表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/151

11

色々な事を感情任せでやってきて後悔は無い。だけど、どうにもやるせなさが残っていた。それでも時は無情に進む事も理解しているし、やるべき事もある。墓虎(グレイヴティガー)の唾液の防腐性能で人間の死体をどうこうしよう。などと、元人間とは思えない思い付きが頭をよぎる。不謹慎、死者への冒涜、禁忌の領域。どうでもいい……。邪悪な粘菌生物に転生させられたんだ。思い付く限りの事はやらせてもらう。子虎の口中に体の一部を突っ込む。

「キュリヤ、俺に対象の能力を奪ったり、コピーしたり、倒したら習得できたりって能力はないの?」

『否定、ただし、元々素養のある能力の発現を促す効果には期待出来ます』

「防腐性能のある分泌物は可能?」

『肯定、ゲル属は様々な体液変化を持つ種族です』

「具体的に習得を短縮する方法は……、まぁ、今までの流れでいくとマナを正しく認識するとかだろうな」

『肯定』

ものは試しだ。やってみるさ。


【身体操作(ゲル属)】

結論から言うと、成果盛りだくさんとなった。防腐性能のある液体のみならず、毒液、腐食液、回復液から即死薬物等々各種液剤生成が可能となった。そして恐らく、それらの耐性も身についたと思われる。試していないので分からないが体内のマナの感じからは、そう読み取れる。特筆すべきは悪臭を抑える事が出来た事だ。キュリヤも『肯定、臭気が抑制されていると推測』と観測データみたいな言い方だし、そもそも自分じゃ分からない……。


無くなっていると良いな。


更に更に体内に物質を保存しておく事も可能となった。今までは物理的に保持している事はできたが、マナの特性の理解度が増したのか、マナに還元した様な形で保管して、復元して元に戻す様な事が出来る様になった。どういう事かというと、石ころを体内に入れて保持する事は今までも出来た。そこから、石ころの保有マナを体内で分解する事で石ころそのものは体内に存在しなくなる。だけど、マナそのものは体内に保存されているので、再構築するプロセスを経る事で石ころを再度体内に作り出す事が出来る。……言葉で説明するのは難しいが、やってる事は至極簡単な事だ。


子虎と前衛の大柄な人間は俺の糧となった。中衛の槍の人には骨と体表部分に防腐処理を施した後、中身は吸収させてもらった。人型の皮を得た俺は、それを纏い子虎の墓標を建てる。ぎこちない動きで大きめの石を運び、巣にしていた木の根に近い部分に置く。人間の体では面倒なので口の部分から触手を伸ばして石に文字を彫る。墓虎之墓、と縦書きで刻む。日本語だ。近くに落ちている元の持ち主の物である槍を拾い上げる。どこまでもぎこちない……。これでも元人間だったんだがな……。


人間に擬態しながら森を進む。皮と軽い金属で出来た胸当て、前腕部には同じ様な素材の小手、皮製のブーツにも同じく軽い金属製の脛当て、といった格好。更にフード付きの外套を纏っている。フードを目深に被れば眼球が無い事を誤魔化せるだろうか? この世界の人間集団の文化等は今のところ分からないが、武装して魔物が跋扈する森の中へ入って来る者がいる事は確認出来た。つまり、人間は今の俺にとっては敵性生物である。森へは頻繁に出入りがあるのだろうか? 少しでも情報が欲しい所で……。一度は言ってみたかった言葉の一つ。

「コホン、こんな事もあろうかと!」

小さな分体を作り先程逃した後衛の魔法使いに同行させている。外套のフードの中に潜り込ませたのだ。未だ森は抜けていないのか、「ハァハァ」と荒い息遣いで小走りに進んでいる。このまま森を脱出した後は人間の集落に帰るのだろうか、どこかにキャンプ地でもあるのだろうか……。何かブツブツと話しているな。

「××××××! ××イーヴルゲル? ××××××××!」

……。


はい、自分じゃ何を言っているのか分からない。

「キュリヤ先生、翻訳お願いします」

『翻訳「ヤバイヤバイヤバイ! なんなんだあのイーヴルゲルは? カリスとスグマがどうやってやられたのか全く分からなかった!」』

ほうほう、俺の攻撃方法には気付いていなかったと……。

「××、××××」

『翻訳「早く、ジーマに伝えないと」』

あ、コイツ早速他人に俺の事を話すつもりか!?

「××、××××××……」

『翻訳「ジーマ、貴方の弟はゲルなんかにやられちゃったわよ……」』

ゲル"なんか"ね……。この世界での俺の立ち位置を端的に表してくれた。その後は荒い息遣いのまま森を抜け出て、馬と合流。3頭居るから各々乗って来たんだろうな。馬に跨り森から離れていった。


さて、日課(子虎にちょっかい)を奪われてしまった俺は森を徘徊しながら考える。現在地は割と森の外縁部に近いという事が分かった。寺院跡の位置関係も頭の中に思い浮かべる。いや、6000㎢って! この森どんだけ広いんだよっ!? 俺がうろちょろしてるのって、せいぜい10分の1程度か? 森の外も気にはなるが、今の俺には森の中の方が生活に適しているとも思う。拠点はまだ暫くはこの森で良いな。

【魔法適性】

【身体操作(人間)】

【情報処理能力】

槍を杖代わりに歩いてきたが、二足歩行にもだいぶ慣れてきたみたいだな。軽く走ってみる。跳躍、着地。

並の人並みにはなったか?

槍を体内に仕舞おうかと思い、どうするか……。口を開け、そこから体内に収納。うん、やはり人の皮を被った化物だな。人間の格好のまま暫く森を歩いていたら、時間は夕方に差し掛かる頃になっていた。


程なく逃した後衛の魔法使いが誰かと会話しだした様だ。

「××、××××」

「キュリヤ、翻訳お願い」

『「ジーマ、カリスとスグマがやられたわ!」』

『「何? 森の浅い部分に行くだけだったはずだろ?」』

『「ええ……。特殊個体と思しきイーヴルゲルが出たの」』

『「詳しく話してくれ」』

『「ええ、まず墓虎(グレイヴティガー)の子供が1匹で居るのを見付けてターゲットにしたの。カリスを中心に私が後ろから【氷弾(アイシクル・シェル)】を撃って、スグマが接近戦を仕掛けて、墓虎(グレイヴティガー)の子供は難なく倒したのだけれど……」』

『「イーヴルゲルが現れた?」』

『「そう……。気付いたスグマが構えたと同時にそのまま倒れたの。何をされたのか全然分からなかったわ」』

『「その時のスグマとイーヴルゲルの距離は?」』

『「5mは離れていなかったと思う」』

『「何かの魔法か?」』

『「全く分からない……」』

『「ふむ、で、カリスは?」』

『「スグマが倒れた後、私に魔法で援護を指示してイーヴルゲルと相対していて……、その時、そう、その時あのイーヴルゲルは異常だと気が付いたわ。体を球体に変化させたと思ったら、とんでもないスピードでカリスに接近して、カリスも踏み込んで槍を連打させたのだけど、信じられない動きだったわ……。もう、なんて言ったらいいか……」』

『「落ち着け、ゆっくりで良い」』

『「え、ええ、私は【氷弾(アイシクル・シェル)】でカリスの援護に入って、そう、そしてカリスを盾にする様に動いたわ。あいつが私とカリスを一直線上になる位置になってすぐ、カリスが魔法を撃ち続ける様に指示してきて、ええと……、多分【影渡(ハイドシャドウ)】! 影に潜んだの。そして、気が付いたらカリスも倒れていて……」』

『「また何が起こったかは分からないと?」』

『「ええ、そうよ。カリスの近くから地上に現れたあいつが……、【念話(テレパシー)】を送ってきた……」』

『「【念話(テレパシー)】だとっ!?」』

『「えぇ、間違いないわ。そして、こう伝えてきたの、自分の事は他言無用、次に現れたら全員殺す。と……」』

『「信じられん! ゲルが【念話(テレパシー)】だと?」』

『「ええ、そして言語を理解している事も……」』

『「どうする? いや、決まっているな」』

『「傭兵団【火中の栗チェスナッツ・イン・フレイムス】全員で向かいましょう」』

『「ああ、仲間をやられて放っておけるか! ティキ、全員に通達だっ!!」』

『「わかった!」』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ