18
手に入れた(と勝手に呼称する)我が家に約1名、謎のマナを感知している。うーん、コイツなんだ? 生物でもなく、アンデッドでもなく……。
『ミチオ、それに従うべきと推奨』
キュリヤがドヤって言うくらいだ、何かあるのだろう。ふむ、行ってみるか……。
寺院跡もとい! 我が家! に潜む謎のマナを探りに覚悟を決めて2階部分へ上がって来た。2階には6畳間位の部屋が4つある。その内の1つにマナを感知している。そちらへとマナ状態になって移動……。あれ? この感覚は……、存在値が上がった……。そして、頭痛の様な感覚を覚える……。今までは陶酔感に近い感覚だった筈が、若干の苦痛を感じている。苦痛……、では無い? 新たな可能性……。マナが空中に溜まっている様な物から、どんどんと俺にマナが注がれてくる。痛みの様なモノの原因を探ると答えが見えてくる……。構造が変わる……、特性が変わる……、変わる……。
【種族変化】
思えば遠くへ……ふふ、ふん、ふん♩ 異世界転生としか思えない日々だった。しかも人外にだ。未だに慣れないマナで見る全方位の視界。体の操作は、慣れたらこっちの方が便利だ! まであるかも? 夢ならば、もうそろそろ覚めても良いんじゃないか? はぁ、どうやら夢じゃ無いんだよね……。それにしてもキュリヤとブラガか……。夢から覚めてアイツらが居なくなっていたら、嫌だな……。キュリヤ、いつもありがとう……。ブラガ、これからよろしく……。
低い振動を感じる。低周波?
【振動感知】
いや、なんか、ヤバい! ん? 俺の中心から? 漣、連なり、繋がり、津波と成り、堰を破る? 脈動! 脈動っ! 脈動ぉぉっ!! なんかヤバい! 意識を保てない? ……。…………。………………。
う〜ん、うん……。粘菌生物になってから初めての睡眠か? いつの間にか意識を失っていたみたいだな。何が起こった?
「キュリヤ?」
『報告、ミチオは種族名・イーヴルゲルより種族変化、種族名・ケイオスゲルとなりました』
「種族変化? しかし、ゲルからは脱却出来ずな……」
見える景色に差異は無し、俺のマナには若干の変化有り、それ以外は特に変わった所は無さそうだ。
「で、ケイオスゲルってのは、この世界だとどんな魔物に分類されるの?」
『不定形生物ゲル属の中でも、周囲に混沌を齎す希少種とされています』
不吉過ぎる……。世界に混沌を撒き散らすとか、絶対悪者側の立ち位置だろ! 討伐される側なのも相変わらずという事だ。あれ? この感覚って……。周囲のマナを感知、任意の座標を特定して……、瞬間移動……、成功。いちいちマナ状態にならずに瞬間移動が可能になった。種族変化のお陰か、偶然今思い付いたのかは分からないけど便利なので良し。あれ? マジであとは何も変化無し?
『否定、マナ保有限界値が大幅に増大』
「ん? マナの保有限界値……? 上限とかあったの?」
『肯定』
今まで知らずにいた……。
『どんどん補充する事を推奨』
「その位の変化かな?」
『報告、イーヴルゲルが放つ臭気が消えました』
「悪臭からの解放!?」
これが一番嬉しいんじゃないか? 自分では分からないとはいえ、強烈な悪臭を放っているのは心底嫌だったからな。
「そうとなれば、晴れやかな気持ちで色々と検証だ!」
【属性魔法(木)】
【属性魔法(土)】
【属性魔法(金)】
という事で自宅を出て森の中を移動して、動きと魔法をあれこれ試してみた。硬度が異様になっていたり、体の動きが益々スムーズになっていたり、植物、大地、金属に干渉出来る魔法を覚えたり、出来る事が増えて更に検証が必要になり、その結果新たに出来る事が増えていく。良きスパイラルだ。
「それにしても、キュリヤが俺の眷属だったとはね」
『肯定』
「だから会話が成立していたんだな」
『肯定』
「で、今更だけど眷属って何?」
『配下、或いは従者とも取れます』
「うん、言葉の意味は大体知ってる。で、どういう事が出来るかだよ」
『精神的な繋がりを持ち、主人の補佐が使命となります。主人の不利益となる行動には制限が掛かり、主人の命令は拒否出来ません』
「なんか隷属させている様で複雑だな」
『便利なお供、程度に考える事を推奨』
「そういや、俺ん家になった建物に巣食っていた魔物連中も悪魔とその眷属だったんだよね?」
『肯定』
そうか、マナ状態の俺の位置を悪魔との繋がりで理解した訳だな。まぁ、弱過ぎて瞬殺だったが。それにしてもあの悪魔、俺を知覚出来る程度にはマナ感知能力は高かった訳か……。
「【眷属の秘事】に物理的距離の制約なんかはあるの?」
『不明、この星の地上、と限定するならば制約は受けません』
「そうか、じゃあブラガも気になる事があったら、遠慮無く言ってくれ」
「承知ですぞ、マイスター」
ゴーレムのブラガは自宅待機だ。というのも、あの建物の守護を目的として錬成されている為、敷地から遠くには離れられないのだとか。制約がある分、性能は高いと本人は豪語していた。
「ま、適当に敷地内の整理整頓とかしておいて」
「承知!」
出来る事が増えていくのは本当に嬉しい。しかも、人間だった頃とは異次元としか言いようがない程に自由度が高い。完全にファンタジーだ。魔法に関して言えば、キュリヤ曰く属性魔法、光、闇、木、火、土、金、水、とあるうちの大半を習得したとの事。……光と火ってファンタジーの王道っぽい属性の魔法だけ覚えない事に思う所はある。異世界転生して、まず火球とか覚えて、最終的には光の特大魔法で魔王を倒す。……みたいな流れには乗れていない。むしろ敵側っぽい雰囲気を払拭出来ない。
土魔法【土弄り】で目の前の地面に縦2m弱、幅1m弱、厚さ5cmの土壁を出現させる。丁度畳一枚位の大きさ。この魔法を応用していけば、猿のリーダーが使う土の槍も作れるだろう。触手を伸ばし小突いてみる。パラパラと音を立てて簡単に貫通してしまう。盾としての利用価値は低い。地面、土を操作出来る魔法……。逆に落とし穴とかか? 直径2m、深さ3mの穴を作る。地面の部分は崩れない程度の厚さを残し、穴の底には圧縮させた土を棘状にしたものを何本か作ってみた。実用性はどうだ? 現状の土魔法では簡単な事しか出来ないな。
次は木魔法【植物操作】で近くにある木の枝を1本鞭の様にビュンビュン振り回してみる。素材は元の木の枝のなので威力は高くないだろう。自前の触手の方が強い自信がある。うーむ、植物を操作出来るといってもなぁ。特に便利な使い方が思い浮かばないな。家庭菜園でもあれば成長促進とか出来たのかな?
お次は金属魔法【金属探知】、今回覚えた魔法の最後の1つだ。……そうなんだけど、現状で可能な事といえば文字通り金属探知だけだ。マナ感知距離よりも5倍近く広い範囲内を探知出来る。だが、それだけだ。鉱物資源を採掘する人には羨ましいのかな? 少なくとも金属を加工する技術を覚えるまでは出番が無さそうだな。
【属性魔法(木)】
【属性魔法(土)】
【属性魔法(金)】
そんなこんなで時刻は夜。アバウトな感じで心苦しいが時計なんていう便利な文明の利器は無いので悪しからず。試行錯誤の末に新たな魔法を習得する事に成功。ただし、使い道が無いのも含まれる。まず木魔法、【樹木家屋】という木の中に空間を作る事が出来る魔法。正直要らない。立派な家を手に入れたばかりだし、なんなら家を必要としていない。この森へ迷い込んだ人間なんかがセーフハウス代わりに使うとかなら使用法もあるかな? 次は土魔法、【硬質岩石】という土を操作する際に硬度を上げられる魔法だ。この方法で作られた壁ならば盾の役割を持たせられると思う。更に槍状に地面から隆起させれば、ナクトマンリーダーの得意魔法も再現出来る様になった。残念なのは地面と繋がっている状態でないと硬度が保てないという事だな。岩の槍の先端を折って飛ばすみたいな使い方は出来ない。折った途端に元の土に戻ってしまった。最後は金属魔法、【物質化】という念願の金属加工系の魔法。金属を任意の形へと形成する魔法なのだが、いかんせん時間が掛かる。周囲から金属を集めて作るんだから当たり前と言えば当たり前なのだが、テーブルナイフ程度の物を作るのに体感で5分位掛かった。材料集めに難有りの為、咄嗟の時に使える魔法ではない。暇を見て金属を沢山集めて何か拵えてみよう。浪漫武器の妄想が始まった。




