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今回の使節団は30人を超える大所帯、小太り司祭(ナシオ)が亡くなって丁度30人か……。王都の教会本部より来ているヤシン達3名、四神の巫女4名にその上司――ナシオの様な立場の者でナシオ以外とそれぞれに衛士が2名ずつで計15名、そして、ティキやサイの様に護衛として同行している傭兵が12名。戦神フレールの社1階の広間に並ぶ長椅子の上にはそれぞれの荷物がごちゃごちゃと置いてあるがほとんどの者は表に居る。庭では創造神の降臨から新たな神の誕生という一大イベントを興奮しながら語り合う人々、幾分熱気が冷めて少人数のグループで社の周囲の森へ探索に出た者達も居る様である。その全てを高精度で観測するのは流石に無理だが今の俺は地上の何処だろうと見る事が出来る。例え行った事のないこの星の裏側の街だろうとも……と、微妙に気になっていた些事を思い出す。|(ガルム)の群れを訪れていた悪魔トイフェルのマリスがこちらに向けて飛んで来ている。創造神(ポンコツ女神)の降臨を察知しての行動だろう。悪魔なんて呼ばれる種族なのにあれで敬虔な信仰心を持っているみたいだからな。まぁ、そのうち着くだろう。庭で車座になっている一団が社から出て来た俺の人形に気付き1人が立ち上がり近付いてくる……リンクスだ。

「ミチオ様、何かお手伝いは必要でしょうか? なんなりとお申し付け下さい」

「おぉ、いや、特に手伝いは要らないんだが、そうだな……教会、ひいてはこの世界において新しい神の誕生はどういう扱いになるのか疑問なんだよ」

「そればかりは我々人類としてもこれから対応していくとしかお答え出来ませんね。なんせ四神の内最後に地上に遣わされた文化の神キークス様の誕生ですら2000年以上前の事ですから」

「そうか」

「大丈夫ですよ! ミチオ様の素晴らしさはいずれ世界中に広まるでしょう」

「う、いや、なんか気まずいな……」

「そうなれば愚かな偏見を持った司祭の様な者共は一掃されるでしょう!」

「リンクスも案外手厳しいな」

「あの頑固者もミチオ様の礎となったのなら最後にお役に立てたというものですね」

「あぁ、その事なんだけどな……」

神殿管理部の連中にした話をリンクスに説明する。

「なるほど……そんな事が起きていたんですね」

すんなり受け入れたリンクスが他の皆んなにも広めてくれるだろう。ふと、思い付いた疑問もぶつけてみる。

「なぁ、リンクス? この世界には天文学みたいなものはあるのか?」

「てん、もん、がく……?」

「あぁ、宇宙、空の向こう側の事を扱う学問だな」

「ウチュー? 空の向こう側? 空の向こうには何があるんでしょう?」

「ん〜、こりゃどうも概念自体が無さそうだな……」

意図的に創造神(ポンコツ女神)が隠蔽しているのか、そもそも根付いていないだけなのか……。そんな事あるか?

「もう1個良いか? この世界に冒険者と呼ばれる人間、或いは組織はあるのか?」

「冒険者? 冒険家ではなく、ですか?」

「おっ? 良い反応だリンクス君」

「冒険者というのは聞いた事がありませんね。少なくともカラーム領近辺ではその様な者達に心当たりは無いです」

「そうか、ありがとう」

「いえいえ! ミチオ様のお役に立てるのが至上の喜びですから」

「お、おぅ」

ややもすると狂信者になりかねない危うさを孕んだリンクスの扱いは正直面倒臭いが俺の為だと行動してくれている事には素直に感謝しておく。そして先程までリンクスと語らっていた連中が俺達を囲む様に集まって来ていた。

「リンクス殿、我等も新たな神へお目通り願えないだろうか?」

「おお、これは同志達よ! 気が回らずすまない。ミチオ様! 貴方の信者一同でございます!」

「なん……? え? 信者?」

「はい! ミチオ様のご威光を説いておりました折り、我等の眼前で正に神へと至るという偉業に感銘を受けて信徒となった者達です」

「あ、あぁ、そうか。なんだ……まぁ、程々に励み給え」

リンクスに紹介を頼んだ男に【念話(テレパシー)】で伝える。リンクスのペースにやられて神様っぽい事言わなきゃいけない気がしたけど中身の無い尊大な態度だけしか出てこなかった。だが、それでも男は喜びを表している様だ。

「おお、神よ! 有り難き御言葉!」

「何っ! 神よ! 我々にもどうか御言葉を!!」

わいわいと残りの5人の男達が騒ぎ立てる。んー、複数同時に【念話(テレパシー)】を送れるのだろうか? 意識しながら……。

「俺は仰々しいのは好まん。最低限の礼節を持ってくれれば自由にして構わない」

どよめき。一同は俺の内容の無い言葉にも感動している模様。

「おおっ! 神のお声だ!」

「俺にも聞こえたぞ!」

「なんと慎ましく寛容な神か!」

「素晴らしい! 俺は死ぬまで今日の日の事を忘れないぞ」

「なんという僥倖! 感涙に咽ぶ様な気持ちです」

暑苦しい男達に囲まれながら祭り上げられ意外と俺はこういうのが苦手だと再認識する。神様なんてなりたくてなったんじゃないからな。

「ささっ、同志達よ! ミチオ様のお時間を無駄してはいけない。創造神ミルユー様がご降臨された時のナシオ司祭を含めた顛末を説明する故、もう少し語らおうではないか?」

困惑を察したのかリンクスが場をまとめてくれた。人形は無表情のままの筈だが空気を読んだリンクスに【念話(テレパシー)】を送る。

「ありがとう。また何かあったら聞きにくるわ」

「とんでもない事でございます! このリンクス、ミチオ様の為ならば何をも優先してまかりこす所存! なんなりとお申し付け下さいませ」

他に庭にいるのは傭兵達の一部、ティキ、ハーシル、サイともう1人は知らない男だった。

「どしたXXX(トリプルエックス)? 暇を持て余してるのかい?」

「よぅ、一応今回の使節団の皆んなと顔合わせ程度に挨拶でもしておこうと思ってな」

「そうなのかい。コイツは初めてだろ? キリメーアって街を拠点にしている傭兵団【白蛇(ホワイトスネーク)】の副団長……」

「おっと、自己紹介ぐらい自分で出来るさ」

跪き頭を垂れると……。

「お初にお目に掛かります。ワーキヤという者です。新たな神の誕生に心よりのお祝いを……」

ここに居るのは4人だけで残りの傭兵達は4人ずつに分かれて森の探索に出たとの事。まぁ、知っているんだけどさ。

「まさかあんたが神になっちまうとはねぇ……」

「はははっ! そうなると最初にその新たな神の怒りを買ったの僕達の傭兵団って事になるのかな?」

ハーシルが自虐的に言った。

「違いない。今もあいつらの事は忘れないけど、考え無しに行動していた自分に腹が立つってもんだよ……」

「さっきまでそこら辺の話を聞かせてもらっていたんだが傭兵団を壊滅、それも瞬殺といっても良い程の能力を持っていたゲルだ。討伐隊が組まれたりはしなかったのか?」

サイの疑問は至極真っ当なのだが……。

「アハハッ! それはさっきの続きだ」

そう。結果的になんとか免れた訳だが実際にはカラーム領都から討伐隊が来る予定だったのだ。

「アタシは何も見えていなかったよ……。復讐に固執して呪法にまで手を出して、挙句の果てには3度も見逃してもらってさ……」

「なんだ? 当時の神さんならば戦ってどうこう出来そうだったのか?」

「いいや。初めて遭遇()った時から無理だったろうね。なんせ仲間がどうやって()られたのか見当も付かないんだから」

「へえー、どうやったんだ?」

「俺? えぇと……確か最初の相手は、大柄な男だったな。得物を構えて近付いて来たから極細の触手を眉間に刺して先端から溶解液を注入したんだったかな?」

「ひっ!」

ティキが引いている。

「で、次に中衛に居た槍使いは……【影渡(ハイドシャドウ)】でそいつの影の中へ移動してからそのまま股間目掛けてまたもや極細触手を突き刺して心臓辺りまで伸ばしていって溶解液を……」

「ゴクリ……」

サイも若干引いている?

「躊躇無いんですね……」

ワーキヤが呟く様に言うがこちとら遭遇(エンカウント)イコール生か死かデッド・オア・アライブという生活だったし墓虎(グレイヴティガー)の子供の件があったからな……。

「そういえばティキ、あの時の事を改めて話す機会も無かったんだがお前達が殺したグレイヴティガーの子供な、アレ俺のお気に入りで仲良くなろうと手懐けていたんだよ」

「な、そうなのかい? そりゃあ、あんたも怒る訳だよ」

「あぁ、ちょっと複雑でな。あいつの親を食ってからその存在を知ってな。自己満でしかないのは俺も分かっていたんだけど流石に子供まで食っちまう気にはなれなくてさ」

「あの頃の疑問がひとつ解決したよ」

「どういう事?」

「森のあんな浅い位置にイーヴルゲルが居た事さ」

俺も未だにイーヴルゲルは悪魔(マリス)が召喚した奴しか見た事はなかったな。……と、思い出していたらご本人様の登場だ。

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