最初の異世界交流?2
―どうしたもんなのかなー。
恵一はそんな風にブッシュマスター装甲車の防弾窓から外を見ながらそう思った。
外では中世風の武装を身に着けた騎馬兵が装甲車を取り囲んでいる。
騎馬兵は初め弓矢で装甲車を射抜こうとしたが刺さるはずがない。
石を投げつけるも虫眼鏡で見ないとわからない程度の塗装の剥げしかできない。
12.7mm弾をも防ぐ装甲板に剣や槍を突き立てても刃が欠けるだけでビクともせず途中から攻撃を止めてしまっていた。
数分前、83式装甲兵員輸送車
「隊長、昨日の航空偵察と様子が違います!」
「....」
「隊長?」
無線が入る。
「こちら2号車、この停車位置では旋回できません。後退する場合はバックしてください」
「...各員、機銃に安全装置をセットしたうえで銃架のハッチを閉めて車内で待機だ」
「隊長いいんですか?!」
「考えて見ろ相手は剣と槍しかないんだ。いったん様子を見よう。向こうだってしばらく経てば落ち着くだろ?」
「...了解」
ブッシュマスター装甲車の車内
「恵一様、この車、とっても固いんですね!騎士の剣が全く歯が立ってない」
「そりゃあね、10㎜以上の装甲板を剣でぶっ叩いたところでねぇ」
「これじゃ、コミュニケーションなんてできそうにないわね...」
宇佐美は装甲車の頑丈さに驚嘆し、乙十葉は行動計画がおじゃんになりそうなことに落胆し、恵一は無敵状態になった気分で外の騎士たちはのんきに見ていた。
する外にいる騎兵達が先ほどとうって変わったように城下町のほうへ馬を走らせて引き始めた。
「ん?」
恵一は窓に顔を近づけて様子を見るが理由がわからない。
「鵜川君、そっちの窓から何か見える?」
乙十葉は反対側の窓から様子を見ているがそちらからも原因が確認できない様子だった。
「こっちは何も見えない」
そんなやり取りに割って入るように乗員の軍人たちの会話が慌ただしくなる。
「了解!」
そう言うと車列が急発進して動き出す。
「おい、兵隊さん。一体何が...」
恵一が言い切る前にそれは起きた。
ガシャン!
車体が大きく揺さぶられる。
「な、何だ、何かがぶつかったぞ?!」
「恵一様!」
「一体何が起きているの?!」
皆の気が動転する。
それに追い打ちをかけるように何か柔らかいものが車体に当たったと思ったら窓の外が燃え始めた。
車内はさらにパニックになる。
そこで運転手が簡潔に述べた。
「モンスターだ!」
アルデンセ城
トゥナス侯爵家の居城である中世風の石造りの中小規模の城だ。
「こんな時に野竜ですって?!」
「はい。5匹はいる群です。しかも火竜種です!」
「よりによって火竜種だなんて...」
城内では高貴な女性に対して武具を身に着けた兵士が報告を行っていた。
それを聞いた高貴そうな女性は部屋を出て城の屋上へ走り出す。
「お待ちください、アスリー様!」
女性が屋上に出ると見張りの兵が跪こうとするが彼女は即座に制止を見張りに即して狭間から外を見る。
そこには火を放たれたように燃え始めた城下の町の姿があった。
そして上空には旋回しながら滞空するドラゴンのようなモンスターの群れがあった。
ブッシュマスター装甲車の車内
「ダメだ。ラジエーターに異常はないですが右二つのタイヤが火炎で変形しすぎてとても走行できないです」
「はい、そうです」
乗員が無線でやり取りする中、恵一たちは汚れた窓からまた外を見ていた。
「流石は装甲車だ、なんともないぜ!」
「なんともあるじゃない!動けないのよ?」
「そうだけど装甲車の本分は何といっても乗員の生存だからな。MRAP系の装甲車なんて乗員が死なないなら壊れてなんぼだろ」
「そんなことは私だって知ってるわ!それよりこれからどうなるかを考えるべきでしょ!」
「...おっしゃる通りでございます」
―というかそういうの普通の人知らないだろ。何で知ってるんだよ!
「君たち、援護するから83式に移乗してくれ。この車は放棄する!」
「わかりました」
「はい」
乗員や兵員輸送車から降車展開した護衛の歩兵に即され恵一たちはブッシュマスター装甲車を降りる。
この時点で襲ってきたモンスターは装甲車の堅牢さを見て興味をなくし町や城を襲っていた。
「あれ、火竜種の野竜か?」
恵一は降車してようやく周りの状況を正確に理解し、襲ってきたモンスターの素性を指摘し、乙十葉がそれに反応する。
「知ってるの?」
「異世界に1年もいたんだ、知らないわけないだろ。ファンタジーでいうところの火を噴くタイプのドラゴンだ。ああやって人間の住居を焼いて出てきたやつを食らう人食を好む特に質が悪いタイプだよ。だからこの世界じゃドラゴンライダーのハンターがいて国や大領主のお抱え部隊やフリーランスがああいうのを駆除するんだよ。でもそんな輩が来る気配無いな。なんでだ?」
「...もしかして戦争時にはその人たちも兵士として駆り出されたりするの?」
「ああ。...もしかして戦ったことあるの?」
「ええ、国防軍とアメリカ軍の陣奪取作戦の時に敵軍にたくさんいたらしいけど対空砲やミサイルで一掃したとか...」
「そういうことか!」
―じゃあ、奴らに対抗できるのは...
小走りでそう言ってるうちに83式APC(兵員輸送車の英語略)にたどり着く。
「よし、全員乗車した。これより後退する」
「待ってください!」
部隊長と思われる指揮官に恵一が食い下がった。
「なんだね君?!」
「今、街を襲っているモンスターに対処できるのは我々だけなんです。彼らを助けてやってください!」
「そんな危険は冒せない。現に装甲車を一台走行不能にさせられたんだぞ!」
「大丈夫です。奴らはいったん地面に降りるかホバリングしなければ火は吐けません。その間に攻撃する隙は十分あります!防御力はご存じのはずです!」
「待ってくれ、私の任務は君たちの護衛だ。危険にさらすのは...」
「私からもお願いします!」
乙十葉も恵一を援護する様に直談判する。
「ここでモンスターを駆除すればこの地の領主に対して貸しを作れます。ひいてはいきなり襲って来ることもむげにされる可能性も無くなる事にも繋がります。政治的メリットは十分です。責任に関しても私から口添えは惜しまないつもりです。危険は承知します。鵜川君は?」
恵一は即座に頷く。
日本語をうまく聞き取れない宇佐美も状況を読み同じく頷いた。
少しだけ無言の時間が流れ指揮官がそれを打ち切るように発言する。
「総員、戦闘用意。降車戦闘は禁止とし攻撃はすべて銃架、ターレットからのものとする!」
装甲車の車列が城下町を見下ろすなだらかな丘から下り始めた。
プロットが意味をなさない、キャラクターが全然違う動きする....。
まあアルカディアンズも基本そうなんですが。
アルカディアンズは非常時なので兵士視点でも問題なかったんですが、正規軍人はグレーゾーンはやっぱり戦いたがらないし使い切りキャラになっちゃいますね。
なので主人公サポートは民間軍事会社と異世界新設治安組織の歩兵キャラに方向転換しようかと思います。