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間隙のヒポクライシス  作者: ぼを
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4章:仮死451(第2話)

「うっぷす…。…そ、そうなんスか…。でも、ボク、なんともないスよ? いつも通りっス」

「生活に変化は生じていないのか…。何かができるようになった、とか、何かが見えるようになった、とか」

「全然なにもないっス。だから、スキルが発現したと言われてもピンと来ないですね…」

「そうなのか…。スキル発現すれば自らその変化に気づけるとは限らないんだな…。そう言えば、国府も、偶然OLのおっぱいの大きさが気になって、とか言ってたっけ…」

「ボクも、国府チャンみたいに爆発して死んじゃうんスよね…?」

「それは現時点ではなんとも言えないな。とこちゃんみたいに、スキル自体が消失するパターンもあるみたいだから…」

「でも、とこチャンは記憶を失っちゃいましたよね? スキルだけが消えて、ボクになんともないって事は、ないんじゃないスか…?」

「そうだな…。ごめん、無責任な事を言うべきじゃなかった」

「そうっスか…。国府チャンがいないから、いつ死ぬかもわかんないんスよね…」

「とにかく、何か異変に気付いたら教えて欲しい。神宮前に、何かしらのスキルが発現している事は、間違いないんだ」

「…わかった…っス…」


「そう…神宮ちゃんが…」

「まだ、本人もどんなスキルが発現したのか、わからないらしいんだ。本星崎からスキルの内容を聞き出せるといいんだけれど…とこちゃんのスキルはもう使えないし。国府もいないから、寿命を確認する事もできない。だから、桜にも、神宮前に何か変化がないか、見ていて欲しいんだ。普段、神宮前を一番近くで見られるのは、桜だろ?」

「うん。わかった。でも、神宮ちゃんを助ける方法はあるのかな…」

「わからない…。ただ、本星崎が崩壊フェイズをパスする方法を知っているのは確かだ。だから、僕たちに手段が残されていない訳じゃない」

「本星崎さんかあ…。この間、ちょっと騙すようなやり方をしちゃったから、もう文藝部の活動には来てくれないかなあ…。せっかく興味もってくれたのにな…」

「さすがに、もう来ないだろうな。本星崎が僕らのスキル監視をする方法は、文藝部だけじゃないからね」

「そうだよね~…」

「それからもう1つ。今度は桜自身に関する事なんだけれど」

「あたし? あたしに何か?」

「とこちゃんが読み取った本星崎のアンケートによると、桜と僕は、これからスキルが発現する可能性があるらしいんだ」

「スキルが発現…って、今はまだしていないけど、ってこと?」

「恐らくね。でも、遠くない未来に発現するかもしれない。1ヶ月後とか、もしかすると1週間後とかかもしれないけど」

「…そっか。鳴海くんも、あたしもか…。わかった。でも、どうせ爆発して死ぬなら、ステキなスキルが身につくといいのにな~」

「ステキなスキル?」

「世界征服を企む悪の総組織から人々を守れるようなさあ…。どうせだったら、可愛い姿に変身もできて…」

「魔法少女かよ…」

「そう! 魔法少女。それそれ」

「そういうお気楽なところ、桜っぽくていいよな。大体、どこに悪の総組織があるっていうんだよ」

「あ~、それって、あたしの事バカにしてるでしょ」

「ごめんごめん。そんなつもりじゃなくってさ。僕も深刻に悩み過ぎちゃダメだな、って思えたんだ。むしろ、桜にありがとうだよ」

「えへへ~。どういたしましてだよ」

「それで、今後の文藝部の活動はどうするんだ? 豊橋は、監視対象者があまり集まるべきじゃない、って言ってたけど」

「もちろん続けるよ。あたしだって、書きたい小説があるし。発表の場は必要だし。新入部員も勧誘したいし。だから、本星崎さんも参加してくれるといいんだけどな~」

「さっき、騙すようなやり方しちゃった、って言ったばかりなのに…。それに、獅子身中の虫って言うだろ? 敵を文藝部の活動に参加させるのはどうなんだろう」

「でも、本星崎さんが一緒に入る限り、国府ちゃんの時みたいに皆が一斉に狙われる事はないんじゃないかな。あたしたちにとっての、人質みたいなもんだよ」

「人質だなんて、さらっと言うなあ…。でも、それもそうか…。うまくすれば、神宮前のスキルや僕たちのスキル発現についても情報を得られるかもしれないもんな」

「じゃあ、これから夏休みに入るまで毎週、みんなの小説の進捗を確認する集合会議を開くから、よろしくね」

「え?」

「鳴海くんの小説も楽しみにしてるから」

「は?」


(まさか、何の気もなしに本星崎が文藝部の会議に、また参加してくるとは…)

(同感である事は否定しないが、次の2つの観点から、問題なかろう。1つに、本星崎本人が参加している。左京山の情報があったにせよ、本星崎が防衛省に連絡をとっているにせよ、殺害現場に自分が身を置くリスクを負うとは考えづらい。2つに、この時間帯は部活動で残っている連中が多い。奴らにとって不都合だ)

「はいはい! そこの鳴海せんぱいと豊橋せんぱい、ブツブツと私語をしない!」

「わ、わかったよ、桜…」

「ねえ、さっちゃん。な、なんでオレも参加させられてるんだろう?」

「いい質問ですねえ…。ゴブさんは、数合わせです! だって、本星崎さんが来てくれなかったらどうしよう、って思ったんだもん。本星崎さん、来てくれて本当にありがとう!」

「…ふ、ふん。わ、わ、私はただ、しょ、小説を読んだり、か、書いたりする事に、きょ、きょ、興味があるだけだから…」

「じゃ、じゃあ、オレはもう用無しだよね? 帰ってもいいよね? さ、さよなら~!」

「ゴブさんストップ! もはや、あなたも重要な文藝部員のひとりです」

「ご、ゴクリ」

「ですから、ゴブさんにも作品を出してもらいますからね」

「だからさっちゃん、オレ、文藝には一切興味がないんだよ! 大体、オレは調理部だよ? コウちゃんを失って、うちだって同好会降格の危機に瀕しているのに…」

「安心してください。小説じゃなくっても、詩でもエッセイでもいいですから」

「ゴブ先輩…あきらめて下さい。ボクなんて、世界史の登場人物でBL物を書かなきゃいけないんスから」

「ひえ…な、なんなんだよ、この部活動…」

「桜よ。俺も断固として書かん。そこだけは勘違いをするな」

「え~…豊橋さんのニヒルでアナーキーでアイロニーでピカレスクな自由律俳句を期待してたのにな…。豊橋さんの作品、読みたいな~」

「ニヒルな自由律俳句か…。よかろう。期待しておけ」

「え? 豊橋? 書くの? そこは即諾なのかよ」

「あと、イベント当日はみんなでコスプレをします」

「コスプレだって? 桜、これは文藝の同人イベントだろ? 薄い本を売るってんじゃないだろ?」

「鳴海くん、いい質問ですね。販売数を伸ばすためには、本の厚さにかかわらず、売り子のコスプレは必須ですよ」

「さっちゃん、それって女の子だけだよね? オレたちみたいなブサイクがコスプレしたって、返って売上が下がるだけだよ」

「ゴブリン…『ブサイクなオレたち』には僕や豊橋も入っているのか…」

「当然、男性陣にもコスプレをしてもらいます。ゴブさんは、ゴブリンのコスプレね」

「オ、オレ、そのままかよ…」

「桜よ。どうやら、俺が文藝部から離脱する時が来たようだ」

「え~…豊橋さんのサタニズムでオカルティックでサディスティックな神父のコスプレを期待してたのにな…。豊橋さんのコスプレ、見たいな~」

「サタニズム系の神父のコスプレか…。よかろう。期待しておけ」

「豊橋…お前、わざとやってるだろ…」

「は~い! じゃあ、これからイベントまでのスケジュールと役割分担をしますから、みんな静かに聞いてくださいね~」

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