5章:ある少女に花束を(第24話)
「へえ、このイベント、コスプレに着替えるスペースが確保されているんですね。本当に、みんなコスプレするんだ…。あ、でも、ここ、女性用の更衣スペースでは…」
「鳴海くん、男だとばれるとやりづらくなるから、とりあえず早くこれに着替えてくれる? 神宮前さんと本星崎さんのコスプレも同時進行しないといけないから、男性スペースだと間に合わないのよ」
「堀田先輩、ボクのコスプレ衣装、どこにありますか?」
「あ、神宮前さんのは、この紙袋に入ってるわよ」
「どうもっス。えい」
「じ、神宮前、そんな大胆に脱がなくても…。目のやり場所に困るじゃないか…」
「鳴海先輩、ボクの裸をさんざん見ておいて、いまさら困ることはないんじゃないスか?」
「いや、だからそれは勘違いで、僕は神宮前の裸なんか…」
「見たことありますよね?」
「見たこと…あったかもしれない…」
「ほらほら。でしょでしょ?」
「2人とも、しゃべる暇があったら着替えてくれるかしら?」
「ほ、ほ、ほ、堀田さん、わ、わた、私は着替え終わりました…」
「じゃあ、本星崎さんは、このウィッグと、このアクセサリと…それと、この付け耳をして貰える? ドーランは最後ね」
「わ、わか、わ、わかりました…」
「鳴海くん、ちょっと息を吐いて、止めてくれる? ウェスト絞るから。うん、OK。息苦しくない?」
「い…息苦しいですけど…頑張ります」
「そうね。ありがとう。ムダ毛処理もちゃんとしてきて、えらいわ、鳴海くん」
「あ…ありがとうございます…」
「堀田先輩、ボク、着替え終わりましたよ。ほら、どうっスか?」
「いいわね。すっごくカワイイわよ。あとでお化粧をして、羽を付けてあげるわね。それまで、本星崎さんを手伝ってもらえる?」
「じ、じ、神宮前さん…。こ、この、この付け耳がうまくいかなくて…」
「あ、ボク、やってあげますよ。ウィッグ一度外した方がいいスね」
「…よしっと。鳴海くん、この厚底ローファーを履いてみてくれる? 本当はヒールにしたいところだけれど、今日は動きやすさも大事だもんね…」
「す、凄く背が高くなっちゃった気がしますけど…」
「ううん。いい、いい。カッコイイわよ。最後に、この角がついたカチューシャ、してみてくれる?」
「これ、ウィッグの上からでいいんですか?」
「ええ、もちろん。ちゃんと固定できるでしょ? そう…。いいわ…。いいじゃない! 角の横に、小さな帽子をあしらったのは正解ね! ねえ? 神宮前さん」
「鳴海先輩、キモいっす」
「う…。結局、そういう評価になるのか」
「あはは、うそうそ。とっても美人ですよ。正直、女の子のボクが嫉妬するくらい」
「神宮前、それは言い過ぎだ」
「で、で、でも、ど、どこ、どこから見ても、おん、お、お、女の子にみえるわ…。な、な、なる、鳴海くん、美人だったのね…」
「喜んでいいのか、悲しむべきなのか、よくわからないや…」
「鳴海くんは、あとは化粧をして、神宮前さんと同じ形の羽をつけたらおしまいね」
「あ、そうか。僕はサキュバス? インキュバス? だったんですね」
「そうよ。男の娘インキュバス。お腹を出して、淫紋もつけられれば完璧だったけどね」
「淫紋…。そ、それは遠慮しておくとして…でも、このコスプレは、いいカモフラージュになりますね」
「…相手に、本星崎さんや呼続ちゃんみたいなスキル者がいたら筒抜けだけど、少しは時間稼ぎになると思うわ」
「じゃ~ん、鳴海先輩、どうスか? 堀田さんに化粧をしてもらって、羽のついたベルトもしてもらいました。カワイイっスか?」
「あ…ああ。カワイイ」
「ホントにそう思ってます?」
「普段の神宮前だって、どちらかというと愛らしいと思っていたけれど、コスプレをして化粧をすると、また違った可愛さがあるよな…」
「ウサギがクジャクに化けました?」
「その例えはおかしい。クジャクで美しい羽を持っているのはオスだ。でも…そうだな。うん、化けたね」
「やったぁ! あはは、鳴海先輩にほめられちゃった」
「神宮前さんに鳴海くん。本星崎さんもすっかりダークエルフになったわよ」
「おお~! いつも白い本星崎先輩が、今日は小麦色の肌だ!」
「うむ。これは意外な新鮮さがあるぞ。と、僕が言うとセクハラまがいになりそうだからやめておこう」
「鳴海先輩、今は女の子どうしですから、大丈夫っス」
「でも、かなり印象変わったよな…。そっか、今日はメガネじゃなくコンタクトなんだ…本星崎。普段からコンタクトにすればいいのに、というと、今度はモラハラになりそうだからやめておこう」
「ふ…ふふ…。な、鳴海くん、あり、あ、ありがとう」
「ギャップ萌え、ギャップ萌えっスよ、本星崎先輩」
「あれ? ところで、桜は? 桜もコスプレするって言ってたよね?」
「あ、桜チャンは今はブース番ですよ。あとで入れわかりでコスプレするみたいです」
「そうか…。結局、何のコスプレするのか聞いてなかったな…」




