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この世界の人間達の言葉が分かる様になった俺は歓喜していた。だが同時にこちらから言葉を発する事が困難な事実の前に打ちひしがれていた。【唸り声(グロウル)】で威嚇する事しか出来ない事を思い出す。咆哮を上げるだけで会話にはならないそんなシビアな仕打ちにも慣れたものである。

「オ゙デ、ビヂオ゙」

「あっ! 自己紹介ですか? えへへ、私はポゥです」

察しの良いポゥに涙が出そうになる。本当の意味で血も涙も無いんだけどな。不思議な事に言語自体は日本語で話したつもりが変換されているみたいだ。この世界の謎スキルは線引きが微妙だな。どうせなら声もくれよ。あと目も。発声練習を再開しなきゃな。という事で眷属諸君! 引き続き翻訳の手助けお願いします。

「はあ、何やってんだか……【念話(テレパシー)】で良いじゃない」

「あ、そうか」

あれ? でも【念話(テレパシー)】はキュリヤのスキルで俺本人は使った事ないんだよな。

『否定、魔法としての【念話(テレパシー)】は既に習得済み』

「そうなの? そういえば意味不明の言葉だけど受信は出来ていたか……」

ものは試しだ。

「ポゥ、分かるか?」

「あ、今度は【念話(テレパシー)】ですか?」

「あぁ、なんか神になったら言葉が分かる様になったんだけど自分が喋れない事を忘れていてな」

「やっぱりミチオ様は神様でした!」

「いや、さっき成り行きでなってしまったというか……」

「ん? ミチオ様は言葉が……って、あれ? 声が変わって……? あれ?」

そうか、キュリヤに翻訳してもらっていたから声すら違って聞こえているのか。そんな所から説明しなければいけないのかよ。

「ミチオ様っ!」

滑らかな動きで俺の足元に跪くリンクス。

「おめでとうございます。正真正銘の神へと至った事を心よりお祝い申し上げます」

「お、おぅ」

「素晴らしい! 新たな神の誕生に立ち会えるなど感動の極みですよ!」

「まぁ、なんだ、これからもよろしくな」

「勿体なきお言葉。恐悦至極!」

熱っぽい視線を感じるが、とにかく色々説明したいからと宥めつつポゥに話し掛ける。以前まではキュリヤに翻訳してもらっていた事やら神とのやり取りを掻い摘んで話し基本的に俺の置かれている状況は変わらない事を伝えた。

「それじゃあミチオ様はこれからも地上に居られるのですね?」

「まぁ、そうなるかな? 神の居城なんてもんがあるのかも知らないからな」

「うふふ、ミチオ様も神様なんですけどね」

「で、でだ。諸々を含めて他の皆んなにも教えてやってくれないか?」

「分かりました!」

ポゥの返事の後に改めて周りの人間達を眺めてみるが皆一様に熱気に包まれていてある種ライブのオーディエンスの熱量の様でもある。小走りで人が集まっている方へ向かうポゥに続く様に歩き出す。

【身体操作(人間)】

ん? なんだ? 頭に聞いた事のない音声?

『肯定、今のがスキルアナウンス』

おぉ! こんな感じで教えてくれるのか。つー事は自分のステータスも見られる様になったのか? 立ち止まり自分自身に意識を集中する。どうだ? こうか? ん? ほれ!


個体名・捧道雄(ささげみちお)

種族名・不明(超越種(ダブルエックス))

存在値(ダーザインレベル)・不明(256超)

【別次元の理】

【マツロワヌモノ】

【邪神】

魔那(マナ)

眷属の秘事(インナーサークル)

【マナ感知】Lv9max

【マナ操作】Lv9max

【身体操作(ゲル属)】Lv9max

【身体操作(人間)】Lv3

接続強化(キュリヤ)】Lv6

接続強化(ブラガ)】Lv2

接続強化(ジル)】Lv2

【情報処理能力】Lv9max

【振動感知】Lv2

【魔法適性】Lv9max

【無属性魔法】Lv7

 【衝撃(ショック)】【念力(サイコキネシス)】【念話(テレパシー)】【魔法分解(ディスマジック)】【幻覚(ハルシネーション)】【重力(グラビティ)】【吸収(ドレイン)】【隷属化(エンスレイヴ)】【唸り声(グロウル)】【変容体(メタモルフォーゼ)

【属性魔法(闇)】Lv8

 【影渡(ハイドシャドウ)】【闇拡張(ダークエンハンス)】【暗闇(ダークネス)】【影縛(シャドウバインド)】【重力影縛(グラビティシャドウ)】【醒めない悪夢ロング・ストロング・ディストーション

【属性魔法(木)】Lv3

 【植物操作(グロウプランツ)】【樹木家屋(ツリーハウス)

【属性魔法(火)】Lv1

 【着火(イグニッション)

【属性魔法(土)】Lv3

 【土弄り(ソイルワークス)】【硬質岩石(ハードロック)

【属性魔法(金)】Lv4

 【金属探知(メタルディテクト)】【物質化(マテリアライズ)】【(ブレイド)

【属性魔法(水)】Lv4

 【水生成(ウォーター)】【水鉄砲(ウォーターガン)】【高圧水流(ウォーターカッター)

超個体(スーパーオーガニズム)(特殊技能)】


圧巻! ……なのかは分からないな。比較対象が無ければいまいちだ。それにしてもこんな風にビジュアル化されると運用の幅が広がりそうな気がするし、最近は好き勝手にマナを操作していた事を考えるといちいちカテゴライズされている魔法はそうでもない様な気もする。まぁ、目安程度に考えておこう。んー、あとは種族はやっぱり不明だけど超越種(ダブルエックス)になってるのは神になったからか? そもそも邪神っていうのが種族でもないみたいだし、それとレベルが256以上でカンストじゃなく不明になってるな。物差しが256までって事か?

「あー、なんだ、アンタも色々困惑しているのを承知で言わせてもらうが、そろそろサイ・シグインを解放してやってくれないか?」

ティキが若干申し訳なさそうに問いかけてくる。

「サイ・シグイン? ん、誰?」

「アハハッ! 流石XXX(トリプルエックス)! アンタに喧嘩売って拘束されてる奴だよ」

「あ゙、忘れてた」

小太り司祭(ナシオ)が騒いだり創造神(ポンコツ女神)が現れたりしてすっかり忘れてしまっていた。すぐさま【重力影縛(グラビティシャドウ)】を解除する。

「……」

「……」

「ハハ、なんだ? 男同士で見つめ合って」

見つめ合っている訳でもないんだが側から見たらそう見えるよな。便宜上のアイコンとして作った人形だから俺本人ではないという事は眷属の3人しか知らないから仕方ない。そういえば、この男は元地球人疑惑というか【別次元の理】を保有している時点で確定なんだろうけど気になるのは変わりない。

「あんた一体どういう存在なんだ?」

おっと、逆に質問されてしまった。どういう存在か……。正直自分でも分からないってのが本音だな。

「どこを見てその質問を?」

「どこって……最初はしょうもない感じだったのが凄まじいエネルギーを纏って神とか言われる奴と一悶着あって何でケロリとしてんだ? その後その神からあんたも神だと言われて……疑問に思っても普通だろ」

「あぁ、そういう感じね。端的に説明出来ない事を先に謝るけど俺も元地球人だ。んで、イーヴルゲルっていう魔物の体でこの世界に転生してきて色々あって本物の化け物になったってとこかな」

「その色々が気になるが元地球人か……。それでオレの事にも気付いたのか」

「んー、そこはちょっと違うかも。現にそっちは俺が元地球人だと分からないんだろ? 俺、目が無いもんだから【マナ感知】で世界を見てるんだけど、そしたらシグイン氏の中に別の世界から来た人だけが持ってる資質みたいのがあったんだよね」

「そ、そうか。いや、オレも最初に街であんたの名前を聞いた時に日本人みたいだったのが気になって今回の遠征に同行したんだが……マナねぇ。昔から胡散臭いと思っていたんだよ。マンガかゲームじゃあるまいし。こっち来てガキの時分に実際に魔法を使う奴を見て現実なんだと理解したけど俺は全然使えないしな」

「ん? 魔法が使えないって事か?」

「ああ、何も無い空間に火を出したり最初はトリックだろとか思ったもんだ」

おかしいぞ。確かコイツ【重力影縛(グラビティシャドウ)】に抗う時にマナを使って一瞬爆発的な身体操作を行っていたんだけど無自覚だったのか?

「まあ、今更魔法を使いたいとも思わないがな」

ふむ、現象としての魔法ばかりに目が行って身体能力強化なんかは魔法的なものだと思っていないのか? 物理アタッカーだって【マナ操作】を使っているんだけどな。

「あー、たぶん無意識なんだろうけどシグイン氏もマナを使っているよ」

「何? オレにはマナなんて無いぞ」

「いやいや、()()()()にあるもの全てはマナで構成されてるし、なんなら今ここに来ている人間の誰よりもマナ保有量が多いくらいだぞ」

「マジ……か……」

「何も火を出したり水を出したりだけが魔法なんじゃなくて身体能力を上げたり精神に干渉したり様々なもんがあるんだよ」

「……」

黙っちゃったよ。少し教えてやろう。

「シグイン氏は肉弾戦メインで戦ってるんだろ? 見せてみてよ?」

「見せるったって、どうしたら良い?」

「なんかテキトーに目の前のにんぎ、俺に攻撃してみてくれ」

「お、おう? 神とやり合えるんならオレ如き造作も無いんだろうけど、良いんだな?」

「良いぞー」

瞬間、ノーモーションで繰り出された前蹴りが人形の土手っ腹に突き刺さり吹き飛んでいた。ヤバい……。躱そうとしても躱せないスピードだったが、それでもやはりマナを使っていたのは分かった。神速の踏み込みやインパクトの瞬間にはやはりマナが爆発的に足先に集中していた。

「お、おい! 大丈夫か?」

「おー、遠慮せずにどんどんやれ」

人形を起き上がらせて歩み寄らせる。

「マジかよ……」

余程今の蹴りに自信があったのか、シグイン氏は困惑した態度で構えの様な形を取る。ボクシング等のファイティングポーズとは違い重心をやや落とし右前半身に近く、両手は腰くらいの高さ、掌は握らずに下向きに置いていた。

「あんた、その腹は本当に大丈夫なのか?」

ん? ありゃ、丁度足の形に凹んでいる。威力は申し分なしか……。何事も無かった様にポコンと元に戻して人形にも構えを取らせる。こちらは俺が習っていた空手の流派の構え、拳を胸の高さで握っている。

「空手か……」

構えだけで分かるという事は地球でも格闘技の経験があるのかな? 次に繰り出されたのは低い姿勢からの突き。やはり踏み込みが速過ぎて反応しきれない。右手の掌底で正確に人形の顎を下から上に打ち抜き、続く二の打ちで胸に肘が刺さって体勢を崩され後退り、更なる追撃の為一歩踏み込むと左手の拳が鳩尾に当たり「いっ!」と、シグイン氏が短く声を上げた瞬間人形の体はくの字になって後方へ倒れた。……たぶんコイツ滅茶苦茶強い。

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