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ダンジョンを攻略し始めて結構な時間が経過していた。戦闘はほとんどサイが担っていた為その疲労を考えていた。

「ちょっとしっかりした休憩にしないか?」

「ああ、頼む」

「なんなら仮眠しても良いし、食べたい物があれば買ってくるぞ?」

「ふはっ、ここは洞窟の奥だぞ? そんな近所のコンビニにお使いに行く様な言い草……」

「ん? まぁ、そうだけど出来ちゃうからな。ここにはマナ阻害系の魔法が掛かってるでもないし」

「いや、飯は大丈夫だ。ただ、少し横にならせてもらうか……」

鞄から薄い布地を取り出し、鞄を枕代わりにしてサイはごろんと寝転んだ。邪魔にならない様に声を上げずにキュリヤと話す。

「キュリヤの見立てだとこのダンジョンの難易度はどんなもんだ?」

『ここまでのトータル難易度はサーチャル遺跡の方が上、ただし直近の強い個体が出現する小部屋は脅威』

「人間だけでここまで来られると思うか?」

『不明、軍隊等の物量作戦が有効』

「それはあれか? 死者が出るの前提だな?」

『肯定、少人数編成であれば、サイ程度の戦闘能力を有した個体6名、有能な軍師1名で可能だと推測』

「ハハッ、サイ6人に囲まれるのは魔物が可哀想だな」

『否定、2名ないし3名が直接戦闘に当たり他はサポート及び軍師の護衛』

「戦略まで……」


30分程でガバッと起き上がるサイ。

「ふう! すまんな」

「大丈夫だよ。それより足りてるのか?」

「こんな所で何も気にせず眠れる方がおかしいだろ」

立ち上がり体の各部をほぐす様に軽い体操をしながら言う。

「完全な万全は望むべくもないか……」

「ふっ、そういう事だ」

トン、トン、と、軽やかに飛び跳ねて続ける。

「さて、行くか……」

第29階層、変わらぬ作りの部屋、灯りもある。中央には魔物が出るであろう仕掛け。背後では扉が閉まるが……敵が出現する気配がしない。

「なんも出てこ……」

「ピー、ピー、素体ガ確認デキマセン。ピー、ピー、素体ヲ設置シテ下サイ」

「なんだ?」

「ピー、ピー、素体ガ確認デキマセン。ピー、ピー、素体ヲ設置シテ下サイ」

「素体? 警報みたいな……」

「ピー、ピー、素体ガ確認デキマセン。ピー、ピー、素体ヲ設置シテ下サイ」

「うるせぇなぁ……」

同じ音声の警告が何度も響いていた後……。

「ピー、ピー、構造ノ設定ニ不備ガアル為一時全テノ仕掛ケヲ解除シマス」

「文言が変わったな……」

「ピー、ピー、構造ノ設定ニ不備ガアル為一時全テノ仕掛ケヲ解除シマス」

「構造の設定?」

「ピー、ピー、構造ノ設定ニ不備ガアル為一時全テノ仕掛ケヲ解除シマス」

ひとまず自分達に影響のあるものではないと確認。

「ピー、ピー、構造ノ設定ニ不備ガアル為一時全テノ仕掛ケヲ解除シマス」

そうして幾度かまた同じアナウンスを繰り返すと音声は止まった。それと同時に前後の石扉が音を立てて開いていった。

「なんか、ダンジョン側の不備?」

「ふっ、肩透かしだな」





――????――

「なんっ! なんでだよ? コロッサスmk2が出て来ない!? 素体の設置は3箇所共紐付けてある……。設定も、間違ってない。……コロッサスを解体して持ち去った? いやいや、まずい、いや!? あれ? ど、ど、どうなって……どうなるんだ?」





相も変わらず短い廊下の先には下階への階段、降りると更に短い廊下の奥に石扉。開くとまたもや例の部屋……部屋の造り自体は同じだったが中身は大きく違いを見せた。中央には大きな机、そこに両手を置いた人型の魔物。床下にはマナが溜まっているのが確認出来る。奥を見て右手の壁沿いにも机が並んでいる。左側には本棚みたいな物も見られる。なんというか、生活感がある?

「なん、なんなんだよ! お前達はっ!」

「神さん、あの人間も敵なのか?」

「人間? 人間じゃないぞアレ、気を付けろよ」

「そう、なのか?」

「ボボボボクの質問に……あれ? ぐふっ、女子もいるなんて、いけないパーティなんだな!」

部屋の奥側にはベッドに布団? ここで寝泊まりしているのか? アンデッドの癖に生意気だ。その近くの床下にも小規模ながらマナがとどまっている。

「ぐふふ、ボ、ボクはダンジョンマスター! そっちの女子は肉人形にしてやるから、おと、男たちは死ねっ!」

大きな机の上を数箇所人差し指で押す様な仕草を見せると寝床付近に人影が現れる。人間? それにしては保有するマナ量が多過ぎる様にも見える。

『報告、擬似生命体』

「お前、アンデッドの癖に人間もどき作っちゃったのか? アレか、リッチとか……あ、あー、そういう事か……」

「アンデッド? ボクは! 人すらも創造した神だぞっ!」

「神さん!? 1人で納得してないで……」

「サポーラ、男だけ殺せ!」

「畏まりました」

「なっ! 倒して良いのか? 神さんっ!?」

「今出てきた方はやっちゃって良いや」

部屋に居た男の中に【別次元の理】を確認した俺は背後へ別の人形を作り出して問い掛ける。

「お前、元地球人か?」

「な、なひゃっ? な、ななな何?」

腰を抜かし音を立てて盛大に転ぶ男に向けて続ける。

「日本人と言った方が良いか? こんなゲームみたいなダンジョン造ったぐらいだもんな」

「なによ? ボクは……。ななん、なんだんだよぉ!」

すると机の上の装置からチャイムの様な音に続き音声が流れた。

「ポーン、サポーラ、ロスト」

ビクンッと体を震わせてアンデッドの男は叫ぶ。

「サポーラ!? おまおまえ達! いい加減にしろーっ!!」

「いや、お前がな」

へたり込んだ男の腹を軽く踏み付ける。

「ぐぅ……」

「俺の質問に答えろ。お前は地球から来たんだな?」

「そ、そうしゅ……」

「創造神ミルユーから使命を与えられたか?」

「ひ、はい……。ダンジョンの設立……を……」

「なるほど、一応結果は出したってとこか」

「神さん、あの卑猥な女は倒したぞ」

サイが合流してきた。

「元日本人で間違いなさそうだぞ」

「なんて、こんな……ぐじゅ、ふぐ……」

「ここはやっぱ創造神(ポンコツ女神)の要請で造られたものみたいだな」

「そうか……」

「で、卑猥な女ってのは?」

「いや、ネグリジェ? みたいな薄いヒラヒラしか着てない女だったんでな」

「ヒュ〜、眼福眼福ぅ」

「そんな事より、だ」

「そうだな。ところでお前、経営はどうしたよ? ダンジョンの」

「け、けーえー……?」

「そうだ。折角造っても人が来ないんじゃ意味無いだろ」

「ずびっ、段々、ご、来なくなったから……」

「原因は? 対策は?」

「そんな、そんな事分かんないだろ!」

「何故? たぶんお前元ゲーマーとかだろ? だったらアップデートして新たなコンテンツの追加とかユーザーを飽きさせない工夫は必要だろ?」

「……アップデート? コンテンツの、追加……?」

落ち着いてきた男と話しながら擦り合わせをしていくと色々と分かってきた。コイツの名前はエイト、1990年代に惑星ディート(こちら)へ渡った事、世代的にはサイと近い事、セ◯サターンやプレイ◯テーション(初代)の話に異常な執着を見せたり、ついていけない俺とサイにがっかりしたり、俺の時代ではそのレベル以上のゲームが進化した携帯電話であるスマホで遊ぶ事が可能だと知った時には血涙を流す勢いで悔しがってみせた。ちなみに2000年代初頭に転生したサイもスマホの話には食いついてきた。


「でだ、俺達はお前を咎める為に来た訳じゃなくて純粋な挑戦者だ。クリア特典とかは?」

「あ、もう長い事ここまで来る人がいなくて忘れていたナリ」

部屋の中央にある大きな机の引き出しから何かを取り出し、3人にそれぞれ手渡していくのだが……。

「ぐふ、お主かわいいナリなぁ……」

キュリヤの手を両手でにぎにぎしながら口説き始める。

『排除の許可を』

「出さんぞ。エイト、お前にうちの娘はやらんからな」

『否定、娘ポジではなく正妻ポジと訂正を要求』

「どっちでもいいわ! それにお前にキュリヤは扱いきれない」

「ぐぶぅ、サポーラで我慢するナリか……」

「ん? サイが()ったって奴か?」

「そうナリ、ダンジョン内であれば死亡しても……ほら、この通り」

すると、サイが卑猥と形容した人間もどきがエイトの側に控えた。

「ぐふふ、ボクのワイフ、サポーラちゃんナリ。……それにしてもコロッサスはどこに消えたナリか……」

「あ゙! ハハッ、そういう事か……」

「どうした、神さん」

「いや、大丈夫……。で、この玉はなんだよ?」

「そ、そうそう、それは従獣珠(じゅうじゅうじゅ)って名前で、好きな魔物にぶつけるとテイム系のスキルの有無に関わらず従属化可能という代物ナリ」

「ふぅ〜ん、なんか微妙だな。1回限り1匹のみだろ?」

「…………」(ふっ、ポ◯モンか……)

「だ、だけど、強い魔物も使役出来るナリよ?」

「ん? サイ、なんか俺を見てる?」

「……いや、どうなるのかと思って」

「あ、そうだ、あとは入場カードをお持ちナリね?」

差し出されたカードを机の上の装置に通すと……。

「ふっ、ご丁寧に攻略を示す仕組みか」

カードにはなんらかの攻略を表す文字なりが刻まれたのだろう。

「これで、ダンジョン完全攻略か?」

「そ、そうナリ。さ、最初はどうなるかと思ったけど、ボクも久々に攻略者と会えて嬉しかったナリ。……それに日本人にも……」

サポーラという人間もどきの尻をさすりながら感傷的な台詞を吐く上級者エイト。

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