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異世界人外転生してイーヴルゲルなる魔物になってしまった俺は、唯一の拠り所であるナビゲーターさんに質問を繰り返すのだった。

「ナビゲーターさん、この世界に俺を転生させたのは、創造神ミルユーで良いのかな?」

『肯定』

「じゃあ、何か使命とかこの世界で俺にやって欲しい事とかはあるの?」

『否定』

そうか、意味もなく人をゲル状生物に転生したのか? それともそうしなきゃいけない理由でもあったのか……。

「地球での俺は死んでしまったの?」

『肯定、ただし当機は固有名・捧道雄が死亡後にこの世界へ転生される段階で創造された為、死亡に至った経緯の情報はありません』

そうか、死んでんのかぁ。何が起きてそうなったのかはわからないが、ゲル状生物として命を拾ったと思っていくしかないな。ま、考えても仕方ない事は一旦スルーだ。

「この世界にも地球の様に集団生活をしている人間は存在しているの?」

『肯定』

「もしも今の俺と遭遇したら?」

『大抵の人間はイーヴルゲルの存在を察知した時点で逃走すると推測』

「まぁ、凶悪な魔物だもんね」

『また、一部、一定以上の戦闘能力を持つ人間の集団には討伐される可能性もあります』

「討伐ねぇ……。そうなると俺の戦闘能力ってどんな感じなの?」

『通常個体のイーヴルゲルの主な攻撃手段は、自在に形状変化が可能な身体を使い死角から飛びつき覆い被さりそのまま相手を溶解させるか、触手状に伸ばした身体による刺突、鞭打、また呼吸器を塞ぐ等の物理的行動、更には魔法の使用が確認されています』

【マナ感知】

【マナ操作】

おろ? 周囲の景色が鮮明になった? というよりマナ同士の結びつきが分かる様になったのか? 物体ひとつひとつの輪郭がよりはっきりしてきたみたいだ。そして今、俺は確かに動けたぞ。ちょっとだけプルプルした。攻撃手段なんかを聞いていたら無意識に体を動かそうとしたのか?

『マナをより高度に知覚できる様になった事も起因していると推測』

「ところでナビゲーターさん、君に名前はあるの?」

『否定』

「そっか、いつまでも"ナビゲーターさん"というのもなんだなと思ってさ」

『固有名・捧道雄の好きに呼称する事を許可』

「改めてそう言われると思い付かないんだけどさ。 ハハハ……。それよりその『固有名・捧道雄』ってのも堅苦しいからやめない? 普通にミチオとかで良いよ」

『了承、これよりミチオと呼称』

ふむ、名前ねぇ……。ナビゲーターだからナビ? 案内人のアン? 安直過ぎるな。

「あ、年齢や性別とかはあるの?」

『否定』

「そっか、年齢は生まれたばかりみたいなもんだし、そもそも人間でもないんだしな」

『肯定、しかし女性ベースである事を提示』

「ふむ、あとは流暢に俺とやり取りしているけど、感情や意思みたいなものは?」

『肯定、擬似生命体としてある程度の自由意思を有しています』

「ふーん、擬似生命体ねぇ。今は俺の脳と直接会話している様で、周りに誰かいる気配もないけど、物理的にこの世界に存在する事も可能なの?」

『肯定』

「お? どんな姿なんだろう?」

『ある程度の自由度があるので人間、動物、魔物、機械、などなど対応可能』

「ほほぅ、そいつは……」

『ミチオ、不適切な妄想は控えて下さい』

うっ! 思考ダダ漏れをうっかり忘れてしまった。

「あは、あははっ! ごめんなさい。ところで名前なんだけど、こんなのは……」

『肯定、その呼称で構いません』

「こっちが言う前に思考を先読みしないでよ!」

『シームレスな会話だと自負』

「まぁ良いさ、じゃあ今から君の事は"キュリヤ"と呼ぶ事にするね」

【接続強化】

差し当たって自由に動く為の練習だな。さっきの感覚からしてこんな風に……。


ズズ……ズズズ……。


おお! 移動できた。感動すら覚えるぞ。

『提案、形状変化、及び硬度変化も可能』

「そうだった。試してみよう」

デカい大福?……から、限りなく球体へ…………? できているかな?

『肯定』

直径1.3m位の球体になった様だ。そうしたら、このまま今度は硬くなる様に……。金属をイメージしながら……硬さは自分じゃ分からないなぁ。よし、お次は回転移動。


コロコロ……コロコロ……。


硬度を確認する為に手近な木を目掛けて回転アタック!


コロコロ……ゴンッ!!


へへっ、流石ゲルだ。なんともないぜ!

【マナ感知】

【マナ操作】

【身体操作(ゲル属)】

木は少し凹んだ程度だが、こちらには痛みや異常は無しだ。


ザー、サワサワ……。

チチチチチッ。


木々のざわめきに鳥の声?

「急に周りの音が聞こえる気が……」

『肯定、ゲル属は身体に受けた振動を聴覚の代わりとして周囲の音を知覚しています』

「何をするにせよマナを意識しなきゃいけないのね?」

『肯定』

「ちなみに俺が喋ることはできる?」

『肯定、しかし更に高度なマナ操作を修得し、擬似発声器官を生み出さなくては不可』

「擬似発声器官ね、覚えておこう」

まずは体の動かし方に集中だ。……と、その前に。

「キュリヤ、俺って食事の必要は?」

『生物である以上、必要不可欠です』

「ですよねー。で、方法は……溶かして吸収?」

『肯定、イーヴルゲルは有機物、無機物の区別なく溶解し吸収する事が可能』

「う、うん、味覚は無いものと想定するが、なんでも食えるってのもなぁ……」

とりあえず、そこら辺の草でも吸収してみるか。コロコロ……。………………。

「メタルボディで踏ん付けちゃってるじゃん!」

気を取り直して、じんわり覆い被さる様に草を体内へ。

んで、どうするんだ?

『対象を溶解吸収する様に意識して下さい』

「はいはい、これもマナを意識しながらだね」

シュワワワワー……。ふむ、いまいち食事という感覚ではないな。近くに落ちている石ころもいってみるか。身体の一部を触手状に伸ばして、石ころをキャッチ。触手を戻して体内に石ころを入れる。シュワワワワー。おぉーい、昨日までの俺よ、生まれ変わった俺は石を食ってるぞ! ハハ……。なんだか虚しい様な、ひもじい様な……。ま、無機物じゃ栄養にはならないだろうから、もう少し食い出のある物を探そう。

『否定、ゲル属はマナを糧にしている為、マナ保有物であれば全てが捕食対象』

「あ、そうなの? でも、石を食っているのはちょっと……」

ん? 動く物発見! 30cm程の四足歩行、小動物か何かか?

『肯定、野ネズミの類いと推測』

一丁狩っときますか。まずは、じっとする。スーン……。ちょこちょことコチラに気付く気配もなく近寄ってくる様だ。いや、匂いを嗅いでいるな。匂いでこちらを認識しているのか? 推定距離5m、触手の先端だけを硬く尖らせる感じで……、射出! ニューン……シュビッ! 野ネズミの胴体を貫通……からの、そのまま獲物を捕獲して触手の先端で獲物を覆い本体へ戻す。スルスルスル……。上手くいった。イメージ通りに身体操作を行えた事と獲物を捕獲できた事に満足感を感じながら吸収していく。

【マナ操作】

【身体操作(ゲル属)】

ふむ、特にHPバーの様な物や、数値が見えたりとかはないんだな。空腹感も満腹感もないのでいまいち食事の感覚ではない。

『しかし、確実にマナを吸収出来ています』

「んー、そっか、なら良し」

触手で捕らえた物を自分に寄せられるなら木の枝を掴んで樹上へ自分を引っ張り上げる動作も可能だろう。近場の木の枝へ触手を伸ばし、スススー……。おぉー、だいぶ動ける様になったんじゃないか?周囲を見渡す。……っても常に360度視界に捉えているんだが。大体半径30m位の範囲までかな? そしてその範囲内なら死角というものが無い。マナを感知しているのでマナを遮断するものでも無い限りは視界良好なり。

「キュリヤ、マナを遮断するものとか、マナを隠蔽するものとかって存在するの?」

『肯定、多岐に渡り存在します』

「おっと、じゃあ調子に乗り過ぎて痛い目に……なんて事もあり得るか」

しかし、現状だとマナそのものを感知する以外に何も出来ないんだよな。音も重要な情報だし、音を出せる様になればエコーロケーション的な事とか? あとは熱感知とか? 手札は多いに越した事はないな。

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