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キュリヤの警告では、猿の魔物がこちらに接近してきいるらしい。未だ俺の視界には捉えられていない。およそ20秒後には見える距離まで来るとの事。

「なんで、その猿は俺の事が分かったんだろう?」

『不明、索敵能力の高い個体がいるかと推測』

「その言い方だと1匹じゃないんだな?」

『肯定、7匹が接近中、加えて種族は"ナクトマン"と特定』

「ナクトマン?」

『リーダー格の1匹が他の個体を率いて集団で狩りを行います』

「戦う事になるよね?」

『肯定』

「ゲルに転生して初戦から集団に狙われるとは……。ちなみに負ける確率は?」

『不明、苦戦はしても勝てると推測。ただし、ナクトマンの群れが通常個体のイーヴルゲルを倒した例はあります』

「……っと、視界に入って来たな」

1……、2……、…………7。

木の枝を掴んで隣りの木へ次々と飛び移ってくる。流石お猿さん、雲梯が上手な事で。

「ギョーッ、ギョーッ!!」

15m程に迫ってきた所で群れが散開した。既に視界はズームから全周囲モードに戻している。群れから突出している1匹に注意しつつ、他の個体の位置も把握。どうやら囲んでくるみたいだな……。

一番近くに来ていた個体も距離7〜8m位になるとゆっくりと様子見に入った様だ。囲まれて四方八方からのヒット&アウェイなんて面倒くさいので先手必勝だ! ……と、思ったら、奴等の中の3匹が石を投げてきた。球速、コントロール申し分無し! ドラフト入団いけるんじゃないか? 3方向から飛んできた石を触手で華麗にキャッチ、返す刀で投げ返してやろうと思ったが、超高校生級とはいかず放物線を描いて地面に落ちた。


……。


そうこうしている間に包囲網が完成された。だが、俺をただのイーヴルゲルだと思うなよ! 一番距離の離れている一際マナ保有量の高い個体、奴が群れのリーダーだと思われる。セオリー通りにまずは頭を叩く。木の枝を使って体をスイング、次の枝にすぐさま触手を伸ばして連続ジャンプ。俺の射程距離約5mに入った瞬間、極細触手を射出。

「何っ!?」

速攻が決まったかと思ったが甘かった様だ。ナクトマンリーダーが飛び退ると触手は空振り、すぐさま3方向から石の投擲、別の個体のうち1匹が接近。石礫はこの際無視して、斜め上方から飛び掛かって来た奴が射程に入ったと同時に極細触手を伸ばす。眉間に刺さった瞬間、先端を膨張させる。


グシャッ!


頭が吹き飛んだナクトマンがそのまま地面へと落ちていった。流石のコントロールと言うべきか、石礫は3球とも命中。しかしそこはゲル状ボディ、核に到達する事もなく体内に入ったと同時に溶かしてやった。


1匹減ったが、残りはまだ6匹もいる。投擲隊は余程の不意打ちでもない限り脅威にはならないだろう。と、思っていたら次射が既に飛んで来ている。ズルリ……。枝から降りて地上へと降りる。ナクトマンリーダーのいる木を確認し、すぐさま球状メタルボディで回転移動。リーダー目掛けて溶解液発射!

「今度も駄目か、やっぱリーダーは別格か?」

ピョンピョンと枝を渡ってナクトマンリーダーは距離を取った。他の連中は付かず離れず一定の距離で包囲網をキープ。

「ギョイ、ギョイ、ギャイ!」

何か言ってらぁ、意外と厄介だな。はい、来ました石礫。

……に合わせる様に他2匹が挟み撃ちの格好で接近。あれ? これって敵が近付くのを待っていた方が楽なんじゃねぇ? 近付く2匹が射程に入ると同時に頭部へ極細触手をプスっとな。先程と同様に先端を膨張させて……グジュ! メシャッ!


ドッ、ドサッ!


頭部の無いナクトマン2匹が地面へと落ちる。これで3匹、残り4匹。石を投げてきていた連中とリーダーが残った。奴等、どう出る?

「ギョ、ギィィッ!」

リーダーがまた吠えているな。

【マナ感知】


「なんだ? リーダーから嫌な気配を感じる」

『警告、魔法発動を感知』

っ!? 魔法か……。石礫が3方向から飛んで来るが、俺にとっては牽制にもならない。それよりも魔法の発動時には体内でマナが通常とは異なる動きを見せるんだな。腹の辺りでクルクル回る様な動きをした後、前方へ突き出した腕へと収束していく。


……来る!


『警告、速やかにその場を離れる事を推奨』

キュリヤの警告とほぼ同時に動いていた。今のは俺でも分かった。足元の地面からマナの異様な動きを感じた。回転移動でナクトマンリーダーに迫る。元居た場所の地面からは岩が隆起していた。先端は尖っていて、根本は直径1m、高さ2.5m程の岩の槍か? あれが魔法だろう。

更に、それと連動する様に投擲隊3匹が接近戦に切り替えて距離を詰めてきた。魔法発動を合図にでもしていたか? やはり連携が取れているんだな。リーダーは次の魔法発動の準備に入った様だ。他3匹のうち1匹が地上に降りて走ってきている。他2匹は木の上から別方向より接近。捌ききれる気がしなくなってきた。瞬間、地上に降りていた奴が物凄いスピードで迫ってきて飛び蹴りを食らった。

「痛っ……くはないな」

位置は捉えていたけど、一瞬とんでもない速さになって対応しきれなかった。

進行方向を逸らされた俺に間髪を入れずに上から2匹が絶妙なタイミングで波状攻撃を仕掛けてくる。

カッ、ガリッ!

硬度を上げたメタルボディに奴等の引っ掻き攻撃など意味もなく、離脱しようとした1匹に極細触手での頭部破壊を試みるも空振り。これは目で見て回避しているんじゃないな。マナを感知しているのか、はたまた気配を察知しているのか……。

おっと、この場を離脱、同時に地面から例の岩の槍が出現。いい加減うざったくなってきたので、極細触手を4本出して体の周りを地面と水平に高速回転させる。イメージは草刈機。

一瞬とんでもないスピードを出した奴が飛び掛かってくるのが分かったからだ。

ジュンッ!! ズバッ! シュバッ! シュピ!

急制動が出来なかった奴は、触手の餌食になって肉片を飛び散らせながら上半身と下半身がさよならしていた。上方から窺っている2匹は飛び掛かるのを躊躇しているのか? 来ないならこちらから動く。


球状メタルボディによる回転移動、ナクトマンリーダーに一直線に近寄る。魔法発動の準備をしていた奴まで5mという所で他の2匹が飛び掛かってきた。リーダーを守る為の動きか? だが、それは悪手だ。

単純過ぎる接近には対応できる。極細触手2本が2匹同時に眉間を突く。同時に先端の体積を膨張させる。

ゴシャッ! メシャッ!

頭部を破壊された2匹が地面へと横たわる。

「よし! 後はリーダーだけだな」

その魔法は効かないんだよ! 岩の槍が生えるギリギリ外側へ移動し、地面を這う様に極細触手を走らせてナクトマンリーダーの足首に絡み付ける。そのまま自分の方へと引っ張るとナクトマンリーダーは転倒し引きずられる格好に。

「ギギョー!?」

慌てるナクトマンリーダーは、足首を拘束する俺の体を引き剥がそうと必死に叩いたり、掻きむしったりするが徒労に終わる。全身に俺の体が覆い被さる。溶解液はまだ出さず、更に頭だけは体外に出しておく。そして、前に野ネズミが体内で暴れた時の気持ち悪さを覚えているので、体が動かせない様にナクトマンリーダーの周りの硬度を高める。

【マナ操作】

【身体操作(ゲル属)】

「ふぅ」

一段落着いたら、どっと疲れた。落ち着いて戦えたのは、小中高12年間通った空手道場の師範のおかげかな? 社会人になってからは一度も顔を出していないし、喧嘩の一つもした事無いけど……。


「さて、キュリヤ、コイツはもう倒してしまうしかないのかな?」

『肯定、初戦闘お疲れ様でした。意思疎通不可、逃しても碌な事にならないと推測』

「ギギ……、グギュー」

「だね。それにしても魔物に生まれ変わったんなら魔物の言葉も分かるかと思ったがそうはならないらしいな」

『肯定、種族毎にローカル言語が存在』

「ふーん、んじゃ、とりあえずいただきますか」

頭まですっぽり俺の体に覆われたナクトマンリーダーはなす術もなく溶かされていった。

「なんだ? すっげぇ……なんだ? なんて言ったらいい? とにかくすげぇ!」

『ダーザインレベルが上がった模様』

「ダーザインレベル?」

『実存値、とも言い換えられます』

「と、とにかく何かのレベルが上がったって事ね。で、それってなぁに?」

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