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事情聴取


翌日の朝、恵一たちはプレハブの宿舎で朝を迎えた。


「恵一様、この布団凄いです!とってもふかふかで快適でしたよ!世の中にはこんな凄い布団があるんですね!」


朝から宇佐美がテンションを高くしてした。

一方恵一のテンションはそこまで高くない。


「んー、眠い」


「夜更かしするからですよ。それにこの時計っていう道具の針がここを指したら係の人が来るって言ってませんでしたか?」


「あー、そうだった。めんどくせー。今何時?」


「わたし時間わからないですよ。この時計って言うのに刻まれた文字もわからないです」


「あ、数字教えてなかった」


恵一はしかたなく起きると洗面台に言って顔を洗い始めた。


「凄い、水が金属の管から出てきた!」


宇佐美は次から次へと新たな発見を恵一に大声で報告していく。


「ほら、こうやって水を出したり止めたりするんよ?」


「へぇー。あ、おっきな鏡!こんなに大きくて汚れも歪みもない鏡を見たの初めてですよ!」


「そだね」


恵一の返答が簡便化していく。

そんな時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「ちょっと!約束の時間覚えてるの?もう9時よ!」


ドアの前で昨日会った山本乙十葉という女性が立っていた。


「今行く!ったく、うるさそうな女だな」


「ちょっと、今何か言ったあんた?」


「え?いえ、なんでもございません!」


―こんな小声、なんで聞こえるんだよ!お前はデカ耳の亜人か?


準備を済ませた恵一と宇佐美は用意された服に着替えて部屋を出る。


―ちなみに昨日の事情聴取は全く進んでいない。ここが自分のいた日本じゃないことがわかってからは、こちらの素性を明かすのに慎重を期すことに決めたし、何より日本を堪能したからだ。



昨日


「あなた、名前しか教えてくれていないじゃない。年齢は?住所は?ご家族は何人?」


「えーっと、そのー...」


「話せない事情でもあるの?」


ここで話を聞いていた山本乙十葉に日下部大尉が小声で耳打ちする。


「山本さん、この少年、北日本のスパイじゃないですか?」


「流石にそれはないでしょ。そもそも陣は北日本での出現は確認されてないんでしょ?というか軍人のあなたのほうが詳しいでしょ。なんで私に聞くの?」


「それは、だって山本さんのご家族って言ったらあの方々でしょ?ご家族通じて総参謀部の情報だって入ってくるでしょう?」


「私は軍人じゃないの!お姉ちゃんたちにも父上にもそんなのは聞いたりしないししばらく連絡も取ってないわ!」


「ちょっと怒鳴らないでくださいよ!もしかしての話ですよ」


「とにかく私は軍人じゃないの。軍人にならないって決めたの!従軍してるのは研究の為なの、いい!」


「あのー、盛り上がってるとこ申し訳ないんですが、夕飯いただけないでしょうか?僕ら朝から何も食べてないんですよ。いいですかね?」


「え?あ、あの、どうなんですか、大尉?」


「え?あ、問題ないですよ」


「やったあ!飯だ!」


その後、この基地で出されている定食が差し出された。


「日本食だ!一年ぶりの日本食だ!」


「これが日本の料理なんですか?この箸っていう食器はどうやって使うんですか?」


「宇佐美、これはこうやって使うんだよ」


「わー、食べ物を掴むんだ。刺したりすくったりしないんだ?!」


「スプーンもホークもあるから宇佐美はそれを使えばいいよ。それよりこのみそ汁の匂い、秋に転移したからもう2年近く嗅いでないぞこの匂い!」


「わー、とっても美味し!日本の料理ってこんなに美味しいの?」


「違うよ、俺たちが貧乏すぎてゲロまずな飯食ってただけだよ、宇佐美。それでも中世人と違って栄養バランスを考えた飯にはしてたよ、俺?」


「このぷにぷにするの何?」


「蒲鉾っていう、タラをすり潰して作ったやつだよ」


「干したらしか食べたことないから、タラがこんなに美味しくなるなんて知らなかった」


「宇佐美、これからはこういう食事が基本だから驚く必要なんてないぞ」


「なんか貴族になったみたいで変な感じ...」


「中世の貴族って野菜ぜんぜん食べないらしいから生活習慣病凄いらしいよ」


「生活習慣病?」


ゴホンッ!


ここで乙十葉が咳をした。


「ごはんは静かに食べなさい。はしたないでしょ?」


「あ、すいません」


「スイマセン?」


二人はそのあと食事を平らげた。


「じゃあ、今日はもう遅いから明日また詳しく聞くわ。大尉さんお願いします」


「わかりました。君たち、こっちだよ」


「はい」


恵一と宇佐美は日下部大尉に連れられて宿舎へ向かう。

乙十葉だけ誰もいない給食室に残った。


「はあ、嵐みたいな連中ね」


乙十葉はため息をつくと宇佐美のことを考え出す。


「それにしても、あの宇佐美ちゃん、お人形さんみたいで可愛かったなぁ。特にあの肉球のある掌。まだ亜人とまともに接触してないからわからなかったけど、触ったらすごく気持ちよさそうね。ふふ」


そんな感じで危ない雰囲気を醸し出しながら乙十葉は宇佐美を気に入った。



時間は戻って朝


事情聴取が再開され、恵一からまず切り出す。


「あの、先に質問いいですか?」


「何?」


「今年って何年ですか?」


「20XX年よ」


―俺のいた時間軸とほとんど差がない。時代差はなしか。どうしよう、昨日スパイを疑われる話を聞いたな。北日本って何なんだ?質問次第でますます疑われるかもしれない。正直言うべきか?


「何を言うか困ってるようだからこっちから切り出すわね。実はあなたにはスパイ容疑がかけられているって言ったら、あなたどうする?」


―やっぱりそっち系になります?自衛隊じゃなくてガチ物の軍隊だもんな。軍法会議とかやってそうだもんな。というか、お前軍人じゃないって言ってなかった?私服来てるだけでほとんど軍人じゃねえか!どうする?もう本当のこと話すか?まどろっこしいこと考えるのめんどくせえよ。


「たぶん俺は昨日聞いた北日本とかいう奴らのスパイじゃないというのは間違いありません」


「じゃあ詳しく聞かせて?」


「実は...」


恵一は事実を話し始めた。

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