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第八話  新天地へ

 年明け一発目の投稿です

 エイスティア王国  とある酒場



 最近の王国では、ある噂話が広く出回っている。

 お喋りが多い酒場では、今日もその話で持ち切りであった。

「おっ・・・よォ、久しぶりじゃねえか!」

「ああ、お前か」

 ほろ酔いの男が、新しく入って来た男に話し掛ける。

「ケッ、相変わらず不愛想な奴だな。」

「大きなお世話だ」

 酔っている男 ケン は、少し不機嫌になる。

「そう睨むな、聞いてやるから話せ。」

 座りながら アルト は言う。

「なら、耳かっぽじってよく聞けよ?」

「いいから早く話せ」

 盛り上げようとするケンに、酒を注文しながらアルトはぶっきらぼうに言う。

「ッたく・・・最近アッチコッチで言われてんだがよ、東の何とか森の先に新天地が見付かったんだと。」

「ケミの大森林だ。その話なら俺も聞いた。」

「何だ、お前も知ってたのか・・・」

「何処もかしこもその話ばかりだ。特に、冒険者の間ではな。」

 王国の東にある未開の森、ケミの大森林を踏破した者が遂に現れ、その先の地を目撃した。

 未だ認知されていない地の多いこの星では、新天地の発見は大きな功績として語り継がれる偉業の一つとなっている。

 そして、その様な話を好奇心旺盛な冒険者が放置しておく筈がなかった。

「まぁ、お前が知ってるってんなら話は早い。」

「共に森の先へ向かいたい、か?」

「・・・・・・」

 アルトに機先を制され、ケンはふてくされて口を閉ざした。

「そうむくれるな、むしろ丁度良かった。」

「・・・」

「だから・・・まぁ、なんだ、俺が悪かったから共に行ってくれないか?」

「・・・分かったよ、そこまで言われちゃぁしょうがねーな!」

(チョロい)

 同じ様に、余裕のある冒険者達は各地で信用出来る者を誘い、次々と東を目指した。

 一方、日々の暮らしに追われている者達も、この話に触発されてより熱心に稼ぎ出す様になった。

 こうした動きは周辺国にも徐々に伝播して行き、いつしか国の耳に届く事態となった。

 そんな中、彼等にとっては幸運な事に教会からとある募集が始まり、大勢がこの申し出に飛び付く事となった。




 ・・・ ・・・ ・・・




 フロンティア中部



 完成した格納式発着場に併設されている基地にて、

『この辺は人の通った痕跡があるな・・・』

『啓開されてる場所は、他と歩き易さが段違いだな』

『おい、あそこにいるのって』

『あ、あれは神速のアンディじゃねぇか!』

 マイクロドローンから送られて来る情報を一括管理する情報室では、レジェンドアンドロイドの ケイ が続々と送られて来る映像に目を通していた。

 コルタが帰って以降、広まった噂を頼りにケミの大森林を訪れる者が後を絶たなくなっている。

 その上、現在訪れているのは冒険者の中でも名の知れた精鋭ばかりであり、探索速度が速い。

 更に、コルタのルートをすぐに見付け出す者も多く、森を抜けるまでにひと月も掛からないと推定されている。

 既に、彼等が森を抜けた場合を想定して準備を進めているが、今度はエイスティア王国での新たな動きが確認された。

「由々しき事態ね・・・」

 そう呟くと、アンドロイド間で共有されている通信回線を開く。

 これは、アンドロイドのみに備わっている機能であり、坂田には利用出来ない。

 これにより、直接会話をせずに迅速な情報や各種指揮等のやり取りを行える。

『リーン、聞こえてるかしら?』

『ケイですか、どうしましたか?』

『教会が本格的に動き始めたわ』

 同時に、情報を転送する。

『・・・面倒ですね』

 それは、冒険者の雇い入れが始まったと言う報告であった。

 その日暮らしとなっている者を中心に、続々と人が集まっている様子が映っており、同時進行で森を目指す準備が行われている。

 更に、王国も使節団の準備が進んでいる事が判明した。

『冒険者が別個に訪れるだけなら話は簡単だけど、そうも行かなくなりそうよ?』

『マスターから既に方針は示されています 問題は、先方がどの様な思惑を持っているかです』

 ケイから再び情報が渡される。

 それぞれがフロンティアへどの様な目的で見ているのかが赤裸々にされる。

 教会は新たな布教先としてこの地を見遣り、王国は教会の勢力伸長阻止の切っ掛けとしてこの地を見ている。

『どちらも、この地を穏やかに傘下に入れる方向へ収束しそうですね』

『国はともかく、教会は物騒な事も考えてるみたいよ』

 それは、イーダが秘密裏に進めている計画であった。

 コルタの派遣と同時進行で裏組織から潜入や暗殺に優れた者を雇い、フロンティア奥深くの調査、可能であれば坂田やその他代表者を拉致する計画が進んでいる。

『それは、穏やかではありませんね』

『何を考えてると思う?』

『このフロンティアを、自分の手で支配したいのでしょうね』

『馬鹿な事を考えるものね』

『その様な理屈が通じるのなら、最初からこんな馬鹿げた事は考えもしません』

 雑談を交えつつ、リーンの脳内では今後の対応が組み立てられていた。

 それに従い、各方面との連絡を取りつつ、来るべき日を待ち続けた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ウォルデ大陸南部



 亜熱帯に属する砂漠地帯。

 現地文明の存在しないこの地に、坂田が訪れていた。

「・・・これか」

 輸送機から降り、足元の異物に目を向ける。

「間違いありません。こんな所に・・・」

 同行しているノアは、驚きの声を上げる。

 そこにあるのは、半分砂に埋もれたダンジョンである。

 魔力の吹き出すエリアでもないこの場所に、何故ダンジョンコアが形成されたのか?

 その調査が目的である。

「観測器からのデータを」

 投影用ワーカーが、上空からの映像を映す。

「・・・この辺だけ異様に魔力が濃いな。」

 魔力分布が表示されると、この地点のみがオアシスの様に高い濃度を示していた。

「この様な現象は見た事がありませんね・・・」

 ノアも同意する。

「ワーカーを投入する」

 坂田が言うと、戦闘用ワーカーと観測用ワーカーが動き、ダンジョン内へ侵入した。

 投影用ワーカーがもう一機稼働し、観測用ワーカーからの内部映像を映す。

「外壁は石煉瓦製ですね。一般的なダンジョンです。」

 ダンジョンには、いくつかの種類がある。



 迷宮タイプ

 石製の建材によって構成され、ローグライクで見られる様な迷路が続く。

 ダンジョンの大半がこのタイプであり、ダンジョンと言えば基本的に迷宮タイプを指す。

 密室であるせいで内部は暗く、独自に明かりを用意する必要がある。


 自然タイプ

 内部が平原や丘陵や渓谷によって構成される。

 外壁が発光しているのが特徴であり、内部は常に明るい。

 土地は肥沃であり、食性に適する植物も多い。


 戦場タイプ

 建材によって構成される点は迷宮タイプと同じだが、内部構造が単純な代わりに番人の数が極めて多い。

 彼の国では、このタイプを利用した娯楽番組があり、人気を博している。

 また、死刑執行に利用していた時期もある。


「特に変わった素材が使われてる訳でも無さそうだな・・・」

 映像を見ながら、坂田は首を捻る。

「前方、番人が来ます」

 やって来たのは、二足歩行する石製の番人<ゴーレム>と、植物や鉱物で構成された番人<マジシャン>である。

「前衛と後衛が揃ってるか・・・お手並み拝見」

 戦闘用ワーカーが、ゴーレムに対してレーザーを放つ。

 一閃された光は呆気無く貫通し、ゴーレムの片腕を切り落とした。

「特に変わった点は無さそうだな。」

 今度は頭部を狙い、とどめを刺す。

「ん!?」

 突如としてゴーレムの目の前に、薄い光の幕が現れた。

 それを発動したのは、後方に控えていたマジシャンである。

「有り得ない・・・単体でこれ程のシールドを形成するなんて!」

 ノアが叫ぶ。

 しかし、シールドの強度はレーザーを防ぐにはまるで足りず、ゴーレムをそのまま貫いた。

 今度はマジシャンに目を向けると、僅かに発光していた。

 魔法を発動する前兆である。

 炎系の魔法が飛んで来ると分析され、躱す為にワーカーの挙動が激しくなる。

「んん!?」

 画面一杯に炎が映し出され、トーチカを標的にした火炎放射の様な様相になる。

 すぐに鎮火したが、ワーカーには焦げ目が付いていた。

「06号機が不調、直ちに引き上げます!」

 ノアが報告する。

 その間に三機が包囲し、マジシャンを三方から撃つとあっさりと決着が着いた。

「初っ端からこれか・・・」

 坂田は、思わず嘆息する。

「すぐに回収して調査を行うべきです。」

「ああ」

 背後にいるソルジャーアンドロイドがダンジョンへ入り、ゴーレムとマジシャンの回収を開始する。

 その間、坂田とノアは今の戦闘の記録を見直す。

「内包してる魔力は、一般的だな・・・」

「どう考えても辻褄が合いません。シールドまで形成出来るなんて・・・」

 シールドの形成は、魔力を扱えれば理論上は誰でも出来る。

 だが、空気中に一定の魔力を留め続けるのは至難の業であり、まともに攻撃を防げるようにするには、生物が体内に持つ全魔力を絞り出しても足りない。

 番人は生物ではないが、それでも内包している魔力は胴体の維持が出来る範囲を基準に構成されている。

 稀に高い魔力を持つ個体もいるが、それは体を構成する素材に偶々魔石が多く含まれているからである。

 それに対し、今回の番人は一般的な個体であり、例外的な要素は見当たらない。

 魔力の流れを見る中で、今度は魔法の発動の瞬間を確認する。

「こ、これは!?」

「何が起きてる!?」

 常識的な範疇に過ぎなかった魔力が、一気に増幅される様子が映し出されていた。

「これは、調べに来た甲斐があったな!」

「こんな事、前代未聞です・・・」

 坂田は目を輝かせ、ノアは呆然とする。

「これは現地人に知られる訳には行かない!番人をもっと回収したら、月面に持って行くぞ!」

 その後も何体かの番人を倒し、その全てを回収すると、一行は輸送機で月面へと急いだ。




 ・・・ ・・・ ・・・




 フロンティア北西



 ノアによって<ウォルデステップ>と名付けられた北西の大平原。

 多数の遊牧民が割拠するその場所では、最東端に位置している民族が、ある決断を下そうとしていた。

「長、この一帯の草は大分少なくなりました。もうそろそろ移動しなければ、馬が餓死してしまいます。」

 中央の巨大なテントの中で、立派な体格の男達が話し合う。

「ふぅむ・・・他も同様か?」

「ええ、私もそろそろ頃合いかと思います。」

「俺もだ」

「右に同じ・・・」

 次々に賛意が示される。

「そうか・・・ならば、全員に準備させよ。」

「長、次は何処へ向かうので?」

「東へ行く」




 ・・・ ・・・ ・・・




 エイスティア王国東端  クル村



 最初に彗星の目撃情報を上げ、コルタが訪れたこの村は、本来であれば何の変哲も無い小さな村だが、今は賑わいを見せている。

 人口50人程度のこの村に、100人近い冒険者が滞在し、次々と東を目指しているのである。

 ケミの大森林の探索を目的としている彼等は、森に最も近いこの村を拠点として活動し、村人との交流も盛んに行われている。

「ありがとう、世話になったな。」

「いえいえ、またいつでもいらして下さい。」

「お兄ちゃんまたね!」

「ああ、また来るぞ」

 他所から人が訪れる事など滅多に無い場所であるだけに、クル村にはまともな宿泊施設が無く、冒険者達は村人の家を間借りしている。

 現在訪れている冒険者は上位の実力者ばかりであり、経済的にも余裕があるお陰で村人との軋轢も少なく、良好な関係が築かれていた。

「いやぁ、かわいいあんちゃんだったな。」

「あんな息子を持ちたいわねぇ・・・」

「息子って、結婚する気あったのかよ?」

「・・・何か言ったかしら?」

「い、いいえ何も!」

「馬鹿騒ぎはそこまでにしろ。此処から先は未知の領域だぞ。二つ名持ちも大勢動いてるんだからな、それだけ困難な場所なんだぞ。」

「一部素行の悪い者もいる様です。闇討ちにも気を付けた方が良いでしょう。」

 物資を調達し、準備を整えたパーティーがまた一組東へ旅立った。

 その穴を埋めるかの様に、新たな冒険者が西からやって来る。

 更に、この動きに触発された商人も動き出し、市場が形成された。

 民家のすぐ隣に露店が建ち並び、様々な物資が持ち込まれた事で、クル村は空前の好景気となった。

 物資備蓄の倉庫や宿舎が建てられ、長期滞在を見越して新たに畑が開墾され、一部永住希望者が出た事で家まで建てられた。

 また、この流れに乗る様に街道整備の話まで出始めた。

 遅々としていたエイスティア王国の開拓事業は、坂田以下フロンティアの存在を切っ掛けに一気に加速を見せた。

 些細な蝶の羽ばたきは、確かな変化を生み出していた。



 リアルがごたついてて中々手が付けられませんでしたが、どうにか再開出来ました。

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