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そんなこんなで戦神フレールの社付近へ戻って来た。というよりもただ単に意識をそこに向けただけ。今の俺は何処にでも居て何処にも居ないという曖昧な存在となっていた。人間達と接するに当たりパッと見て分かる(アイコン)は必要だろうか?

「それにしても凄い人数だな」

「30人を超える大所帯よ」

「よぅジル」

「とうとう本当にこの世の理の外側の存在になったのね」

「そうなのか? そもそも俺は別の世界で生まれたもんでね」

「で、どういう()()になったのよ?」

「いやぁ、俺にもよく分かってないんだよ」

「はあ〜……」

「ジルの溜め息も久々に聞いたな。ハハッ」

「そんな軽い調子で……まあ良いわ。直接貴方に会いたいって人も居るでしょうから姿を現しなさいな」

「そうだな。人間にでも擬態するか……ん?」

体が無いのに擬態も糞も無かった。まず物質化するなりしないといけなかった様だ。そしてこれが難航する事になる。


「なぁーっ! 転生初日を思い出すぞ」

数えきれない程のモニターが並ぶ中から任意の映像に集中する事でそこにフォーカスする所までは出来たが、そこに自分を置く方法が分からない。

『世界中にマナサイズの分体が散らばっている状態。分体をある程度集めて物質化、それを憑代とする事を提案』

「ふむ……」

指向性さえ与えて貰えば出来るだろうか?

「あー、あ? あぁ……そういう事ね」

分かってしまえば造作もない。確固たる本体が無くなっただけで本質的な感覚は変わらないみたいだ。周囲の分体(マナ)を人型の器にして操作する。

「よし! 動作確認完了」

「はあ〜……貴方ね、人型になるなら着る物も考えなさいな」

全裸で降臨していた。

「ハハッ、すまんすまん」

改めて簡素な衣服を着た人形を見てもらう。

「ま、良いんじゃないかしら」

眼球の再現も上手に出来たのだが光を映さず瞬きもしない目には若干の違和感が残っているらしい。まぁ、事情を知っている者達ならば問題無いだろう。

「それじゃあ人間達に挨拶しておこう」

社の近くで物質化した人形を操りテクテクと歩いて向かう。

「おかえりなさいませマイスター」

「おぅ、ブラガもお疲れ様」

庭でリラックスしている一団を見回し知った顔が無いか確認していると……。

「あれ? ミチオ様? なんか(しぼ)んじゃいました?」

「おぅ、ポゥか。なんか小さくなったか? みたいな事言った? 人形のマナ量を見て言ったんだな」

『肯定』

キュリヤに【念話(テレパシー)】でかいつまんで説明してもらう。

「ほえ〜、想像を超えたお話でよくわかりませんが、ミチオ様が更なる高みへと至ったという事ですね」

「で、少し前に例のカオスザーメン(謎スキル)が発動したみたいなんだけど誰かに変化とかないか?」

「それが……」

意外と大変な事態になっているらしい。一団の到着後間も無く魔法使い(ティキ)に変化があり、本人曰く呪法の刻印が消えていたとの事。これはブラガからも聞いたので覚えている。その後小太り司祭(ナシオ)が狂った様に喚き散らして手が付けられないという事で魔法で眠らせて社に転がしてあるらしい。なんでも話の内容は俺の事を否定したり俺に親しみを覚えた連中を罵倒したりと、とにかく俺に対するアンチ発言を繰り返していた様だ。あのナシオ(おっさん)は確かに否定的な態度が多かったと記憶している。しかし、長く一緒に居るポゥ達から見ても常軌を逸していると判断された為に眠らされたみたいだ。種族変化で強制発動したって事はこれ以上あのカオスザーメン(謎スキル)の発動はないと考えたい。それにしても謎過ぎる。リンクスとティキには詳しく話を聞きたいな。

「よう、XXX(トリプルエックス)。久しぶりだね」

丁度良くティキが声を掛けてきたのに対して右手を軽く上げて応える。

「今のは挨拶だなキュリヤ」

『肯定』

「あんたの為に刻んだ呪法の刻印があんたのお陰で消えちまったよ。アハハ」

そこら辺の事情について細かく聞きたい旨を伝える。

「いいわ。今回の遠征で神殿に着いた時にスキルアナウンスがあったんだよ。確か……【混沌の種(カオスザーメン)】と【予め決定していた未来(モナド)】みたいな感じだった筈」

「スキルアナウンス?」

『この世界の住人がスキルを取得、習得、及びスキルレベルの変動等があった場合に受け取る脳内イメージ』

「へぇ、そんなのがあってそれも俺には適用されていないんだな……」

よくよく話を聞いていくと精神面にも干渉していた呪法による影響も消えて今ではすっきりとした心持ちなんだとか。素直に感謝されると少し照れ臭かった。

「ところであんた、随分弱々しく見えるわね。分体?」

「そんなところだ」

適当に返しながらハーシルも交え会話していると……。

「おお……ミチオ様! 我が神よ……」

顔見知りの教会衛士2名が近付いてきてリンクスが跪き俺に祈りを捧げる。

「ご無沙汰しております」

レヒツの方は至ってまともな挨拶だがリンクスは正直やり辛いな。今回ヒンターは同行していないらしい。

「リンクス、お前にも【混沌の種(カオスザーメン)】とか言うスキルの発動が無かったか?」

「あれこそが啓示でございます。我が神ミチオ様に誠心誠意尽くさせていただきます」

「いや、なんか、身体に変調とかは無いのか?」

「ええ、それはもう心身共に万全! 神の使徒として人々に信仰のなんたるかを……ウンヌンカンヌン」

元気そうでなにより。大丈夫だと判断した俺は面倒臭くなってポゥへと質問の相手を変えた。

「今回の調査団て責任者の人とか居るのか?」

「いますよ。えへへ、なんと私です!」

よくよく聞くと一団のまとめ役ではなく巡礼の案内役程度との事。

「最近色々あって俺の状況が複雑化しているのは分かるな?」

「……はい」

「俺は折角出来た友人もこれからそうなるかもしれない人達も傷付けるつもりは無いんだが創造神の所業には納得出来ないのも事実」

「……理解は出来ます」

「それでも友好的に接してくれるか……」

「だって今仰ったじゃないですか? 友人だと」

「……そうだな」

「あんたがミチオ様かい?」

ぶっきらぼうながら一切隙の無い足運びでその男は近付いてきた。

「お前がミチオか? みたいな事言ったな?」

『肯定』

キュリヤの【念話(テレパシー)】で目の前の男に返答してみる。

「化け物みたいなゲルだって聞いていたのに拍子抜けだな。擬態が上手いだけの……」

「シグインさん、失礼な事は言わないで下さいね」

ポゥが嗜めるが……。

「失礼ったって、こいつのどこが神の領域だよ?」

仰る通り。この人形は必要最低限のマナで作った急拵えだからな。ふむ、100体位作ってみるか? いや、雑魚認定の人形を幾ら作っても駄目だな。とりあえず【重力影縛(グラビティシャドウ)】で動きを制限してみるか。

「シグインさんだったか? この人形がお気に召さないみたいだから何かデモンストレーションでもしてみようか?」

膝を突き動けなくなった男の目の前まで移動して問うのと同時に気付く。この男のマナに【別次元の理】が含まれている。という事は元地球人? 更には今まで見てきた人間よりもマナ保有量がかなり多い。

「お前、元地球人か?」

「何? クソッ! 何しやがった? 体が動かん……」

「それを振り解けるなら、お前も人外認定だな。ところで日本から連れて来られたのか?」

「ちっ!」

一瞬脱力したかと思った次の瞬間、男は爆発的な力を発揮して魔法に抵抗を見せるが……。

「ぐっ」

地面に付けていた右手が数cm浮いたかに見えたが、それ以上は頑として動かす事は出来ない様だ。それにしてもマナが一瞬とんでもない暴力的な動きを見せた。この男、侮れない。

「凄いな! ほんの少しとはいえ動けるなんて」

「……」

抵抗する気は無くなった様子だが警戒を解く事はしない。という事で周囲からマナを寄せ集める様に人形へと注いでいく。一瞬で極大マナ量を持つ人型の何かになった人形、それこそ神をも凌ぐ濃密なマナ集合体。

「ミ、ミ、ミチオ様っ!」

急に横から飛び出してきたポゥがヒシっと抱きついてくると鼻血を垂らしながら悶絶しだす。

「はぅ〜っ!」

「はあ〜、その辺にしておきなさいな」

ジルに嗜められてマナの収束を止める。

「ミチオ様、いや、新たな神よ!」

リンクスは俺の足元で涙を流しながら平伏している。その他の人間達も俺達の周囲を取り囲む様に集まってきて何事かと様子を見ている様だ。その時、バン! っと勢いよく社の扉が開かれてナシオが飛び出してきた。

「神が御降臨なされたのか?」

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