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寺院跡に居た悪魔という魔物は何の情報も持っていないただの住人だった。地下の広間に、降りて来てから気付いた事がある。もっと下にも空間がある。行くしかないっしょ! って事です。広間の中央部に祭壇? みたいな物があってその下、更に下へと続く階段があってその先に空間がある。魔物の類いは居ない……筈。
「キュリヤ?」
『肯定、この先の空間まで生物は確認できません』
行くしかないな。マナ状態にはならずに階段をコロコロと転がり落ちていく……。ここは? 6畳間位の広さの空間、中央部の床から30cm×30cm、高さ1m位の直方体の構造物がある。
『中央にある構造物への接触を要求』
「なんかあんのか?」
ニュ〜ン……ピトッ! 触手を伸ばして触れてみる。
「キュリヤ、何か分かる?」
『肯定、この場から建物にマナを送る事が可能』
「で?」
『魔物を寄せ付けない結界を展開可能』
「本当に棲家に出来そうじゃん?」
それじゃ、早速……。
「なんだ?」
『警告、悪魔の生存をかく……』
「%%! %%!」
『翻訳「お前凄いな! 我を殺したのか!」』
生き返った? 何が起きている? 階段を降りてきた悪魔が接近してくる。
「キュリヤ!」
『蘇生ではないと推測』
『翻訳「初めての経験に一瞬戸惑ったが我に敵うと思うなよ下等生物」』
蘇生では無い……。再度コイツのマナを吸収する。マナに意識を集中する……。速攻で触手を当ててコイツを構成するマナは全て吸収した。跡形もなく消えている。すると違和感を感じると次第に……。ほぅ、何も無い空間にマナが溢れ出てくる……。それは程なく悪魔として実体となる。
『翻訳「何度試しても良いが無駄だぞ! 我は不死身だ」』
どんなトリックだ? 奴のマナは一度完全に消えていた。バックアップでもとっているかの様に、何事もなかった様に戻って来た。マナになれるのか? 奴も? いや、違うな。マナは随時感知出来ている。次は肉体を構成するマナのみを残してマナを吸収してみる。空っぽの悪魔の器の胸の辺りからマナが溢れ出てくると……。
『翻訳「無駄無駄ぁ! ゲルごときに我を殺す事など不可能なのだよ!」』
肉体が残っていた場合には中身だけが何処ともなく戻ってきたな……。マナの吸収は一旦やめて、方針変換だ。物理的にしばいてやる。極細触手を4本同時に腕、脚の付け根に突き刺す! 瞬間、先端部の体積を一気に増加させ四肢切断。両肩、両腿が爆発したかの様に吹き飛んだ。
『翻訳「何をした? テメェ、一体何をしやがった? 何をしやがったんだよぉっ!?」』
地面に転がる悪魔を観察しながら体から離れてしまった四肢を回収して体内へ吸収。あれ? コイツ無限に食べられるんじゃあ……。永久機関は浪漫だな。今のところ悪魔の四肢が生えてくる気配は無い。
『翻訳「こんな状態にしやがって……、さっさと殺せ!」』
殺したら復活するでしょ? 君? 死なない程度の怪我は治らない。てゆうか、コイツの腕やら脚の切断面からは一滴の血も流れていないぞ? 何らかの魔法だろうけど、核心が掴めないな。
『状態保存系の魔法を応用して止血に使用していると推測』
そういう小賢しい技は持っているのね? 次は、体内に入れて吸収しながら観察してみる。例の如く頭だけは出しておいて……。
『翻訳「な、お、お前! フガフガ……」』
うるさいのは嫌いなので口は塞いでおく。あれ? 溶解速度が遅いな……。さっきキュリヤが言っていた状態保存系魔法のせいか? 即分析、即対応。ゲルの便利体液生成術を刮目せよ! 状態保存系魔法を溶かす溶解液を分泌。すんなり通った事を確認して、悪魔の状態を観察する。なんかモガモガ喚いている様だが放っておく。奴のマナは次から次へと俺の物へと還元されていく。
ゆっくりと検証しながら悪魔の体を溶かしていった。絶命を確認。マナはまだ全部吸収しきってはいない。何か変化はあるか? ……特に何も起きないな……。3回まで無敵みたいな能力だったのか? なんか、腑に落ちないけど幕切れはあっさりだな。それでは早速、建物にマナを送り込んでみよう。と、思うが早いか、悪魔の残留マナを全て吸収し終えた時、俺の体内にマナが溢れ出て来る。そういう事なんだろう。そして今までのヒントと、今の感覚でピントが合ってきたぞ! 重力のマナを感知した。方法は分からない。だが、恐らく合っている筈だ。コイツを構成するマナに集中だ。何処かに有る筈……。有った! 不自然に重力のマナが魔法的軌道を描いている箇所。無数の粒々が蠢きながら干渉し合っている中から探すのは中々骨が折れるな。骨、無いけど……。さて、後は検証だ。重力のマナに守られているマナがあるな。重力のマナの特性は対象を在るべき場所に固定する力だった事から推測すると、自我なのか核なのかそれ以外かは知らないが、そのマナさえ有れば再構築されるギミックだという事だな? 命をこの世に繋ぎ止める為に重力のマナを使っているだなんて、魔法ってのはなんて奥深いんだ! しかも、こんな三下感半端ない奴が、こんな高度な魔法を行使している事も併せて驚愕だな。
『報告、この魔法はこの個体自身が使った可能性は低いと推測』
「ん? やっぱ? この程度の奴が使うには複雑そうな魔法だよな?」
『肯定、上位者が居ると推測』
「コイツから情報が得られると思う?」
『試してみます』
「あぁ、じゃあいつもの翻訳&【念話】オネシャス!」
『了解』
「お前の不死身の種は割れた。次は戻って来られないから最後に質問だ」
『ふん、強がりを……! 万策尽きてブラフでも張ったか?』
「そういうの今いいんで」
……。
…………。
『な、何を? 馬鹿な!? 本気で言っているのか?』
「だから、そう言ってんじゃん、メンドクセーなぁ」
『いや、えっ? 【我あり】ってどうこう出来る様な代物では無いぞ!』
「私マナ専門家なものでして……」
(【我あり】という術式なのね)
『しかし、我をみくびるなよ! 例えこの身が滅ぼされようと、あの方の情報は何一つくれてはやらん! 殺るなら、殺れぃっ!!』
(あの方ってのが居る事を確認っと)
「そうか、残念だ。それじゃあ本当に最後だ。お前達の組織の規模は?」
『誰が答えるか! いずれこの森の全ての魔の者共を掌握し、人間社会へ復讐するまでは誰1人欠けてはならぬと、あの方が施してくれたこの術式に誓って、断固黙秘だ!』
「そうか、さようならだ……」
悪魔は瞬時に溶けていった。そして、もう2度と復活する事はなかった。間抜けで良かったわぁ。森の中には魔物を引き連れて人間界に喧嘩を売ろうとしている組織がある事が分かった。あの悪魔には知らされていたのか分からないが、この建物も思惑が有って占拠していたと見る方が良いな。さてさて、今度こそ建物にマナを送り込んでみるぞ。
「!」
徐に気を張ってみたりしたが悪魔の復活はもう無い様だ。気を取り直して部屋の中央部にあるコンソール的な物の前まで来てみた所で、どうするんだ?
『直方体上部よりマナを送り込んで下さい』
「了解! 触手を伸ばして……」
あぁ、なんか分かるわ……。人間だと手を翳して送る感じかね? さぁ、たっぷりお食べ。ってな感じでドクドクとマナを注入していく。不自然にマナが一切通っていなかった建物全体にマナが満ちていく。光のマナが増えていく……。灯の類いだと思しき物体が壁の天井に近い高さの部分に等間隔で並んでいる。
満タンってあるの? って程長い間マナを送り込んでいた。幸いな事に俺の保有マナにはまだまだ余裕がある。マナを注入しながらぼんやりと考えていた。人間へ侵攻するつもりの連中か……。規模は今のところそれ程でもなさそうだが、組織だって行動しているのは脅威となるな。ただ俺の立場は魔物ではあるし、現に人間の討伐隊も組まれた程だ止める義理はあるのか……。あとはあの純粋霊の本望は果たせたのだろうか?
『警告、ゴーレムの起動を確認』
「あぁ、俺も感知している」
はてさて、どう転がる?




