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10「復讐者」

 従者が替えのローブを掛けて女王の身体を包むと、女王は部下たちと共に悠然と立ち去って行った。


 この日を境に、女王は度々魔族たちと荒野で衝突し、その度に魔族軍を全滅させていった。


 リヴィの〝診察〟による魔族消滅と相俟って、魔族側の人的損失は日に日に増えて行った。


※―※―※


 ちなみに、魔族は、自らの魔力で、生涯に一人だけ子どもを創る事が出来る。

 魔法陣を地面に描き、手を翳して、生物創造魔法で創造するのだ。


 一人だけだが、人間に比べて寿命が遥かに長いため、基本的に人口が減る事は無い。

 魔族(自身も知らなかった)の弱点が看破されるまでは、人間よりも強く、戦ってもまず負ける事は無かったため、戦争による戦死者がほとんどいなかった事も、人口維持に寄与していた。


 一方、女性のみで子どもを作って産む事が出来る人間だが、その方法は単純だ。

 成人(十八歳以上)になった後に、教会に祈りを捧げに行く事で妊娠する事が出来、その生涯を通じて、何人でも身籠る事が出来るのだ。

 

 だが、妊娠から出産まで十ヶ月掛かる事と、母体に負担が掛かる事(死ぬ者もいる)と、養育費が掛かる事から、大勢の子どもを産む者は少ない。


 が、それでも、魔族たちよりかは、余程多くの子どもたちが生まれて来る。


 しかし、魔族と戦闘が行われる度に、大勢の人間が死ぬため、人間の方が、どんどん数が少なくなっていった。


 勿論、人間の中にも、強い戦士が生まれて来る事はある。

 だが、そういう者は数が少なく、更に、基本的には魔族よりも弱いことが多いのだ。


 そんな、長年変わる事の無かった戦況が、この短期間の間に、大きく動こうとしていた。

 

※―※―※


 女王の初陣の翌日。


 リヴィの診療所に、診療開始時間よりも早く――


「頼もう!」


 ――一人の男がやって来た。


「おはようございます」


 玄関を入って直ぐの場所で待機していたショタリフが、対応する。

 

(まだ若いな。珍しい)


 心の中で呟くショタリフ。

 人間からすると同じように見える、〝数百年を生きる〟魔族だが、同じ魔族であるショタリフが見れば、正確な年齢は分からないものの、若いか、そうでないかは、一目見れば分かる。

 

 無論、目の前の若い魔族も、ショタリフに比べれば、ずっと年上だが。


(っていうか、筋肉凄っ!)


 逞しい身体つきをしている事が多い魔族の中でも、飛び抜けて筋骨隆々である彼の姿に、思わず心の中で突っ込むショタリフ。


「まだ診療開始までは時間がありまして。少しお待ち頂いても宜しいでしょうか?」


 ショタリフが丁寧に接客するが――


「うるせぇ! 俺っちが用があるのは、あのくそったれ女だ!」

「あっ! ちょっ! ちょっと待って下さい!」


 強引に扉を開けようとする男を、ショタリフが何とか食い止めようと腕を掴むものの、異常に発達した筋肉を誇る男が、軽く振り払うと――


「うわっ!」


 ――ショタリフは、呆気無く吹っ飛ばされてしまった。


「ガキはそこで黙って見てろ! 俺っちが、()()()()()()()()を!」

「!」


(マズい! リヴィさんに、今まで行って来た事が〝診療〟ではなく〝殺人〟だと、バレてしまう!)


「ま、待って――」


 顔を青くして慌てるショタリフだが、男は既に扉を開けており――


「出て来い、クソ女! 俺っちは、アダムの息子、バイセプス! 親父の仇を取りに来た!」


 ――大声で叫んでしまった。

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