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数日間、戦闘能力向上、多様な経験を積む事、更には【超個体】の効果をテストしながら過ごしている。
【魔法適性】
【無属性魔法】
【属性魔法(闇)】
【属性魔法(水)】
【情報処理能力】
不定形生物に転生してから2ヶ月程だろうか……。知るという事はとても大事だと思っている。現状分かっている事を時々整理してみたりする。創造神ミルユーって御方が惑星ディートなる異世界へ俺を転生させた。しかも、人間ではなくイーヴルゲルとかいう粘菌生物型の魔物になっていた。この世界での俺の役割や使命の様なものは今のところ無い。キュリヤというナビゲーターを俺に付けた事を考えると、なんらかの意図がある事は推測出来る。そして、そのキュリヤには俺の思考は全て読まれている。今、この思考すらも……。なので現状、キュリヤに関しては信じていく以外になく、現に基本的に俺の有利になる事も証明済みだ。
【接続強化】
知るといえば、【超個体】の能力はヤバい代物だった。これがチートか!? と、思わず叫びそうになる程だ! 声帯無いけど……。効果としてはキュリヤの説明の通り全ての行動に補正が入る。理屈の説明は聞いたが、いまいち分からん。俺という生命体が多であり個であると説明されても……。馬鹿なりに理解している感じで表すと、小ちゃい俺が俺本体を動かす為に細かい分担作業に携わってくれている感じかな? 全ての行動を分業体勢でカバーし合っている感じ? 言語化出来ない事柄が多過ぎる! この世界に来てからっ! とにかく周囲が遅くなったと錯覚する程に思考、行動がスピードアップした。出来る事が増えるのは歓迎だ。しかし、どこまでも白々しい感覚もあるが黙って死んでいくつもりは毛頭無い。強く生きる事。これがまず前提条件だ。
更に【超個体】を検証している最中、分体を作っている時に発見があった。分体が完全自律式にバージョンアップ。要するに分体にも反映されているので、本体の思考とリンクして各々最適な行動を取るという事だ。自分で動かしている感覚はあるものの、自分が思っている以上に動いてくれる。若しくは最小限の指令で最大限に動いてくれる様な感じ。脳に量子コンピュータを搭載した様なものか……? 猿1チーム7匹と戦闘になった場合、早ければ20秒掛からずに殲滅可能だろう。今度タイムアタックでも試そうか? そうしてまた幾日か過ごしていたある日……。
「グゥォホォゥゥゥゥッ!!」
体全体に振動が走る。何者かの咆哮がビリビリと伝わり……。
『警告、感知範囲外に強力な個体が居ると推測』
一体何km先まで届く程の雄叫びだよ?
『種族名龍と推測』
「龍!? いるの? 勝てる訳ないよね?」
『肯定、勝率はかなり低いと推測』
毎日自分の今日の限界を超えていくんだ! などと自惚れていたな。姿を捉えるどころか、咆哮で動きを制限させる相手に勝てる筈も無い。生存確率の高い行動を……。
結果的には森の外縁部方向へ離れると龍の圧が減っていった。この森は深部に向かえば向かう程強い魔物がいるという仮説が成り立つ。龍とは、ひとまず距離を取っておく。理論上不死となったけれど、圧倒的暴力の前では無力に等しい。因みに理論上不死ってのは、死ぬ確率を減らす行動を自動的に取る事らしい。例えばさっきの龍に迂闊に近寄っていくとした場合、ある程度の位置から近寄れなくなるんだとか。超個体を構成している俺が制限を掛ける行動を取るといった方が正しい。それでも本体の意思が変わらなければ進む事は可能だけど、わざわざ死の危険になんか近寄らないつもりだ。そして、それらは複合的に判断されるらしいのだが、俺の中に無い知識には無効なので安易に頼り過ぎるのも危ないと注意を受けた。さっきの龍は咆哮だけで実力差を痛感させられたし、キュリヤによる推測でも俺に勝ち目が無い事が事前に分かっていたから接近すれば確実に発動するだろうとの事。寄り集まっても俺は俺という事だ。生存確率が高い行動を促してくれるのはありがたいけど、過信は禁物。以上諸々キュリヤ先生に教えてもらった。
さて、寺院跡である。まずゴーレムをどうにか出来ないと入口まで辿り着けない。起動前ではキュリヤにも能力が把握出来ないというのも痛い。並大抵の魔物ならどうにか出来るという自信も付いてきたつもりだったが、先程の龍の咆哮で揺らいでしまった。特訓しながら過ごして、もう一度様子見に出向いてみるしかなさそうだ。
あてもなく森を彷徨っている俺は、魔物そのものなんだろうな。そりゃ、人間にも襲われるか……。人間って何だろうな? 姿形は変われど、俺には確かに人間だった記憶がある。そして、人間的思考でもって行動しているつもりでもある。いや、躊躇いなく人間を大量に殺害していても尚、平気な顔しているのが最早異常なのか? 一体、人間を人間たらしめているものとは何なのだろう?
「なぁ、キュリヤ? 俺って人間なの? それともゲルなの?」
『人間の自我を持ったゲル』
「ハハッ、そのまんまじゃねぇか!」
"人間は考える葦である"なんて言葉があるが、差し詰め俺は"考えるゲル"って所か? あれ? 丈夫な体も貰っちゃっているけど得したって事? まぁ、思考は尊いという事だな。うん。マナ感知範囲内に異常無し! 【闇拡張】で闇のマナに限り範囲拡大して……。異常無し! ゲルの視野には未だ慣れない部分も多い。自分を中心とした球状の範囲内のマナを知覚できるというのは、一瞬前後左右が分からなくなるというか、乗り物酔いに近い感覚だろうか……。目で視覚情報を得ていた身からすると、とにかく違和感が強い。幸いな事に重力は感じているので、そちらを下と認識している。更に驚いたのは重力には重力のマナが存在しているのだ。重力魔法なんて浪漫が溢れているじゃないか。とにかく出来る事を増やすのが目下の目標だ。
【マナ感知】
【マナ操作】
【魔那】
修行の毎日を過ごして数日……。
『報告、ミチオは種族名・イーヴルゲルであると同時にマナ生命体となりました』
「ん? 何それ?」
『マナの状態で生命活動が可能』
「マナの状態での生命活動?」
『肯定、物質的に存在しなくてもよくなった』
「自分をマナレベルまで分解する感じ?」
『肯定、理論上不死の可能性が大きく上がりました』
「ちょ、いや、でも、なんか怖くない? そのまま拡散していって元に戻れなくなるヤツじゃないの?」
『否定、マナ生命体である限り有り得ない!』
「おっ? 珍しくキュリヤが感情入っているね?」
『肯定、当機と近しい存在となった』
「あ、そういう事か……。なんか、"フンス"と聞こえてきそうだと思ったよ」
【接続強化】
マナ生命体。マナレベルにまで自分を分解する……。違うな。元々の状態に戻る感覚だな……? 【超個体】の最適化が働いていないな。マナ生命体の概念なんて俺の中には無いからな。
「キュリヤ、ヒントはある?」
『肯定、自分の有り様を決めるのは自分。意思の力が必要』
意思ね、強い意思を持って念ずれば良いのか? そもそもマナって何だろうな? 自分のマナ一粒一粒に意識を向けていく。マナとは根源、マナとは命、マナとは宇宙、マナとは……。深い思考の中で垣間見たのは意外とシンプルな答えだった。自分を分解したり、マナに変化させるって方法ではなくて、その場にどうやって存在するか? って事だった。そうすると、すんなりと受け入れる事が出来た。
「これはまた独特な感覚だな」
魔物になっていたどころか、とうとう肉体すら捨てたぞ!? とんでもないな! 確かにとんでもないんだが、ゴーレム打倒の為には微妙かもな。変な技能を沢山覚えてきたけど、単純な火力が手に入らないのが玉にキスしr……いやいや玉に瑕だな。
――other side――
『報告、固有名・捧道雄の異常性を検知』
「うふふ、もう少し具体的教えてもらえるかな?」
『種族名・人間の脳で【超個体】の制御は不可能と推測』
「そう? それに特に変化は無いんでしょ?」
『精神に異常をきたさない事の方が異常』
「ゲルのクラスターなんか別に異常な事でもないでしょ?」
『……』
「今やあの坊やは人間なんかじゃないんだから、どんな変化があってもおかしくないんじゃないかな。優しく見守ってあげてね」
『加えてマナ生命体となった事も報告』
「うん、分かってる。あの坊やは謂わば可能性の種子なんだよ」
『……』
「これからも彼をよろしく」
『肯定、引き続きナビゲートを引き受ける事を了承』
「頑張ってね。君にも期待してるんだから」
「あ〜、発芽が楽しみだなぁ……」




