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新橋事件1


「国軍名が自衛隊の日本、じゃあ、あなたは私たちが住んでいる日本とは違う日本から来たってこと?」


「はい」


乙十葉と日下部大尉は顔を見合わせる。

信じていいものなのか途方に暮れているのが恵一には見て取れた。


「俄かには信じ難い話ね。でもアレが出現してからはあながち嘘じゃないのかもと思えてくるわ」


「アレって?」


「私たちの世界とこの世界を結んだミステリーサークルのような転移システム。通称、『陣』よ。同盟国や市民の間ではスクエアと呼ばれてる」


スクエア...」


「ええ、2か月前に突如出現したの。それを経て私たちはこの世界に来た。あなた住む世界の日本、首都名は東京で新橋って地名はある?」


「もちろんです」


「そこはあってるんだ。で、2か月前にその陣が新橋に繋がったの。俗にいう新橋事件よ」


「新橋事件...」




20XX年 東京都港区新橋


「おい、なんだこの光?」


新橋の街を歩く人々の前で交差点が光り出し、一気に増光する。


「うわ!」


光が収まるとそこには剣と槍で戦う時代の兵隊の軍団が出現していた。


「何?なんかのイベント?」


交差点の前でたたずむ人々は状況を全く理解できずにいるが、突如現れた軍団はそんなことはお構いなしに剣と槍を前に向けて叫び出す。


「うおおおおおお!」


軍団の兵士たちが市民に襲い掛かる。

軍団の周りにはファンタジーでいうところのゴブリンやオークのようなモンスターの姿もある。


「うああああ!」


「きゃあああ!」


新橋の町は殺戮の現場に様変わりした。


「司令本部に電話が殺到してるって」


「おい、駅の周りが騒がしいぞ、二人で出て見てくる」


「こちら本部、新橋駅前で暴動発生が入電中。付近の交番及び巡回中の車両は直ちに急行せよ」


「こちら○○交番、了解。急行する」


「なんだあれ?こっちに来るぞ!」


進軍する軍団が交番前まで到達する。


「動くな!それ以上近づけば発砲する!」


全く動じない軍団は前進を続ける。


「威嚇射撃だ」


発砲すると軍団から足の速そうな兵士が出てきて警察官に向かっていく。

手には剣が握られている。


「う、...撃て、撃て!」


近づいてきた兵士を警官が銃撃して倒す。

しかし無勢に多勢で押し切られて警官たちがグサリと剣で刺され交番の警官隊が壊滅する。

軍勢は進軍速度を緩めず新橋から放射状に展開していく。



東京都千代田区霞が関 国会議事堂


国会では与野党で答弁が行われていた。

そこへ事務官や警備官が入ってくる。


「大変です!新橋で数万人規模の暴動が発生した模様で、暴徒が市民を殺傷しながらこちらへ向かってきています。直ちに避難を開始してください!」


議場がざわめくと議員たちは一堂に移動を開始した。

その中には日本国総理大臣、正村嘉人の姿もあった。


「君、何が起きているんだね?暴徒は北軍の破壊工作部隊か?」


「詳細は分かりません。事実関係の確認を行っているところです」


「そうか」


「総理、ここは首相官邸に戻らず市ヶ谷の国防省へ移動したほうがよろしいかと」


「そうだな。官邸は新橋から目と鼻の先だろうし、状況対応に出る軍からの情報もダイレクトに入るしな。そうしよう」



東京都新宿区市谷本村町 国防省


「練馬駐屯地から第1歩兵連隊、大宮駐屯地から第32歩兵連隊が出動しました」


「第一歩兵師団司令部からダイレクトラインです」


「繋いで」


この世界の日本の国防の中枢である国防省の庁舎及び地下フロアでは、慌ただしく職員、制服組が状況対応に追われていた。


国防大臣 美川元子


「山本事務次長、共和国防衛軍の動きは?」


国防大臣の隣に眼鏡をかけたお姉さんタイプの女性がついている。

彼女は総参謀部事務局次長で日本空軍所属の山本七十七少将だ。


「はい、偵察が活発化してきました。しかし、部隊の位置及び無線量は暴動発生前後で変化していませんでした。しかも状況を確認する無線が多数傍受されていて向こうも寝耳に水の事態と捉えているのかもしれません」


「共和国防衛軍の仕業じゃない?じゃあ誰の仕業だというのかしら」


「そこまではわかりません」


「上空に第308飛行隊到達しました」



港区上空


上空、高度3000フィートを戦闘機部隊が飛行する。

機体は日の丸マークを付け、コンフォマールタンクを装備した洋上迷彩のF-16Eファイティングファルコンだった。


「上空に敵性飛行物は見当たらない。地上で戦闘を行っているだけのようだ。こちらは目標をすでにターゲティングできる状態です。指示があれば航空攻撃可能です」


「こちら管制、攻撃の指示が出ていない、上空待機せよ」


「了解」



国防省の入り口


総理大臣を乗せた車両が国防省に到着する。


「お待ちしておりました、総理」


「おや、先に来ていたか。連絡が行き届いていないはずだが先読みしたようだね、山本補佐官」


「当然ですよ」


総理を迎えたのは安全保障主席補佐官の山本正十郎だ。


「君の奥さんも一緒に連れてこれればよかったんだが連れていける人数もあったしとにかく本人が頑なに固辞してね」


「家内らしい。本人も行為だけ受け取れば十分だと思ってるはずです。では先を急ぎましょう」


「そうしよう」


総理は国防省の庁舎へ入っていく。


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