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17「パンツは二度刺す」

「パンツよ、ショウ君!!!」

「!」


 虚空で空間転移させられ続けているリヴィによって再び紡がれたその言葉に、ショタリフがハッとして、瞠目する。


 ショタリフの脳裏を過ぎるのは、以前、ダンジョンで目の当たりにした光景だ。


 ~リヴィが投げ~

 ~ロックドラゴン~

 ~鼻で吹き~

 ~ギガントオークが~

 ~喰らうパンツかな~


(字余り)


 余りにも衝撃的な光景であったことと、今回、リヴィがそれを所望しているという予想外の事態が重なって、思わず、先日リヴィの家に遊びに来たロイエから聞いた、異世界で昔流行っていたという〝短歌〟とやらを心の中で詠ってしまうショタリフ。


 そう、ダンジョンで行った〝アレ〟をやれと、リヴィは言っているのだ。


(ロックドラゴンには、効かなかった)

(でも、リヴィさんに惹かれているこのドラゴンなら!)


 空中のリヴィを見上げたショタリフは、叫び返した。


「分かりました!」


 そして――


(やるんだ!)


 ――意を決して、スカートの中に、両手を入れた。


「………………って、え?」


 そう、〝スカートの中〟に、である。


 偽者とはいえ、艶めかしいリヴィの身体――

 ――その中でも、神秘のヴェールに包まれた、スカートの中に。


 尚、変身したその身が纏うのはナース服のみならず、きちんと、下着までリヴィのものになっており――

 ――パンツを脱いで投げるという事は――

 ――リヴィの身体に触り――

 ――リヴィの下着に触り――

 ――リヴィをノーパンにする、という事であり――


「僕は何をやっているんだ!」


 ペチッ。


 ――今更ながら、ショタリフは、自分が行おうとしている事の異常さに気付くと同時に、ドキドキによる消滅を回避するために、頬を優しく叩いた。


(無理だ……!)

(僕には、そんな事出来ない……!)


 ショタリフが肩を落とし、諦め掛けた。

 ――次の瞬間――


「ショウ君、頑張って!!」


 ――リヴィが――


「私のパンツを脱いで、投げて!!!」

「!」


 ――叫んだ。


 傍から聞くと支離滅裂な言葉だが、ショタリフには、これ以上ない程にその真意が伝わった。


(そうだ! リヴィさんは、命懸けで頑張っているんだ!)

(僕だって!)


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ――咆哮を上げるショタリフ。


 ショタリフが、スカートの中に両手を突っ込み――


(怯むな!)

(これは、必要なことなんだ!)


 ――ともすれば動きを止めようとする身体を叱咤して――


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 ――勢い良く下着を脱いだ。


 右手に掴み、堂々と掲げるその姿は、まるで――


「とったどおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ――敵将の首を討ち取り、掲げているかのようだ。


 すると、それまで全く見向きもしなかったブラックドラゴンが――


「……パンツ……パンツ……パンツ……パンツ……」


 ――フラフラと、ショタリフの持つパンツに引き寄せられて――


「パンツを寄越すのじゃあああああああああああああ!」

「うわあああああああああああああああああああああ!」

 

 轟音と共に、ショタリフを追い掛け始めた。

 追い付かれれば死は免れられず、ショタリフは必死に逃げる。


「早く、私のパンツを投げて!!!」

「!」


 ショタリフを案じるリヴィの声に、ショタリフは、クルリと振り向くと――


「食らえ!」


 ――ブラックドラゴンに向かって、脱ぎたての下着を投げた。


「パンツうううううううぁぁぁぁぁぁああああああああああ!」


 バクッと喰らい付いたブラックドラゴンは、その場から動かず――


「じゅる……じゅるじゅる……」


 ――一気に飲み込んでしまっては勿体無いとの判断か、口内で執拗にパンツを味わっており――


「今だ! 『空間転移ワープ』!」


 立て続けに魔法を発動し続け、全身汗だくのバイセプスが、歯を食い縛って、更に空間転移魔法を唱えて――


「えいっ!」


 ――狙い通りブラックドラゴンに着地したリヴィが、倒れるようにして、見事、その豊満な胸を、彼のうなじに押し当てる事に成功した。


 すると――


「はうっ!」


 ――ブラックドラゴンの巨躯が、光に包まれて――


「やった! 成功だ!」

「ハッ! 漸くかよ……!」


 ――ショタリフとバイセプスが歓声を上げる中――


「ブラックドラゴンさん……」


 ――複雑な表情を浮かべるリヴィの――


 ――腹部が――


「……がはっ!?」

「「!?」」


 ――鋭く変形した鱗によって――


「リヴィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 ――貫かれた。

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