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マナ生命体という特性? を得た俺は肉体を離れながら、意思を持って行動するという生物? になりました? マナ的存在になった瞬間、とんでもない多幸感に包まれた。これは存在値が相当上がったんじゃなかろうか?
『肯定』
「やっぱり、今までと比にならない感覚だったからな」
『現在の存在値は25』
「何の目安にしたら良いのか分からんが上がるに越した事はないな」
視界良好! ちなみに見え方は変わりませんでした。自我の中心から球状に約30mの範囲内にあるマナを感知している状態だ。そして、重力から解き放たれた事により以前よりも上下左右の感覚が曖昧に……。駄目じゃん! こればかりは慣れるしかないな……。移動は……?
「何これ、気持ち悪い!」
テレポート? 瞬間移動しちゃったよ今! マナ感知範囲内の任意の場所へ考えただけで移動している。30mを一瞬で飛んでいく。それを繰り返していく。物凄い速さで移動出来ているのでは? マナによる視覚で見ているので、うっかり座標が狂って壁と融合なんて事にはならないだろう。そもそも物理的に存在していないので、その心配は無いんだが一応確認だ。そして色々と実験を重ねていく。【超個体】により多くのフィードバックを与える目的もある。マナの状態から物質のボディへの移行は一瞬で行われた。変身ポーズ中に攻撃してくる野暮にも対応可能である。
「キュリヤ、マナ状態の時って他の生物からは視認されないの?」
『肯定、ただし高いマナ感知能力を持つ個体には存在が察知されると推測』
「ふーん、でも触れる事は出来ないんでしょ?」
『肯定、しかしマナに干渉できる方法を持っていた場合には危険があると推測』
そういや、浮遊霊の【見えざる手】はマナを直接攻撃してきたな。
「マナに干渉ねぇ……」
地面に生えている一本の草、こいつを構成しているマナは具体的に分かる。そのマナを吸い取る……。形を形成しているマナだけを残す様に……、成功か? 物理的に存在しているが死んでいる状態。枯れた訳でもないのにもう生きていない草。
【無属性魔法】
『【吸収】の魔法発動を確認』
「ありがちな技だけど使えそうだね!」
また一つ、変死体の製造方法が出来てしまった。これって寺院跡のゴーレムには通用するだろうか?
『否定、ゴーレムは通常、マナ遮断性の高い装甲を採用する為、効果の減衰があると推測』
「そうか、火力不足が解決しないな」
ていうか、俺って搦手系のスキル構成だった筈だよな?
「習得済みスキルの確認とか、なんならステータス的なものとか見られないの?」
『肯定、ただしミチオは自力で確認する事は不可』
「なーぜ?」
『スキルを確認出来る道具、或いは技能が無い為』
「人間界にはそういうスキルとか魔法、道具の類いがあるのね」
『肯定』
スキルか魔法なら自前でもなんとか出来るんじゃないか? と、思うがひとまず置いておく。
ちまちまと重力のマナを弄って遊んでいる。マナに対する深い理解が可能になった様で色々と可能性が広がった気がする。重力のマナの特性みたいなものが分かる。その物体が在るべき場所に固定する力といった感じか? 林檎が枝から落ちて地面に落ちるのは在るべき場所へ移動しているといった感じ? 相変わらず語彙力が皆無だな……。言語化よりも活用方法の方が大事なので悪しからず。重力のマナを魔法的運動をする様に操作してみる。一筆書き、或いは幾何学模様を描く様に空中でマナを転がしていく。いくつかのパターンを試しているとマナが作用する点が出来始める。魔法学者ではない俺は完全に感覚のみで行なっている。こういうのは体系だった理論とかがあるのだろう。そういうのは偉い人に任せておく。
【無属性魔法】
『【重力】の魔法発動を確認』
「ふぅ、魔法として発現したかぁ」
『肯定、更に幾つかのパターンを検証する事を提案』
「だな、今は重力を任意に扱う事が可能になった訳だから……、闇魔法と掛け合わせるとしたら……、単純な力はマナの量に依存……、物理攻撃のインパクトの瞬間に……、対象に対する重力のみを変化させられるという事は……、自分自信への応用……」
【魔法適性】
【無属性魔法】
【属性魔法(闇)】
結果的に言うと残念ながら高威力の攻撃魔法の習得には至らなかった。まず、重力魔法は扱いが難しい。闇魔法【影縛】と掛け合わせて出来た【重力影縛】は拘束力が高まって安定した。それから、自分の物理攻撃に乗せる形で発動させると威力の向上に繋がった。こちらは使い込めば更に馴染んでいくだろう。ゴーレム戦には気が向かないままだな。あれ? マナ状態になって直接寺院跡内に侵入出来ないか?
「キュリヤ?」
『肯定、ただしマナを一切保有していない建物の存在を提示』
「そうだった。あの建物、一切マナが無いんだよな。でも、マナを遮断していた訳じゃない。現に中に魔物が居る事を確認しているしな」
『肯定、しかし、マナに何らかの干渉があると推測』
「ん〜、宗教施設ならではの何かがあるとか? それがどういったモノなのかも含めてやっぱりもう一度近付いてみるか……」
という訳で寺院跡です。正面入口らしい石畳だったと思しき道の先にゴーレムを捕捉。そして建物の中、やはりアンデッド系だと思われる魔物が彷徨いている。
「認識の齟齬はある?」
『否定』
「オーケー」
この場所からならマナ状態になれば建物内に直接移動可能だ。
「中に俺の脅威となる敵性体は?」
『1体のみ確認。種族名・悪魔の脅威度が高いのみです』
「それは地下の広間に居るこいつ?」
『肯定』
「オーケー、やる事は分かった」
情報共有後まずは侵入、そして悪魔退治。建物にマナが無い理由も調べてみたいな。ゴーレムは起きてくれない事を祈る。【超個体】が否定していない事が自信にもなっている。悪魔の座標は特定済み。瞬間移動での急襲による即吸収を敢行! あとは心構えのみ……。ふぅ、集中……。
瞬間移動は成功。魔物が複数体居るが感知されている気配は無い。
悪魔は……、ん? 喜び? 笑っている? バレて……い、る? すぐさま距離を取る。
「%%%%……、%%%%?」
「キュリヤお願い、略してキュリおね」
『なんだか臭うと思ったら……、クッセェゲルが紛れ込んで来たか?』
あー、完全にバレとるやないかい! しかも、何者が侵入したのか理解しているという事だ。とりあえず周囲の他の魔物を片っ端から吸収してやる。……と思ったら、魔物達が一斉に俺の方へ向かって来る。急に感知された?
『翻訳「行け! お前達! 奴がどこに居るのかは我が捉えている!」』
配下に俺の場所が分かる様にしたと……、分かった所でコイツら……。
遅過ぎる!
隠れている意味が無くなったので実体化する。注意するべきは悪魔のみ。配下のアンデッドは全員マナを吸収!触手を伸ばして軽くタッチ、【吸収】で全員美味しく頂きました。
『翻訳「バ、馬鹿な!?」』
なんだか酷く狼狽しているみたいだ。
『翻訳「我の親衛隊が一瞬で消え去っただと!?」』
あー、親衛隊とかそういう? なんかエリート取巻きみたいな? こうなっては悪魔の方も底が知れたな。
「キュリヤ、念話通訳お願い」
『了承』
「会話が出来るなら答えろ。この建物は何だ?」
『翻訳「【念話】だとっ? 不可視の魔法も扱う様だし、特異体か?」』
不可視の魔法だと認識しているのね? はいはい……。
「答えないのなら貴様も喰らうだけ」
『翻訳「待て待て、コホン、ここは古い寺院跡地さ」』
そんなもんは入る前から分かっているんだよ!
「ここで何をしている?」
『翻訳「何っていうか、棲家?」』
家かよ! 秘密組織に、悪の儀式、そんなの期待していたのに……。しかし、アンデッドを従えていたのは事実だな。
「ここに居るアンデッド共は貴様の配下か?」
『翻訳「ああ、建物内に居る眷属達は皆、我の配下だ。ど、どうするつもりだ?」』
どうにでもしてやれる。だから、どうするのが正解か分からない……。
「どうとでも……。あとはこの建物には一切マナが通っていない事には?」
『翻訳「ん? マナが通っていない? そうなのか?」』
本当に分かっていない様だな……。たまたま空いていたここを根城にした魔物、それ以上でもそれ以下でもないか……。
「それじゃ、さようならだ」
『翻訳「お? 帰るのか?」』
「あぁ……」
【吸収】発動。
悪魔を吸収した後、建物内に居たアンデッドは全て吸収して回った。脅威はひとまず無くなったな。そしてミチオは知らなかった。知る由もなかった。悪魔の配下達は彼の趣味によって見目麗しいナイスボディの御婦人方が集まっていた事を……。レオタードプラス軽鎧という趣味丸出しの揃いのユニフォーム姿も……。ミチオには見えていなかった……。残念ながら。男女の区別すら付いていたのかいないのか、無慈悲に等しく吸収されてしまった。




