勇者争奪戦2
<デルフィーネの館の周囲の森>
「異世界の兵隊か。話によれば恐ろしい魔道具か武器で強烈な遠隔攻撃を繰り出してくると言っていたわね。かなり厄介だけどこちらから仕掛けるならやりようはある」
フードを被った襲撃者はそう言うと指を上に立てる。
「風上か、幸先いいわね」
襲撃者は腰に下げた荷物の袋からあるものを取り出した。
<デルフィーネの館>
卯月上等兵達が89式小銃を構えて周囲を警戒していた。
「ん?」
館の周りから白い煙が立ち込め始めた。
「おい、煙が出てきたぞ!」
卯月上等兵もそちらに顔を向けた。
「何?火事?」
「火のてなんてありませんよ!」
「じゃあ、あれは...ゲホッゲホッ!」
卯月上等兵は状況確認をしようとするが館が煙に巻かれ、卯月たちはせき込み始めた。
「どうしたの?」
乙十葉が外の異変に気付いてドア越しに声をかけてきた。
「館のまわりがッゲホッゲホッ!...状況ガス!」
「ガス?!」
乙十葉はそれを聞いて開けようか悩むがドアの隙間から煙が漏れてきた。
そこで乙十葉は焦った顔でドアを開けるのを止め後づさりする。
「何が起きたの?」
宇佐美が立ち上がって乙十葉に尋ねる。
「宇佐美ちゃん、来ちゃだめよ!」
乙十葉はそう言って皆を制止する。
「宇佐美、こっちへ来い!」
恵一はそう言って宇佐美を掴むと物陰の方へ行く。
一方外では卯月たちがせき込みつづけていた。
すると何かが近づいてくる音を聞き取る。
「何かが来るわ、2時の方角!」
「何も見えない!」
涙目の卯月上等兵は89式小銃を構えるが視界ゼロで狙いが全くつかない。
そして襲撃者の一方的な攻撃が始まった。
「ウィンドノック!」
女性の声がすると卯月上等兵の隣にいた兵士がとても局所的な突風によって弾き飛ばされて館の外壁にぶつかって倒れ込む。
「見えなくていい、制圧射撃!」
卯月と残りの護衛兵がフルオート射撃で発砲し始めた。
しかし手応えがなく、女性の声がまた聞こえる。
すると今度は卯月ともう一名の兵士が突風に吹かれて弾き飛ばされた。
卯月は外壁にぶつかるが気絶せずに悶え、もう一人は手すりを破壊しながら地面に倒れ落ちる。
「....この!」
卯月は体を起こすとしり込みしながらP220 9mm拳銃を取り出し、手当たり次第に煙の中に向けて打ち込む。
館内では銃声と破壊音によって皆の緊張は最高潮に達しており、固まったようにまばたきもほとんどしていなかった。
しかも戦況不利なのは一目瞭然だった。
そして卯月は拳銃の弾を撃ち尽くした。
「チッ!」
卯月がそう舌打ちした時だった。
フード姿の襲撃者が煙の中から現れた。
「しまった!」
卯月は急いで空のマガジンを捨てると予備のマガジンを取り出して装填しスライドを戻す。
卯月は再度拳銃を周囲に向けようとするがフード姿の敵がすかさず拳銃を蹴り飛ばした。
「いっ!」
卯月は蹴られた手を抑え、フード姿の襲撃者を睨みつけた。
「やはり武器か。武器が無ければヒトと大して変わらんな」
襲撃者はそう言ってドアの前に陣取る卯月を殴り倒した。
卯月はそのまま脇に倒れ、気絶してしまう。
襲撃者は館のドアを見る。
一方の屋内では外の護衛が全滅したと悟った乙十葉が急いで机を持ち前の馬鹿力からでドアの前に机などを引っ張り倒してつっかえにして後ろから抑えた。
「乙十葉、ドアから離れろ!相手は怪物か魔法が使えるやつだ!音を聞けばわかるだろ!」
「そんなこと言ったって何かしなくちゃ...」
乙十葉が言い終える前に襲撃者がまた魔法を使って強引にドアをぶち破った。
つっかえに使われた机や家具はドアもろとも吹き飛ばされ、乙十葉もその衝撃で弾き飛ばされて床に突っ伏す。
「乙十葉!」
「乙十葉おねえちゃん!」
恵一と宇佐美は倒れた乙十葉に駆け寄った。
だが乙十葉は気絶してしまったのか返事をしなかった。
それを見降ろすように襲撃者は煙と共にドアのあった枠から足音を立てて姿を現した。
「どうも初めまして、ひ弱そうな勇者殿」
襲撃者はそう言うと羽織っていたフードを脱ぎダークエルフとしての姿を見せた。
「だ、ダークエルフ?!」
恵一は驚きと敵意の混じった表情でダークエルフの女性を見た。
短いけど切りがよかったので




