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ようこそ日本へ


恵一は機甲部隊の士官と話す。


「ええ、そうです。民間人を発見しました。今ヘリを待っているところです。はい、本人がそう名乗ったんです。外見は日本人で間違いなさそうで日本語も完璧です。はい、お願いします」


陸上自衛隊の機甲中隊の指揮官と思われる士官が無線で本部に状況を説明していた。

一方、恵一は自衛官と思われる人に事情を聴かれていた。


「それで1年間この世界で暮らしていたと言うことかい?」


「そうです。新潟に実家があります。家族に連絡できませんか?」


「ここじゃ無理だ。基地に戻らないことにはな。後でまた詳しく聞くからその時住所や電話番号を聞いてご家族に連絡するだろう。その亜人の子は?」


「自分の連れです。この子も一緒に連れて行ってください。置き去りにはしたくありません」


「大丈夫だ、一緒に連れて行くよ」


「ありがとうございます。自衛隊が来てくれて本当に助かりました」


「...自衛隊?おっと、ヘリが来たようだ」


UH-1Jが遠くから現れ上空まで来ると大きなローター音を轟かせゆっくり降りてきた。


「恵一様、これに乗るんですか?」


宇佐美は戦車と言い装甲車と言い、これらの乗り物に酷く怯えていた。


―近代社会を経験していない人なら怯えるのも無理はないかもしれないな。


「宇佐美、これは馬車みたいなものだ。乗り物なんだよ。人が作った乗り物、だから襲って来やしないよ」


「...わかりました」


「よし乗るぞ」


すでに着陸していたUH-1J輸送ヘリに二人が乗り込む。


「おお、これが自衛隊のUH-1Jか。ヘリに乗るのは初めてだ!」


恵一は浮かれていた。

やっと日本に帰れるのと初体験の軍用ヘリにテンションは高まっていた。

そこで違和感が頭をよぎる。


―ん?さっき乗った時、ヘリの国籍マークの隣の所属名が日本国陸上自衛隊って書いてあったっけ?なんか違ったような気がするんだが、さすがに気のせいだよな?


そんな違和感を覚えつつもあり得ないなと頭の中で片づける。


「すごい!空を飛んでる!翼がないのに!」


宇佐美は先ほどの低いテンションから上げ上げのテンションに移行していた。


「上についてるぐるぐる回ってる板が翼で飛んでるんだよ、宇佐美」


「アレが翼なんですか?」


「そそ」


「へぇー」


宇佐美はヘリコプターに興味津々で気に入った様子だった。


「だから言ったでしょ、乗り物だって。道具だから宇佐美も使い方を覚えればこれを自在に操れるようになるよ」


「あたしが?」


「うん」


「じゃあ教えて、教えて!」


「あ、えーと、...」


―しまった。


「今の宇佐美じゃ小さくて操縦できないかも。今度別のを教えてあげるから。これはそのうちね?」


「ふーん。わかりました」


宇佐美は少しだけがっかりした表情をする。

恵一はまずかったなと思いながら外の景色を見る。


時はすでに夜であり周りの景色は真っ暗だった。

だが街頭や住宅の明かりなどが全くないこの世界では夜空の明かりだけでも地平線はよく見え、地表もうっすらとだが様子がわかる。


その中でとりわけ一番目立つの何といっても天の川である。

全く明かりがない世界では天の川を肉眼で見るのは簡単だった。

そしてこの世界の夜空には天野川以外の別の銀河が夜空に鮮明に映っており、ここが地球が存在する銀河系とは別の銀河であることは明確だった。


そんな景色の中をヘリは基地に向けて一直線で飛行を続ける。

30分くらいしたら地平線の向こうに夜空を照らす大きな光源があるのが見える。

それは基地の明かりだった。


「お、見えてきた!」


恵一は上空から前線基地の様子を眺める。

何機かヘリが駐機しているのが見え中にはC-130輸送機の姿もある。


―めぼしい滑走路が見当たらないけどC-130輸送機は仮設滑走路上で運用しているんだろうな。自衛隊ってそんなにアクティブだったかな?


恵一はそう思いながら地面が近づくのを見続ける。

着地地点の近くには人だかりができていて自分たちの件で対応する人たちだというのは見て取れる。

UH-1Jが着陸し恵一たちが機内から降りると彼らは恵一たちに近寄ってきた。


そして先頭の女性が恵一に声をかけてきた。

恵一と同い年くらいのきれいな女性だった。


「ようこそ、”キャンプ・新地”へ。私は山本乙十葉でこの世界の研究をしてる従軍学者よ。異世界での経緯とあなたの身柄については私とこちらの日下部大尉で対応するわ。もう安心して」


―え?日下部大尉?


「すいません、今日下部大尉って言いました?」


「ええ、そうよ。日下部、...芳樹大尉だっけ?」


「そうです」


「大尉って、一尉ってこと?」


「一尉?それは何の用語?」


「え?だって自衛隊の階級って専門用語になってるじゃん...」


「自衛隊って何なの?どうしたの?」


「え、え、...」


―いったい何がどうなっているんだ?自衛隊じゃないの?待てよ、機体に描かれていた所属名って...


恵一は振り返ってUH-1Jの機体に描かれている所属名を見た。


「なっ?!」


そこにはこう書かれていた。


”日本国陸軍”


恵一は彼らが自分の知っている日本とは全く違う日本から来た軍隊であると知った。


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