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ナラン王国カラーム領南方の草原、北西方向へ進めば我が故郷である森"トレスグリューン"へと辿り着くだろう。

「こんな所にいつまでも居てもしょうがないよな。サイはボーツまで送れば良いか?」

「……いや、神さんの予定は?」

「無いよ。基本的にいっつも無い」

「ふっ、思い付きで行動してあちこちで悶着を起こすのが仕事だったな」

「失礼だな! 深遠なる神の思考を……」

『否定、ミチオの行動原理は好奇心のみ』

「ちゃんキュリよ、「のみ」って事はないんじゃないか?」

「なあ、暫く同行しても?」

「こっちは別に良いけど……何か理由は?」

「いや、別にどこか決まった会社や組織に所属してるでもないし武者修行とかだと思ってくれ」

「オーケー、じゃあ早速次の目的地でも探るか」

「それはどちらにせよここでやる事ではないんじゃないか?」

「え? なんで?」

「なんでってあんた……そうか、森を彷徨う魔物だったんだな……」

「あ、あー、ね? 人間はこんな場所で考え事したりしないよ! 文化的なカフェのオープンテラスでお茶でもしながらとかさっ」

「余計にいたたまれないな」

「ぬぬぬぬ! 染み付いた野性が……」

「ここはカラームとケントニスの領境付近だろ? 近くだとキリメーアって街があるな」

サイの提案に乗り距離は然程でもないとの事なので3人並んで歩いて向かうが街に着く頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

「とりあえずここで一泊でどうだ?」

「……」

一泊の概念もすっかり抜け落ちて久しい。

「ん? どした? ジメジメした森でないと落ち着かないか?」

「おい! ……ただ、な。夜は寝るものだという事を忘れていてな」

「ふっ、三大欲求から解脱した聖人様には悪いがオレはしっかり寝るからな」

「いや、それは全然良いんだ」

「そうか。とりあえずキリメーアに来たら寄る飯屋があるんだが、そこで良いか?」

「任せるよ」

『名物料理を確認』

「ふっ、ここもたいした物は無いんじゃないか? 店で聞いてみると良い」

『肯定、並びに了承』

サイが行きつけだと言った店は賑わっていた。大衆居酒屋と形容して良さそうな雰囲気だろう。

「あら、サイ。久しぶり」

店の女性と挨拶を交わし空いているテーブルに着席する。

「サイは? いつも通りで良いの?」

「ああ、いつものだな」

『質問、名物は?』

「そうねぇ、肉は食べられる?」

『肯定、食べられない物は無い』

魔物の素材だろうが無機物ですらペロリだからな。

「じゃあ、オススメを持って来るよ。そっちのお兄さんは?」

「この娘と同じのを」

「分かった。じゃあ少し待っててね」

「そういえばサイは泳げるのか?」

「なんだ急に? クロールと立ち泳ぎ程度だな」

「クラーケ討伐はどうしようと思ってたんだ?」

「ああ、その事か。対策なんて考えずにとりあえず現地入りして状況や情報を確認するつもりだった」

「そっか、ちなみに全長は軽く50mオーバーのタコだったけど?」

「その程度の情報はな。浅場に出るなら接近して急所をぶち抜こうとか?」

「……たぶん無理じゃないか? ぶっとい脚もちゃんと8本あったしな」

「やはりか……。あんたはどうした?」

「あぁ、討伐の確認をしてもらいたかったからまず魔法で海上に持ち上げてから心臓と脳みそを消した」

「ふっ、相変わらず滅茶苦茶だな」

「そうか? はっきり絶命を確認しないと不安が残るだろ?」

「その化け物ダコが海上に浮いてきた時の街の連中の不安の方がデカそうだがな」

「うぐ、そ、そうでもなかったぞ。その後の歓声の方がおっきかったからな」

『阿鼻叫喚の地獄絵図だったと補足』

「余計な補足はよろしい!」

その内に料理が運ばれてくる。俺とキュリヤのは肉野菜炒め? サイの方は……なんだこれ?

「サイのは何?」

「平たく言えばタコスが近いな」

「あー、なるほどね」

よく見れば薄い生地で野菜等の具材を挟んだ様な形状だと分かる。

「キュリヤはどうだ?」

『美味、星3.8』

「なんだそりゃ、どこで覚えんだよ……」

『ウニは5超、測定不能』

「はいはい、---(横棒3本)ね」

『肯定』

食べる必要がないだけで食べられない訳ではないのでフォークを使い目の前の肉野菜炒めを口に運ぶ。口腔内では咀嚼の必要はなく瞬時に吸収も出来るのだが……いくら噛みしめてみても相変わらず味覚は無い。

「さて、次の目的地ってか目的そのものか?」

「どうせならネーシアに行ってみたかったんだが、あんたが顔を出すのはまずいんだろ?」

「まずかぁないんだけど……根掘り葉掘り聞かれたり妙に持ち上げられたりするのは面倒だな」

「ふっ、謙虚な神様だな」

「あ、じゃあ北島(きたしま)? じゃなくて南にある島は? 小さな漁村の連中が気持ちの良い人達だったぞ?」

「それも良いか? なんせ初めて王国から出るんだ。内陸のボーツとは違う景色が見てみたくてな」

次の目的地が決定した所でサイに声が掛かる。

「サイ、白蛇(ホワイトスネーク)のワーキヤだ」

昏き森(ダークフォレスト)以来だな?」

「お嬢さんも森に居たよな?」

『肯定』

「て、事は貴方はもしや?」

「おぅ、久しぶり。ただ訳あって今はただの傭兵だ。その辺を汲んでくれると助かる」

「そ、そうですか。なんでまたキリメーアへ?」

「旅の途中? ま、近くを通りかかっただけだ」

「これから南へ?」

「ネーシアへ渡ろうと思ってる」

「あー、そりゃ無理ですよ。今北島(きたしま)近海に化け物が居座ってて船が止まってるんです。他の島行きの船もありますけど……」

言っててワーキヤは気付いた様に言葉を続けた。

「船なんて必要無いんですよね。すみません、人の考え方で測ってしまいました」

軽く頭を下げるのだが訂正だけはしておく。

「それはそれで間違っちゃいないんだけどクラーケの件は解決してるぞ。俺達は一旦イマメアまで行ってるんだ」

「そうですか、それは良かった! 実はイマメアに親族がいて心配してたんですよ……」

「よおワーキヤ、お前が丁寧に話してるからどんな奴かと思ったら、お前はボーツのサイだろ? そっちの2人は初めて見るな」

「こ、こっちは白蛇(俺達)の団長のブレンです。どうかお見知り置きを」

「随分なご身分なのか? 貴族にゃ見えんが……」

「ミチオ様、どうか穏便にお願い致します」

「心配しなくても飯屋で面倒事を起こす程俺も馬鹿じゃないさ。よろしく団長さん、ワーキヤとは森の護衛の時に知り合ったんだ」

「あー、あの時のな。ウチから2人行ってたな。そんで神の誕生に立ち会ったってこいつ興奮して語ってたんだった。あんたもその口かい?」

「ブフーッ! ウヒャッハッハッ! やめ、フフフフ……プッフフ!」

「おー、サイはもっと冷たい奴って印象だったが……そんな笑い方すんだな?」

「ブレン団長、さ、席に戻りましょう。彼等の邪魔をしては……」

「少しぐらい良いだろ! なあ? ミチオとかいったな」

「構わないさ。団長の様に豪胆な男に話し掛けられて俺も光栄だよ」

「ダヒーヒッヒッヒッヒィー! やめお、ブヒーヒャハハハハッ!」

「分かってるなミチオ。酒は? ここいらのは強いのが良いんだよ。おーい、QG! マックスをジョッキで2杯だ!」

「はーい」

返事からすぐに先程の女性店員が木製ジョッキに注がれた酒をテーブルに2つ置いた。

「まずは乾杯だな」

コッと乾いた音を鳴らしブレン団長と乾杯をする。口に入れてはみてもやっぱり味は分からなかった。さっさと飲み干して団長に尋ねてみる。

「この街では白蛇(ホワイトスネーク)が1番大きな傭兵団なのか?」

「そ、そうだな。あ、あんた、相当イケる口なんだな」

「ん? 酒か? そういや初めて飲んだな。作った事はあったんだけど……」

フレールが思いっきり吐き出したけど。

「そう、なのか? おい、ワーキヤ、世の中すげぇ奴もいたもんだな」

そう言いながらチビリチビリとジョッキを傾ける団長。どうやら相当度数の高い酒だったのか?

「団長、ほんと、くれぐれもですね……」

「お前は()っせぇ事ばっか言ってねぇで飲んどけ!」

酒場の誰よりも体と声と態度が大きなブレン団長は続ける。

「よし! 腕相撲しようぜ!?」

「唐突だなぁ、ま、良いか?」

『提案、当機との対戦を希望』

「おい、キュリヤ! てかお前、腕相撲分かるのか? 手加減しないと……」

「手ぇ加ぁ減んんだぁ? この嬢ちゃんがぁ? 誰にぃ?」

「いや、酒も飲んでるから事故があったら困るだろ?」

「よーし、来いよ! もう止まらん! 泣いても俺のせいじゃない!!」

「メンドクセェー……。良いか? 怪我させんなよ?」

小声でキュリヤに言いながら心底面倒に思っていた。

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