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『蛹』~さなぎ~  作者: 木尾方
16/27

六月 ③

小峰由香子は、大石巡査部長とバイクでのパトロール中に事故の報告を無線で受けた。


後輩の高乃は、自転車で二人の後を追っていた。


事故現場は自分達が勤務する交番のすぐ近所との連絡。

交番へと戻る途中だったが、交番を通り過ぎ事故現場へと向かった。


バイクを止め状況を確認した。


倒れている人の周りには人が何人がいたが。誰も介抱や声かけをしてる人はいない。

小峰は、被害者ダメみたいだなっと悟った。

「大丈夫ですか?」と声をかけながら、車両の前に倒れて込んでいる船津を除きこんだ。

やはり、船津は事切れていた。しかし、小峰は死亡してい船津を見て違和感を感じたのだ。


振り向くと少し遅れた高乃が困惑な表情をしていた。


「高乃君は、運転手の方お願いします」

すると、救急車と応援のパトカーが到着した。


「あ、はい」と答えながら高乃は道路脇に地べたに座り伏せている運転手らしき人物の方へ行った。


大石と一緒に応援の警察官も交通の誘導を始め、救急隊員が小峰に駆け寄ってきた。


「ケガ人は?」


「残念ながら」隊員の声に小峰は答えた


「…この方、今 事故にあわれたのですよね?」


「そのはずです。私も無線で聞いて、駆けつけてまだ五分足らずです」


「おかしいですよ。死後硬直してます」と隊員は小峰に小声で言った。

ストレッチャーを持った別の隊員も表情を曇らせた。


「先輩、その人…」運転手の話を聞いているはずの高乃が声をかけてきた。


「高乃君どうした?運転手の方は?」


「すみません。でも、報告が…俺、この人知ってます」


「え!本当?」














三人は事故現場の処理が終わったので、直ぐ傍の船津のアパートに向かってみることにした。


事故現場から路地裏を通って行けばすぐアパートなのだが、バイクと自転車を置いていく訳にもいかずかなり遠回りしながらアパートへと向かわなければならなかった。



高乃が先頭を必死に走り、事故現場の県道を暫く走り左折、住宅地の中を左折右折をして突き当たる。袋小路だ。

突き当たりが駐車場、右側がアパートになっている。


駐車場は狭いが八台ほど置ける駐車場で、2tトラックが一台止まっていた。トラックには、中村ハウスクリーニングの文字があった。




「ここ?」小峰はアパートを見上げながら念のために高乃に聞いた。


「はい。自分が警察寮に入る前まで住んでいて、その隣の住人なので、間違いないです」アパートの方に歩きながら答えた。


アパート横の細い路地を駅方向に200mほど行くと事故現場がある。そして、自動車がアパートに来るためには、広い通りから入らないと行けないので、事故現場からは距離にして400m以上迂回しなければならく左折右折があるので距離以上に時間がかかる。駐車場は近隣住民の抜け道にもなっていて、車は無理だが、自転車やバイクはお構いなしに通過してるようだった。


大石は、アパートわきの路地裏を眺めていた。

「…路地裏って言うより、住人の生活道路だな。」


「そうなんですよ。でも、駅に行くには近道ですし、自転車も通れないですが、ここを通ると自転車と変わらないで駅に着きますし。ここのアパートの住人と、数件しか使う家しかありませんので、住んでないわからないですよ。この先は行き止まりですから」


「ほんと、知らなかった」交番勤務が長い小峰も驚いていた。


「そして、この狭い通りに面した部屋が事故被害者の部屋です」


大石は、一通り辺りを見渡して、船津の部屋をノックした。 

 

《コンコン コンコン》


耳をすますと、テレビなのかかすかに音声は聞こえるが人の気配はしなかった。


「すみません。いらっしゃいますか?」再びノックする あえて警察官を名乗らない大石であった。

高乃に指差して表札の方に指を向け声に出さないで「名前?」と聞いた。


「船津です」と小声で答えた。


「船津さん、いらっしゃいますか?」


「…やはり、事故被害者なのかもな。今のところ、事件性もないようなので、一度、交番に戻ろう」


「はい」と小峰、高木が返事した。


「ところで、高乃君は、どの部屋だった?」と小峰の問に


「隣です」


「ふーん。付き合いあったの?」


「まったく無いですよ。間違って荷物が俺の部屋に届いたのでそれを、届けた時に名前を知ったぐらいで、相手は、きっと俺の名前も知らないと思いますよ」

続けて高乃は、

「あぁ~、早く寮出て一人ぐらししたい!先輩は、いいよな~女性寮ないから一人暮らしで羨ましいですよ」


「早く、彼女と結婚して寮出てけば?」


「それ、一人暮らしじゃないっす」


駐車場に戻ると、ふと小峰は大石巡査部長が向ける視線に気付いた。その視線を追うとアパートの二階を見ていた。

そこには、アパートの住人であろう小学三、四年生ぐらいの女の子が お菓子か何かを食べてながら、こちらを見つめていた。


大石は、「これ以上、なにもなければいいが…」と ぼそりつぶやいた。








 金谷清彦(かなやきよひこは、都内にプログラミングをする孫受け会社に勤務する、ただただ真面目な男性で出社前に最寄駅で栄養ドリンクを二本買い、一本は、その場で飲み もう一本は夕方残業手前で飲む。いわゆるブラック企業に努めている社畜と呼ばれる従業員である。アパートから会社を往復する生活をかれこれ十年続けている。


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