、ヴルカン様から! あ、ああ、確かにそれは……ちょ、少しお待ち下さいね」

そう言って女の子の手を握って小走りに村の奥へと走っていった。

「あとは頼むぞサイ」

「ああ……」

程なくして男性を伴って戻ってくる。

「ようこそいらっしゃいました。村の長の様な事を任されてるザガと申します」

「どうも、旅の途中で立ち寄った火山で(ドラゴン)様と縁があってな」

ロープで背中に括り付けていたファイさんの鱗を地面に立てた。

「村へ立ち寄るなら渡してくれと言われてな」

「いわ、れた……? ヴルカン様がそう仰ったと?」

「ああ、そうなるな」

「し、失礼ながらヴルカン様はその……いや、そういえば今朝は少しだけ朝を告げに飛んでくるのが遅かったんだったな……」

「あと、不審に思われたなら火山灰を見せろと……」

鞄から小さな巾着を取り出して村長に手渡す。

「た、確かに村の者は山へ出向くと火山灰を持ち帰る風習がありますが……」

「ねえねえ、お姉ちゃん、これはなぁに?」

『武器、幼児には危険性が高い為、触れる事は厳禁』

先程の少女がキュリヤの腰にあるモーニングスターを指差して聞いていた。

「しかし、ヴルカン様がそう簡単に余所者へ鱗を渡すとは……」

「勘違いするな。オレが貰ったのではなく、この村まで持って行けと言われただけだ。金を取るつもりはないし、見返りを求めてる訳でもない。なんなら鱗を置いてすぐに立ち去っても良い」

「い、いえいえ、申し訳ない。いかんせんヴルカン様は苛烈なお方なので少々信じがたいだけです」

「ああ、確かに恐ろしいと思ったのも事実だ」

「そうですか、そうですよね? そうなんですよ……」

1人うんうんと頷く村長。

「……それでは有り難く頂戴致しますね」

「ああ、これで役目は終わりだな」

いつの間にか俺達と村長の周囲には人が集まってきていた。

「す、すみませんね。小さな村なもんでちょっとした騒ぎでも起これば皆、顔を出してくるんですよ」

「構わない。ところで食事が出来る店なんかはあるか?」

「あ、ああ、そうですね、丁度お昼でしたね。それでは、い、いや、これは、あれ? ヴルカン様の鱗? はっ! 宴の準備をしなくては! おーい、お前達! ヴルカン様が鱗をお与え下さったぞ! 広場に料理を集めろ! 宴だ! こちらのお三方を歓待するんだ!!」

冷静になると村の一大事であると察した村長の号令に呼応して村の中央にある広場では村人総出で椅子やテーブル、飲み物が用意されて席へと案内される。

「なんか、大事(おおごと)になってるんだが……」

「まぁ、村の守り神から贈り物があればしょうがないだろ」

「ささっ、まず1杯、どうぞどうぞ!」

村長自らが俺達にお酌してくれる。

「お嬢さんはお酒じゃない方が良いかな?」

『否定、同じ物で大丈夫』

「すまん、オレは水かお茶で頼む」

「そうですか、分かりました。……それでは粗末な物しかありませんがお召し上がり下さい」

すぐに用意出来そうな物から調理が簡単な物と、各家から続々と運ばれてくる料理でテーブルはみるみるうちに埋まっていった。

「いやー、凄い! え? 何年振りだ?」

広場の中心には荷車にちょこんと乗せられたファイさんの鱗。それを村人達が順繰り眺めたりさすったりして喜んでいた。

「お前の爺さんが若い頃の話だから100年ぐらいか?」

第一村人だった少女も鱗をペチペチ叩いている。

「あなた方はどういった理由でここまで?」

「ああ、火山だな世界有数だと聞いたのと火龍様の噂も多少な……」

「この村はヴルカン様の庇護の元に成り立っております。しかしながら、やはり恐ろしさが勝ってしまうものなんです。ですから直接お会いしようと思う者はどうしても少ないんですよね」

「オレも最初はビビったが敬意を持っていれば取って食われる事はないと思うぞ」

「ハハッ、そうだな。最近は麓の村人が来ないって寂しがってたんじゃないか?」

「そ、そうですか! これは若い有志を募って一度お礼に伺うべきでしょうね」

「きっと偉そうな態度をしながらも喜ぶに違いない」

キュリヤは出てくる料理の全てを味見して回り満足していた。サイも特に面倒事に発展する事なく鱗を渡せた事に安心していた。昼間から唐突に始まった宴会にも関わらず、賑々しくもアットホームな雰囲気は素朴な村人達だから成立するんだろう。

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