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勇者とは

その場でふわふわした大筋プロットに設定を加えて考えました。

書き換える可能性ありです。

次回は前作のプロローグを改変して投入します。


「勇者とは何か。それはこの世界に時たま現れる特殊な能力を持った救世主のことだ」


「特殊な能力?」


「そう、歴代の勇者たちはそういった特別な力を持っていた。この世界の歴史は勇者の存在と密接に関わっていて、いろんな文献にもその足跡を伺い知ることができる。かつて共に旅をした勇者もそうだった」


―かつてのね。


「どんな力を持っていたんだ?」


「あいつは驚異的な身体能力を持っていた。横たわる大岩を軽々持ち上げ、剣を振るえば樹木を一太刀で切り倒し、並みの斬撃では致命傷に至らないような強靭な肉体だった」


「なんだそれ?なんともバイタリティー溢れるチートスキルだな、おい。でもなんでそんな能力者が現れるんだ?神様がって言ってたけど。確かこの世界の神話みたいな伝説だと世界を作った神が人々に幸福をもたらすために勇者を遣わせるって教会の人たちがよく言ってるけど」


「ああ、この世界を創造した神がそのような仕組みも作ったと、ヒトの神話では言い伝えられている。自ら作った世界に直接干渉することができない神が、ある者に特別な力を与えることで世界に均衡をもたらすことを願って生み出される存在。それが勇者だ」


「神によって...か。勇者は全員バイタリティーお化けなのか?」


「いや、それぞれの勇者の能力は違っている。怪力を授かる物もいれば大魔法を使う者もいた。中には不死の能力を持つ者もいたとか。きっと更に奇妙な能力を持つ者もいたのかもしれない」


「うわぁ...。...で、今までどれくらいの勇者がいたんだ?」


「わからない。百数十年に一度、複数の勇者がこの世界に生を受けることだけはわかっている」


「ふ、複数?!」


「そう、おそらくお前以外にもこの世界に勇者が存在する。いや、お前の様にこの世界に召喚されたかもしれない。まだ、勇者が現れたという風の噂は聞いていないから少なくとも生を受ける形でこの世界には現れていないはずだ。これまで他の世界から来た勇者はいたが、今まで調べてきた勇者伝説では勇者全員が異世界出身者であったことは聞いたことがない。前代未聞だ」


「複数って...。というか勇者が皆チートスキル持った化け物なのはわかったけど、なんで俺が勇者な訳?そんなチートスキルないよ、俺?」


「勇者は皆、体のどこかに勇者の証の刻印が現れる。現にお前の手にもあるだろう。私はその刻印の力を感じ取ったことでお前の存在に気づいた」


「...でも、だとしたら俺にもチートスキルがあるって言うのか?」


「ちーとすきるが何なのかよくわからんが特殊能力のことを言ってるんだろう。そうだ、何かしらの能力を持ってるはずだ。お前が自覚していないだけで」


「...」


恵一は立ち上がると何か考えるようにあるポーズを取った。

それを見た乙十葉は恵一に尋ねる。


「それ、もしかして○ラゴンボールのアレ?」


「...」


恵一は黙ったまま少し恥ずかしそうにポーズを止めてまた椅子に座った。

デルフィーネは特段気にした様子ではなかった。


「やっぱりチートスキル持ってるようには思えません。はい」


「そうか。だがいずれその能力を用いるべき時が来るだろう。勇者とはそういうものだった」


「というと?」


「勇者が現れる時期は戦乱の世であることが常だった。おそらく神はそれを狙って勇者を世に送り出しているのだろう。共に旅をした勇者が現れた時も、ここらを根城にしていた残虐非道な盗賊国家が世を席巻していた。望むも望まないも彼らを何としなければならない立場に立たされていた。勇者が戦わなければならない必然性があったんだ」


「随分勝手な神様だな」


「そうとも取れるが民草には希望でもある。アイツも勇者の使命を誇りにしていたよ」


「...アイツね。ちなみにだけど一緒に旅をした勇者って名前なんて言うの?」


「アノスだ」


「ああ、なるほど」


さっき聞いた学院の名前と同じだった。

名前の由来はここからだったのだ。


「聞く限りすごくいい人っぽいけど」


「まあな。聖人君子には程遠かったが与えられた力に葛藤しつつも納得できる結論を出してなすべきをなした。私はそれを見守りながら助力した。だが、勇者の中には与えられた力をおのれのためにしか使わないものも大勢いた。魔王だ」


「魔王?」


「そう、勇者として力を与えられたにも関わらず、その力で災いをもたらそうとする者をそう呼んでいる。魔王となった勇者は大抵の場合、自分の力を誇示するために帝国を作ったりむやみに戦争を働くことが多い」


―なるほど、この世界だと勇者=魔王という世界観があるのか。確かに勇者は必ず善人だなんてできた話はないんだろうな。ネット小説の勇者だとむしろ善人なんて稀だしな。その魔王もなろう主の鏡みたいなやつだな。


「勇者というかその魔王って、もちろん討伐するの大変じゃね?」


「その通りだ。勇者はただでさえ本来の使命に魔王討伐を行わなくてはならない。勇者にはとても大きな重責を伴ってしまうことが常だと聞く」


「まあ、そうなるわな。大いなる力には、大いなる責任が伴うとはよく言うけど....というかそれ、俺がやらなきゃなの?!」


「そこまでは言っていない。この時期に勇者が現れた理由も何をすべきなのかもわかってはいないからな。現にお前は自分で能力を自覚できないくらい、わかりにくい能力を持っているようだしな。まずは様子を見るしかない」


「そ、そうか。ならいいんだが...」


恵一は自分の手を見ながらそう言った。


乙十葉もデルフィーネに質問する。


「勇者の話は分かったけど、召喚陣スクエアはその勇者の伝説とは関係ないの?」


「ヒトの神話では基本的にな。だが我々ハイエルフの言い伝えはヒトの神話とはまったく違って陣についても触れられている。あの絵だ」


恵一は最初に目を付けたこの世界の創生に関する絵を思い出して振り向く。


「話はこうだ。この世界には世界を創造した始祖の神と人間を創造した我らの父となる神の二つの神が存在する。最初の始祖の神が世界を創造した。そして神は自身の分身であるもう一つの神を作り出しす。その神は始祖の神に命じられて人間を作り出す。だがその過程で自身を生み出した始祖の神と争いを始めた。あくまでも世界を支配すると言ってきかない始祖の神に人間に自由を与えることを求めた神が反逆したんだ」


この時一同が絵を見ていた。


「争いの果てにすべての人間の父となる神が勝た。そして我々ハイエルフを始めに創造した。だが神はハイエルフを創造したところで戦いの怪我が原因で人間を生み出せなくなった。そこで代わりに召喚陣を作り出してこの世界にヒト種や獣人、様々な亜人を世に送り出した。こうして世界は形作られたというお話だ」


「え?あの陣で?じゃあ、あなたたち以外は作ったんじゃなくて連れてきたってことなの?」


「伝承だとそうなる」


「...」


乙十葉は考え込む。

恵一はその様子を見ていた。


―こんな聖書に書かれるようなおとぎ話は真に受けないのが基本だけどここは異世界でいろんな超常現象が存在しているし、完全に否定できないのが...とくに召喚陣の存在。


恵一はデルフィーネに質問する。


「随分客観的に話してるけど、あんた自身は信じているのか?この伝承」


「ああ、お前の言う通り実は完全には信じていない。信じるにはいろいろ知り過ぎた。知っての通り私はエルフの中ではずいぶんな変わり者でな。勇者アノスと出会って故郷を出てから様々なものを見てきた。そして長い生を生かしいろんなことを学んだんだ。なすべきこと、やりたいことを。この伝説の真実の探求もその一つだ。おそらくエルフの伝承とヒトの伝承は前後で繋がっている。勇者の仕組みはヒトの伝承が始まった時に出来たんだろう。二つ合わせて一つの歴史を語っていると私は考えている。この世界で力を持つ教会や私の故郷の教えにも反した主張だが、そういった総合的な観点でこの伝承を見ている」


―なるほど。かなり現実主義で知識欲旺盛なわけだ。中世の中じゃ確かに変わりもので異端だけど、現代的だな。


「いいんじゃないかな。こっちの世界は教えより真理が重要だから、あんたの考え方は共感できるよ」


「そうか。それは嬉しいな。ならそのニホンという異世界にも行ってみたいな。興味が湧いてきた」


「ああ、そういえば乙十葉、俺も南日本?に行きたいんだけどまだ渡航許可出ないの?」


「今申請してる。前例がないから国は手順を考えてるのよ」


「そっか。じゃあ、そん時は団体旅行で頼むわ」


「押し付けるな」


「私もニホンに行ってみたい!」


「宇佐美ちゃんも?...わかった、努力してみるわ」


その場が少し和む。


「あともう一つなんだけど。あなた、アクバー・ダンジョンで何をしていたの?それに陣を開いたっていう経緯も聞きたいわ」


「それか。実は陣を開いたのはリモワルド帝国に命令されたからなんだ」


「帝国に?」


「そう、皇帝はダンジョンの情報を耳にしたんだ。ダンジョンを攻略すると召喚陣を開くことが可能になるという情報だ。召喚陣はいつか時代のごく短期間に突然繋がることが伝承で知られていた。異世界からの勇者の召喚もその一つだった。大型ダンジョンは攻略不能に見えるくらい危険な場所だが、ごく稀に制覇する者が出る。そのうちの一人がアクバー・ダンジョン最下層で召喚陣を起動させる方法を見つけたと報告したんだ。もともと世界中の大型ダンジョンは召喚陣と隣接していたから関係はあると考えられていた。だが召喚陣を起動できるのはハイエルフだけだとわかったらしい。そこで皇帝は私に目を付けた」


デルフィーネはため息をついた。


「私は元勇者の相棒で名のある魔導士だからダンジョン攻略にはうってつけだとな。断れば学院だけでなくレムルスにも危害を加えると脅されたんだ。私は亜人の従者を連れてダンジョン攻略に向かった」


デルフィーネはダンジョンでの出来事を語り始めた。

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[気になる点] ダインジョンを攻略すると⇒ダンジョンを攻略すると
2020/02/13 23:18 コーウェン
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