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サーチャル遺跡の地下迷宮を訪れていた俺とキュリヤは開始早々に追い剥ぎに襲われ……る前に制圧していた。

「やばいな。キュリヤ、そいつ連れてゲル部屋に入ってくれ」

『肯定、接近する者有り』

「そういう事」

俺も3人を無造作に引っ張りながら最初に消した奴の所持品を収納、足元の棍棒と壁際に転がる膝から下も回収して部屋の中へ。入口には閉じ込められた時の様な壁を土魔法で作り上げる。

「さて、これでもう少しゆっくり話せるな」

「も、もう勘弁してくれ!」

「勘弁? お前達の前でそんな事言った奴は今までに何人いた?」

「そ、れは……」

「どうした? 質問に答えてくれよ」

「何人かって? そんなの覚えてねぇよ!」

「覚えていられない程の人数って事だな? 1人2人なら覚えているだろうし、そんな奴はいないって訳でもないと」

「うぐっ……」

「それと……お前等は5人組なのか?」

「そ、……いや、これでも大所帯でな。俺達が戻らないとなったら不審に思う仲間がいるぞ」

「くだらないブラフだな。ま、どっちでも良いや。次! 剣の奴よ、さっきなんでもするから許してくれと言ったな?」

「あ、ああ! 頼むよ」

「じゃあ、お前は棍棒のと蹴りの奴を殺せるか?」

「そんなんで良いのか?」

「うぞだろ゙? ラ゙ギル゙!?」

「悪いなトゥーリ、コッソ、俺はまだ死にたくないんだ」

剣の奴の首から触手を離すと左腿に刺さっている剣を引き抜こうするのだが、右手の指が無くなっている事を忘れて上手くいかずに改めて左手で引っ張る。

「い゙でぇぇ! な゙ん、ぬけ?」

振り返る様に太腿の後ろを確認した剣の奴は驚愕する。

「なんだごれ?」

剣の先は前衛芸術かという程に捻れ曲がり原型を留めていなかった。

「どうした? 早く抜けよ。それともその剣じゃなきゃ駄目なのか?」

「あんた、あんた一体なんなんだよぉ!?」

「俺の質問に答えていないな」

「あ゙あ゙ぁ、やってやるさ! クソッ」

左足を引き摺り棍棒男の前に出る。

「悪ぃな、へへ……」

胸元からナイフを取り出すと腹目掛けて突き立てる。

「なぁ、剣の人よ、さっきさぁ、俺が攻撃の手を止めた時の事覚えてるか?」

「にやな? な、何?」

「3人共仲間の為に俺を攻撃したと言ったから攻撃を止めたんだけど覚えてるかって」

「あ、そうだったか、な?」

「今のお前の行動は仲間を見捨ててでも、その手に掛けてでも自分は助かろうという浅ましいものに見えるんだよ。俺には」

「だ、だってそうすりゃ見逃すと……」

「殺したら見逃す? そんな事言ってないぞ? 俺はこの2人を殺せるか? って、質問しただけだ」

「そっ、そんな、言葉尻を捕える真似して騙しやがって」

「騙してないし言葉は大事だぞ。俺はずっと質問に答える様にお前達全員に接してるからな」

「……」

「拘束を解いたら俺に向かってくる気概でも見せれば良かったものをだ。まさか味方を嬉々として殺そうとするなんてな」

「……はぁ? ふざけんな! ぶっ殺されるに決まってんだろ! このバケモンが!!」

「じゃあ棍棒の人、お前を殺そうとしているコイツを許す事は出来るか?」

「ゆ゙、ゆる゙ざん!」

「そうか、そうだよな。自分可愛さに仲間を刺す様な奴は信用出来ないよな?」

「ぜたいに許さん!!」

「蹴りの人? この3人の中から2人だけは助けてやると言ったら誰と誰を選ぶ?」

「しゅー、しゅー、トゥーリと、自分だ……」

「全然駄目だなお前等。俺の意図を汲み取る狡賢さでも良いから仲間の為に犠牲になるとかどうして言えないんだよ?」

徐にキュリヤの方へ向き直り問い掛ける。

「お前は罠を発動させた訳でも俺に直接攻撃した訳でもないんだけどコイツ等と徒党を組んでいる時点で同罪とも言える。どうだ? 自分を罰するか?」

「なんでだよ? 連帯責任? はっ! 馬鹿馬鹿しい。早く解放しろよ!」

「ちなみにこの部屋がどんなものなのか知ってるか?」

「あ? 無限ゲル部屋だろ?」

「1つ訂正するなら無限じゃなくて100匹な。まぁ、いっぱい出てくる事の比喩だとは理解してるがな」

「だから、なんだよ!?」

「そんなとこに他人を騙し入れて美味い汁を啜ろうとコイツ等と一緒に待ってただろ?」

「ちがっだぁー!」

腹這いにさせて上に乗るキュリヤが極めている腕の関節に力を入れた様だ。

「所詮は破落戸(ゴロツキ)かぁ」

触手を元の人間の腕に戻し入口付近へ歩いていくとポコリと罠を発動させる。

「キュリヤ、おいで」

『了承』

天井から無数のゲルが降ってくると俺達はマナ化して姿を消した。

「なんだったんだよアイツ等! 消えてるぞ!?」

「それよりマズいぞ? ゲルが来る」

「ぢぎしょー!」

「しゅー、しゅー……」

あーあー、これは……酷いもんだな。キュリヤが拘束していた奴は手堅く付近のゲルに対処しながら安全地帯を探る様な動き、剣の人はもう一度太腿に刺さった剣を抜こうとしたが諦めて左手のナイフでどうにか対応しようとしている。棍棒男は右足1本の片足跳びをしてなんとか壁際まで行って体を預ける。蹴りの奴は匍匐前進で動こうとするが既にゲルに(たか)られ始めていた。

「なぁキュリヤ、俺達はそもそも悪くないよな?」

『肯定』

「この結果だって咎められるものじゃないよな?」

『肯定、因果応報』

「だな、お前はどう思う?」

「……」

マナ化して収納していた罠を踏んだ男に問う。

「見てたんだろ?」

「ひ、ひひっ、どうして……俺だけ助けた?」

「助けたつもりはない。俺の質問に答えろ?」

「あひゃっ! 良い気味だぜ。散々人の事をこき使ってやがった奴等が生きたままゲルに食われるんだ! 最高だな。俺だって生きて帰れない。どんな目に合うんだ? ひゃひゃひゃひゃひゃ……」

蹴りの奴が死んだ。死体に群がるゲル達の次のターゲットは棍棒男だろう。

「ひーひゃっひゃ! コッソが、コッソが食われちまった」

棍棒男は壁に体を預けながらナイフを握った腕をブンブンと振り回しているが、壁の上部から這い寄るゲルが頭から覆い被さる様に落ちてきた。

「トゥーリ、あの偉そうな奴も最後はゲルに食われて終わりだよ! ひゃひゃひゃひゃ……」

キュリヤが拘束していた男が剣の人の背後から蹴りを入れる。バランスを崩して転んだ先には勿論ゲルだ。もがいても足掻いても次々にのしかかってくるゲルに抵抗が弱まっていく。

「ラギルも食われる。くわうひゃっ、チンクの野郎ひゃひっ、なかなか下衆いぜ! あーひゃひゃ……」

討伐されたゲルは20匹に満たない程度、80匹超を相手に生き残れるのか……。ショートソードを振り続けるが体力にも限界が訪れる。大きく肩で息をしながら最後の男も遂にゲルに取り囲まれて身動きが取れなくなる。

「クソがぁーっ!」

暫く経つと4人の男達は跡形もなく消え去っていた。

「キュリヤ、第2ラウンドいけるか?」

『肯定、造作もない』

「じゃあ、頼んだ」

実体化したキュリヤが恐ろしい速度でゲルを殲滅していく。

「ひひゃはひゃ! なん、バケモン! ひーひー、敵うわけねぇーぞ! ひゃーひゃひゃ……」

速やかに全滅させたのを確認して部屋の中に罠を踏んだ男を放り出し伝える。

「さて、いくつか選択肢があるから質問するぞ?」

「ひゃひゃひゃ、まだ俺を生かすのかひゃ? ひーひひ」

「大丈夫か? まず、ここでお前等みたく追い剥ぎをしてる連中がいるな?」

「ひひっ、いくらでもいるさ」

「迷宮に入ってすぐの物売り達もグルだな?」

「……」

「どうした? 答えろよ」

「どうして分かる?」

探索者(エクスプローラー)は奴等に金銭を支払う事で追い剥ぎ連中から襲われなくなるんだろ?」

「あんた、なんで……」

「次だ。もっと言えばこの国も黙認しているな?」

「な、なんだってんだよ? なんで、そんな事まで……」

「ただの推測だ。その方が辻褄が合う」

「……」

「これで最後だ。改める気はあるか?」

「む、無理だっ! そんなの……」

「なぜ?」

「俺1人が出来る事なんて精々見て見ぬ振りをするくらいの事しか……」

「それが答えで良いのか?」

「そうだ! あんたがこの仕組みを変えるってんなら一枚噛ませてくれよ?」

「話にならんな。どこまでも浅ましい……」

『ミチオ、これを』

「ん? なんだ? 入場券代わりのタグか? さっきの4人の分だろうな」

『肯定、ゲルに吸収されずに転がっていた』

「どれ? へぇ〜、小さな割に複雑な作りなんだな」

よく観察すると色々なマナが練り込まれている。予想は出来るけれど俺にも分からない部分がある。人間の知恵じゃ無理か? 創造神(アイツ)が絡んでいるんだろうか?

「じゃあ、お別れだ」

「いーひっひっ、ひゃーひゃひゃひゃひゃ! 生きたままゲルに食われてしまうのか!? ひひゃーはは……」

まぁ、間違ってもいないのか? 男のマナを一瞬で吸収した。タグが手元に5個残ったんだけど普通なら受付に渡すなりするんだろうな。でも全員グルとなると妙な疑いを掛けられても面倒なので持ち帰る事にする。その他の遺留品も綺麗に片付けると元の殺風景なゲル部屋には俺とキュリヤの姿しかなくなる。

「さて、碌でもない事に時間を使っちゃったな」

『肯定、先を急ぐ事を提案』

「オーケー、行こうか」

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