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人間15人の集団に襲われる俺だったが、特に苦労する事もなく簡単に返り討ちにした。15人中14人を養分とした所で魂が高揚する感覚、レベルアップだ。残り1人の魔法使いは絶賛夢の中。このままここに放置して離れる事にする。万が一、運良く生き延びる事が出来た時には、また俺の前に立つのだろうか? 先の事は分からないし、成る様にしか成らない。
さて、次の目標は寺院跡の探索に定める事とする。
「キュリヤ、ゴーレムを倒せると思う?」
『不明、以前も伝えた通り起動してみないと能力の把握が不可』
「それは覚えている。それでも一般的な討伐方法とか弱点とか、なんかヒントになりそうな事とかないの?」
『非常に高い物理耐性、マナ感知能力があると推測』
「相性悪そうな事で……」
『肯定、【影渡】【暗闇】は無意味、【幻覚】等の精神攻撃も無効』
「だろうね」
『また、各種毒物薬物も効果が無いと推測』
「あれ? ゴーレムって俺の天敵? ハハッ」
うーん、弱点らしい弱点は無いのか……。攻撃魔法の習得を優先すべきか?
「あ、マナで駆動しているのなら【魔法分割でどうにかならないか?」
『不明、可能性はあると推測』
「あとは、emeth的な……」
『否定、この世界のゴーレムにその様な文字は刻まれていません』
「そっか、あと思い付くのはゲルボディを活かして関節やら隙間から入り込んで内部から破壊するとか?」
『成功率不明』
そして気になるのは、明らかに寺院跡を守る為に配置されているって事か? 誰が何の目的で? 中には魔物が多数居た事を加味すると、ゴーレムを配置する程の知能を持った魔物の線か? そうなるとゴーレムより上位の個体がいると考えられる訳だな。ふむ、傭兵団壊滅より難易度が上がりそうだ。
【魔法適性】
【属性魔法(水)】
【属性魔法(水)】
数日間、特訓が続いた。結果は、闇属性の次に親和性の高そうな水魔法の習得に成功。
【水生成】【水鉄砲】【高圧水流】
水を発生させて、飛ばして、加圧して物質の切断まで可能になった。ゴーレムに有効かは不明なままだけど、手札は多いに越した事はない。闇、水の複合で墨を生成できる様にもなった。触手の先をペン先の様にしたら、いつでもお手紙が書けるって寸法だ。
……。
誰に書くんだ! とかいうセルフ突っ込みを入れつつ、水属性は液剤生成との相性が良さそうなのでまだまだ伸ばしていく所存だ。相変わらず神出鬼没に襲ってくる猿を撃退しながら森を彷徨く日々だった。
更に数日後……。森の中の活動範囲を広げて散策していた所、見た事のない魔物と初遭遇。キュリヤ情報では、森の巨人という種族名らしい。身長2.5m程の人型の魔物、知能は有るのか無いのか分からない。行動は合理的に見えるし整合性も取れているが、唸り声を上げてこちらに襲い掛かってくる様子は、とてもじゃないが知恵を持った生物には見えないな。更にキュリヤ情報だと掴んで握り潰されたら即死の可能性が高いとの事。怪力自慢のお馬鹿さん? こいつ位の力が有ればゴーレムの物理耐性の上からでもダメージが通るんだろうか? 腕の振り下ろし、足による踏み付け、ドンッ、ドスンッ! 地面が凹んでいく。様子見に徹して回避を繰り返していたが、得る物も特に無さそうなので攻撃開始だ。まずは【暗闇】【影縛】視力を奪い、拘束する。目は潰せた様だが、拘束には至らなかった。森の中でも比較的開けた場所なので闇のマナが少なめなのが原因だろう。それでも多少の効果があったのを力で引き剥がした様にも見えた。何この脳筋……。両手を組んでのスレッジハンマーが降ってくる。ドンッ! ただでさえ見切っていたんだから、見えていない奴の攻撃に当たる事は無い。逆にこちらからは的がデカい。そうそう攻撃を外す事もないだろうと、甘く見た俺が悪い。振り下ろされた腕に触手を刺してやろうと近付いていくと、両手の掌を広げて無差別に地面を叩き始めた。バン、バン、バン、バン! 膝をつき辺り一面、なりふり構わず連打。迂闊に動いたらペシャンコにされかねない。致死毒の霧を散布して射程外に退避。驚きの生命力を見せる森の巨人は、毒霧を吸い込んでいる筈なのに数十秒間地面を叩き続けていた。その後……、バタンと地面に伏した。あ、この高揚感は……。存在値が上がったな。本当の意味での巨人殺しを達成した訳だ。死体は残さずペロリと頂いて……。俺の視界、マナを感知出来る範囲内に動くものを捕捉。30m先から真っ直ぐこちらに向かって移動してくる。脚2本を食べ損ねているが、やや斜めに距離を取る様にずれてみる。……やはり真っ直ぐ俺に向かって来ている。しかし、その歩みは遅い……。
「キュリヤママ? 過保護はやめたんですか?」
『接近する個体は捕捉済み。しかし敵意は無い』
「あぁ、そういう事? じゃあ何者なのかね?」
『種族名、イーヴルゲルと特定』
ん? そういや既視感のあるフォルムだ。地を這う大福が迫ってきているのを再確認。
「仲間だと思われているのか?」
『不明、未だに敵意は観測されない』
ちょっと近付いてみるか……。
おぉ、この世界へ来てから同族とは初めての邂逅となった。ん? 【念話】だな?
「####、####」
「ぅおいっ! 同族の言葉も分からないんかいっ!?」
『肯定、ミチオの習得している言語は日本語のみ』
…………。
「翻訳お願いします……」
『……森の色の……大きな2本足……、森の巨人を倒した事に感謝をしている様子。加えてイーヴルゲルの言語は非常に抽象的で分かりにくいと追記』
「何それ、覚える気がしないわ……。とりあえず気にするな! って感じのニュアンスを伝えてもらえる?」
『了解』
「##、####」
『……脚を1本食べても良いか? と提案』
「残り物で良ければ2本ともやるよ」
「##!」
『ミチオを称えている様子』
「悪い気はしないか」
順番に俺の残り物の脚を溶解吸収していったイーヴルゲルの傍らでぼんやりとしていた。魔物といえど同族とは和やかな雰囲気にもなれるんだなぁ。
『警告、イーヴルゲルより敵対の意思を確認』
「なんで急に!?」
何が起こっている? ……そ、それにしても遅ぇぇっ! 当然ながら回転移動なんて行動パターンは無いので這いずりながら接近してくる。そろそろ触手の射程距離か? お? 触手を振り回す速度はまあまあのものだ。なんで食事を分けてやったのに急に敵対する訳? まぁ、襲ってくるならこちらも容赦なくいきますよ! っと……。触手を射出して核を掴み引っこ抜く、自分の体内に入れて吸収。あれ? 存在値が上がった?
【情報処理能力】
【超個体(特殊技能)】
それにしても、こいつの行動原理が理解の範疇を超えている事に驚きしかないな。巨人食ったら強くなったとでも思ったのか?
『自分より強い個体を倒した更に強い個体を吸収する事で自分が強くなる……という思考と推測。ゲル属では稀に見られる行動です』
「えっ? …………」
苦笑いしか出てこないわ! 表情とか無いけど。巨人が自分より強い事は理解しているのに? 自分より強い個体を倒した個体は自分より遥かに強いとは思わないのか? 自分より強いこの巨人を倒したこいつを吸収したら、自分はもっと強くなれるかも? ってか? ……単細胞生物っぽいもんね。頭悪いとか思わないで、そういう習性だと理解しておこう……。なんか、改めて自分が生まれ変わった生物がどんなものなのか目の当たりにして愕然とした。というか、同族を吸収したからか感覚に変化があるな。マナの感知範囲は……、変わらず30m程。見え方も特に変化無し……。何が変わったんだ? 感覚の違いは分かるんだけど、具体的に何が変わっているのか分からない不思議な感覚。心なしか頭がスッキリしている感じだな。ん? 体内に俺以外が居る? いや、構成マナは俺の物しか無いんだよな。
『スキル【超個体】による最適化による影響と推測』
「スキル? スキルなんて習得してたの?」
『肯定』
「【超個体】って何?」
『多数の個体から形成されながら、まるで1つの個体であるかのように振る舞う生物集団の呼称』
「多数の? え? ごめん、もう少し分かり易く説明してくれる?」
『多にして個となった事により全ての行動に補正が入ります』
「もうちょい詳しく」
『例えば回転移動をする時に、周囲の状況を把握しながら姿勢制御をしつつ進行方向を決めて身体操作をしている事は理解可能?』
「やけに複雑に言っているけど、更に細かい事まで言い出したらきりが無い話になるやつだな」
『肯定、同時に対処している個々の情報を個別に対処する事により高速化、効率化、最適化』
「その個別に対処の所が分からないな」
『つまりミチオは現在、無数のミチオによって構成されているという事』
「無数の俺? え? なんか怖いんだけど」
『肯定、人間の肉体では習得不能なスキルを人間の頭脳で制御する事は脅威だと推測』
「あれ? キュリヤまで脅威とか言い出した?」
『肯定、理論上では不死となりました』
「ふし? 不死身の不死?」
『肯定、不測の事態に陥ってしまった場合でも生命維持を最優先して危機を脱するものと推測』
「うーん、悪い事では無さそうかな」
なんだ? 実感も無いんだけどな。




