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第一話  居住可能惑星

 自分で書いてると、世界観の解説が一番楽しい

『ジャンプ終了を確認 跳躍距離、800光年 脱落艦無し 故障艦無し 通常航行へ移行』

「ふいーーー・・・」

 ジャンプを終え、坂田は大きく息を吐く。

「19年ぶりのジャンプは如何でしたか?」

「相変わらず緊張するねぇ」

 超光速航行は、便利ではあるがリスクも高い。

 ひとたびトラブルが発生すれば、乗っている全てが地獄へ直行を余儀無くされる。

「例の売却を承諾していれば、今頃は保養地でのんびり出来ていたでしょうね。」

「ヤだよ、アレは趣味で作ったんだからさ。趣味は趣味として留めておくから楽しいんだ。」

 艦隊を造ったのも、永久機関の開発も、全ては坂田個人の楽しみに過ぎない。

 邪魔されたくない領域に土足で踏み込まれた。

 坂田視点では、例の騒動はその様に映っていたのである。

「しかし宜しかったのですか?御家族が今頃生きているかどうか・・・」

 その問いに顔を顰める。

「どうでも良いさ。連中が見てたのは、見栄と金だけだ。俺は連中からすれば、金を生むガチョウだったってだけだ。」

 神童と持て囃されていた頃から、彼の両親は鼻高々であった。

 しかし、時と共に増長を繰り返し、いつからか実の息子を自らの見栄と利益の為の道具としか見なくなっていた。

「もっと魔法の腕を磨け もっと稼げ 何をしているもっとやれ もっともっともっともっと・・・・それが俺の家族ってヤツさ。知らない所で無駄に威張り散らしてたせいで俺が恨みを買う羽目になったし、いつの間にか俺の貯金がごっそり抜かれて開発費の捻出に苦労した事もあったな・・・」

 身内だけでなく、他の親戚も似たり寄ったりであった。

 それ故、彼等を見捨てて逃げ出す事に躊躇は無かった。

「恩知らずの人でなしめ!どうしてお前だけが・・・!」

 故郷から姿を消す間際、最後に聞いた両親の言葉がそれであった。

「誰にも煩わされず、のんびり出来る環境が欲しい。それが俺の願いだ。」

 話を聞いていたノアは、外へ顔を向ける。

「どうやら、その願いは叶いそうです。」

 視線の先には、青い海と緑の大地が広がる地球型惑星が姿を見せていた。




 ・・・ ・・・ ・・・




「・・・技術レベルは第七階層に相当。居住に適しながらも、支配の及んでいない領域も多数あります。」

「絶好の保養地だな。連中に用意されるまでもなかったな。」

 探査を行った所、大気組成は窒素と酸素が最も多く、重力は1G、現地文明は人型生物によって構成されている事が判明した。

 尚、第七階層とは彼の国に於いて文明レベルを測る為に設けられた基準である。



 第七階層

  産業革命以前の文明レベル

  科学も魔法も原始的であり、生産力が低く、支配領域の狭い国家が乱立して戦乱が頻発しやすい。

  また、多くの現象が解明されておらず迷信を信じやすい為、宗教の影響力が強い傾向にある。

  この段階では魔法が科学よりも強力であり、魔法が社会の中心的役割を担う。

  科学的現象も魔法と勘違いされる事が多い。

  大半の文明が、この第七階層に属する。


 第六階層

  第一次産業革命以降の文明レベル

  物理法則の解明が進み、それを応用する技術が開発される事で科学が急速に発達する。

  新技術によって生産力が急拡大し、それに応じた市場を求めて世界規模の支配領域を持つ超大国が誕生する。

  様々な現象が解明される段階でもある為、宗教の影響力が減じて既得権益との争いが激化しやすい。

  力を増した少数の大国が世界を支配する構図となりやすく、戦乱の絶対数は減るものの、拡大した生産力による物量と発達した技術による新兵器により、一度開戦すると第七階層の頃とは比較にならない程に大規模化する。

  科学の効率が魔法を凌駕する段階である為、この階層に達した文明は魔法を軽んじる傾向にある。


 第五階層

  原子力を利用可能な文明レベル

  核兵器や原子力発電の開発により、一度に莫大なエネルギーを産出可能となる段階。

  惑星一つの規模で見ると、敵と味方の区別が不可能な程の規模である為、社会的成熟度によっては自滅の危険性が指摘される。

  宇宙進出以前の段階としてはマクロ的には限界に達する段階であり、ミクロ的な視点に立ち返り昔ながらの技術や生活様式に注目する者が現れる。

  この段階での魔法の存在は最早皆無に等しく、窓際的な場所で惰性的な研究が細々と続くのみとなる。


 第四階層

  初期宇宙開発に乗り出す文明レベル

  カーマンラインを超える飛行物体を開発し、宇宙空間への進出が始まる段階。

  無人飛行は、所属する恒星系内の惑星探査が可能なレベルが上限とされる。

  有人飛行は、居住惑星の衛星軌道上、又は月面までの飛行が可能なレベルが上限とされる。

  この他、コンピューターが急激に発展する段階でもある。

  緻密な計算が短時間で可能となる事でより高度な現象の解明が進み、新素材の開発が本格化する。

  軍事に於いては効率化が進み、第五階層以前よりも小規模ながらより大きな戦果を得る方向へとシフトし、戦場の規模は大きくなるものの、実際に戦火に焼かれる範囲は限定的となる。

  この段階では魔法は大半の者には忘れられており、国家からも完全に見放された存在となる。

  目を向けるのは一部の魔法オタクか、子供が遊びで使う程度となる。


 第三階層

  中期宇宙開発に乗り出す文明レベル

  所属する恒星系内であれば、自由に有人飛行が可能な段階。

  居住惑星以外の開拓が始まり、星間戦争の可能性が指摘される。

  第五階層辺りから始まる人口爆発の解決が、居住可能領域の物理的な拡大によって進む事となる。

  物流の規模がそれまでの数十倍に跳ね上がる事から経済規模も爆発的に肥大化し、企業の力が国家を上回る事が懸念される。

  それ故、事態の打開の為には統一国家の樹立に伴う既存国家の統合を行う以外に無いとされる。

  確認出来る限りでは、この段階に到達した勢力は彼の国以外に無く、魔法軽視と共に発展した文明には到達不可能な領域とされる。


 第二階層

  後期宇宙開発に乗り出す文明レベル

  恒星間航行可能な超光速航法を開発し、大規模な星間国家が誕生する段階。

  他文明が存在する惑星を支配する段階でもあり、多民族国家どころか多種族国家となる。

  確認出来る限りでは、彼の国のみがこの段階に到達している。


 第一階層

  銀河全域を支配可能な文明レベル

  確認出来る限りでは、この段階に到達している文明は存在しない。

  現在では空想の階層ではあるが、いずれは彼の国が到達すると思われている。


 第零階層

  複数の銀河を支配可能な文明レベル

  確認出来る限りでは、この段階に到達している文明レベルは存在しない。

  完全に空想の階層であり、この階層を定義した意味そのものが問われている。



 モニターに地上の様子が表示される。

 文明の存在する地域には、木製や石造りの建造物が所狭しと並んでおり、中心には巨大な城や宗教施設と思しき建造物と、そこから放射状に延びる街道が確認出来る。

「典型的な中世の文明だな」

 そう言いつつ、今度は海へ目を向ける。

「おお、帆船もいいもんだな!」

 暫く眺めた後、また地上へ視点を戻す。

「うわぁ、映画で見るよりも凄い迫力だわ・・・」

 農地のすぐ横で、今正に戦闘が行われている。

 剣や槍を振り回し、石や矢が飛び交う戦いなど、今となっては映画の中だけの話である筈であったが、実際に見てみると遥かにグロテスクであった。

「マスター」

 夢中で眺めていた所、横からノアに呼び掛けられて我に返る。

「な、何だ?」

「この惑星で宜しいですか?」

「んー・・・そうだな、この星にしよう。」

「では、降下準備を始めます。」

「いや待った、その前に月面を開発したい。」

「月面ですか?」

「ああ」

 坂田の思惑は以下の通りである。

 現地文明と接触しても敗ける事は有り得ないが、何が起こるかはその時になるまで判らない。

 定住した地域が地殻変動を起こしたらどうなるか?大規模な気候変動によって環境が激変したらどうなるか?

 宇宙規模でモノを考える文明であるだけに、想定される災害も超大規模である。

 そこで、保険として先に月面に避難場所兼修施設備兼資源生産拠点を設置する事としたのである。

「了解しました。直ちに月面の探査を開始し、まずは全艦を収容可能なドックを建設します。」

「資源は持つか?」

「御心配無く。これまでの航海で、十分な備蓄があります。」

 坂田が眠っていた19年間で、複数の惑星(居住に適さない)から資源を採掘していたのである。

 その為、同行している輸送艦は各種資源で一杯であり、それどころか輸送艦自体が19年前より増えている。

「どんだけ貯めたんだよ?」

 表示されたリストを見ながら呆れる。

「当ての無い航海を続けていたんです。いくらあってもあり過ぎと言う事はありません。」

「・・・そうだな。取り敢えず、ドックが出来たらまずはプラント艦の様子を見てくれ。」

 プラント艦とは、食糧生産を行っている艦である。

 農作物は勿論の事、家畜も多数搭載して全自動で生産が行われており、これが故障したら坂田は餓死する運命である。

「では、これより探査を開始します。」

 長年の漂流を経て、坂田の新たな人生が始まる。



 文明階層ですが、元ネタはHALOと言うゲームです。

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