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間隙のヒポクライシス  作者: ぼを
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1章:スは「スキル」のス(第4話)

「みなさ~ん、適当に食べ物と飲み物を買ってきましたよ~」

「国府ちゃん、悪いね。ありがとうね」

「はやく飲み物ちょうだい! ボク、喉がカラカラだよ…」

「神宮ちゃんにはね~…はい! おしるこ!」

「う、嘘だろ…」

「そしてメロンパ~ン! なんとクリーム入りなのだ!」

「こ…国府チャン、ボクを殺す気なの…?」

「うふふ! 嘘よ、うそうそ。これは両方とも私の! 神宮ちゃんには、無糖の炭酸水とお好み焼きなのだ!」

「おお~! 国府チャン解ってるじゃん。ボクの好きなお好み焼きをチョイスするとは! しかも関西風」

「へへ~、偉いでしょ~! あとでヒマワリの種もあげるね」

「みんな、食べながらでいいよ、聞いてほしい。3時間経過した。国府、帰ってきたばかりで悪いんだけれど、神宮前の数値を確認してくれるかな?」

「は…は~い。ちょっと怖いな…神宮ちゃん、ちょっとこっち向いててね」

「そっか…場合によっては、このお好み焼きがボクにとっての最後めしになるのか…。まあ好物だから悪くないかな。広島風も食べたかったな…」

「ええっとですねえ…。神宮ちゃんの寿命の数値は…452…で…す」

「452だって?」

「あ、あれ…? うふふ。変わってないですねえ~…」

「どういう事だろう…。常に452分後に死ぬ運命…な訳はないしな」

「国府ちゃん、やっぱり、寿命は無理なんじゃないのかな?」

「あ~ん、そうなのかも~…」

「ね? もう一度、あたしの寿命も調べてみてくれる?」

「さっちんの? う、うん、いいよ。ええっと…」

「どう?」

「うふ! やっぱり、寿命はちゃんと数値化できないみたい!」

「なんだよ~国府チャン。ボク、どうすりゃいいのさ?」

「とりあえず、予定通りあと5時間は観察を続けよう。それでなお452だったら、国府の超能力は、やっぱり偶然の重なりだった、という結論になる」

「あ~! 鳴海せんぱい、やっぱり私の超能力を全否定するつもりなんですね~!」

「100%否定するつもりはないけど…でも、やっぱりそんな厄介な超能力なら、全否定したいよ…」


「鳴海先輩、そろそろいいんじゃないスか?」

「まだ駄目だよ。あと1時間ある。生命に関わる事だから、念には念を入れた方がいいよ」

「じゃあ、少し、眠ってもいいスか? テスト期間の睡眠不足で、眠くって…」

「それも我慢して欲しいな。不測の事態が発生した時に、即座に行動できなくなるからね」

「はあ…そうですよね…。みんな、ボクの為に頑張ってくれているんですもんね…。という桜チャンと国府チャンは寝てますけど…」

「あ、いつの間に2人とも…。ふう…仕方がないなあ…。僕は最後まで起きているから、まあ頑張ろうよ」

「…鳴海先輩、国府チャンの超能力ですけど、どうして急にあんな事ができるようになったんでしょうね?」

「それは僕も知りたい。だけど、まだ、国府の能力の蓋然性を確かめる必要があるかな…。超能力が本物なのかどうか。その上で、最近の国府の行動を全部洗っていけば、なにか要因となる事柄が見つけ出せるかもしれない」

「病院とか連れて行った方がいいんスかね? それとも警察とか」

「いやあ…どっちにしろ、相手にしてもらえないと思うよ。そもそも病気かどうかも解らないしね。食いつくのはテレビ局か週刊誌か…それだとしても、超能力なんて古いネタには興味ないかもしれないしな。ギリシャ神話のカサンドラと同じ道を辿るだけさ…」

「国府チャンが超能力を使って人助けを続けていけば、世間にも理解してもらえるっスかねえ?」

「それは国府が決める事だろうね。正直、他人の寿命が見える、というのは、もの凄くつらい事だと思うよ。目の前に寿命が1年もない人がいるとして、その死因が難病だったりすると、国府の力では助けることもできない。他の人の力を借りて助けようにも、大変な労力が必要になるし、当然、全ての人を救える訳でもない。人が死んでいくのを、知りながらにして黙って見ているだけになる。だから、僕は、国府の能力が本物だとしても、寿命が見えるのが怪しい、というのは、国府にとっていいことだと思うんだよね」

「なるほど…。確かにそうかもしれないスね…」

「ん? 神宮前、そわそわして、どうしたの?」

「鳴海先輩…ボク、オシッコしたい…っス」

「えっと…。トイレ…か。さすがに僕がついていく訳にはいかないから、桜を起こすか…。おい、桜、桜、起きてくれるかな…ユサユサ」

「…う…うう…ん。チョコミントがないのは…残念だな…またコーンだけ…食べてもらいますから…ふふふ…」

「うむ。まるでマンガの様な、理想的な寝ぼけ方だ…」

「先輩、ボクもう漏れそうっス」

「ええっと…かと言って神宮前をひとりで行かせるのは…」

「どっちでもいいですから、とりあえず、ボクをトイレまで連れて行ってもらえます…か?」

「…わ、わかったよ…」


「さすがに女子トイレの中に入るわけにはいかないから、外で待ってるけれど…なにかあったら、すぐに大声を出してほしい」

「先輩、ボク、死ぬかもしれないんでしょ? もしかすると、あと数分で452分が経過するかもしれないんですよ? 個室の中には入らなくていいですから、近くにいて下さい…っス」

「そっか…。じゃあ、個室の前で待ってるから。あっ、えっと…耳を塞いでるから…」

「な、鳴海先輩…。そんなあからさまに言われちゃうと、さすがのボクでも恥ずかしいっス…」

「ご、ごめんごめん…。ほら、どうぞ」

「あ、ありがとうございます…」

「扉をしめるよ。バタン」

「せ、先輩。ちゃんと耳を塞いでます?」

「大丈夫、塞いでるよ」

「ちょっと! 聞こえてるじゃないスか」

「そりゃ、完全に音を遮断するのは無理だよ…。それよりも、ひとりでいる時間を少しでも短くして欲しい」

「わ、わかりましたっス…」


 シュワァァァアアアアアア…チョロチョロチョロ…


「……」

「ちょ、ちょっと鳴海先輩…黙り込まないでくださいよ…。パンツを履く時の音だって恥ずかしいんスからね」

「…えっと…終わったかな?」

「…ふう…はい。終わったっス。流すんで、また耳を塞いでおいてくださいよ」

「流す時はいいじゃんか…」


 ドジャアアアアァァァァ


「何もなくて良かったよ。ほら、教室に戻ろう」

「手を洗うんで、待ってください」

「ああ、悪かった。ハンカチいる?」

「自分の、持ってるんで」

「そうか。よかった」

「…なんか…意識しちゃうじゃないスか…」

「ん? なんか言った?」

「いえ、なんでもないっス。早く教室に戻りましょう」


「よし…12時を回った。どうやら、国府のスキルでは寿命を正確に数値化できないみたいだな…」

「ふう…。助かったっス…」

「おい、桜、国府、そろそろ起きなよ。もう帰るぞ」

「むにゃむにゃ…あ、鳴海くん、おはよう…。はわわわわああぁ…。あれ? チョコミントアイスは…?」

「たっぷり1時間もチョコミントアイスを夢の中で堪能していたのかよ…桜は」

「あれれえ…私、眠っちゃってたんですかあ…。ふわああああぁぁ…」

「2人とも寝ぼけてる場合じゃないよ。ほら、帰ろう。もう12時を過ぎたよ」

「ええ! という事は、神宮ちんは無事だったんだ~よかった~…ふえええぇん」

「そうか…国府は、泣くほど責任感を感じていたんだな…」

「神宮ちゃん、国府ちゃん、よかったね…よかったよかった」

「国府、念のために、神宮前の数値をもう一度確認してくれるかな?」

「はは、はい。もちろんです。ええっと…。うん、大丈夫。452のまんま」

「やれやれ。その数値が何かは置いておいて、とりあえず一安心だよ」

「鳴海先輩…ありがとうございました…っス」

「うん? お礼なら、桜と国府に言いなよ。一等心配していたのは、この2人なんだから」

「いえ、この2人は半分くらいの時間、寝てたんで。お礼をいう必要なんかないンで」

「ちょっと神宮ちん! 心配疲れで寝てただけなんだからね~」

「国府ちゃんも、寿命の数値化ができない事がわかったのはちょっと残念だったかもしれないけれど、でも超能力については色々調べてみようね」

(ほ…ホントに、私、寿命を数値化する超能力がないのかな…。そ、そうですよ! じじ、自分で、自分の寿命を数値化してみれば…)

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