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調査と進捗2

難民キャンプ近郊


「凄い。遠くのものがとても鮮明に見えますよ、この筒!」


「双眼鏡っていう遠くのものを見るための眼鏡だよ」


「眼鏡?」


「うーん、まあ視力を整えるためのガラスってこと。これはそういう意味で遠くのものを見るためのものってことになるな」


「そうなんですね、恵...、お、お兄ちゃん!」


宇佐美は双眼鏡に凄いを言いつつ、とても不器用に恵一の名前を呼ぶ。


「そういえば鵜川君。ラビアンってどんな種族なの?あなた、この前から聞くたびにはぐらかすように喋らないけど」


「それは...」


―言いたくないというより言うのが恥ずかしいんだよな。


「なんというかラビアンはアレだよ。アマゾネスみたいな種族なんだよな」


「アマゾネス?」


「ウサギのような耳や尻尾をしていて出生の大半が女で他の種族と交わっても大半がラビアンの女として生まれるらしい。だからラビアンは女系の部族社会だとか。しかも戦士至上主義もあってビキニアーマーみたいに露出度の高い戦士服着た女が取り仕切ってるというのは風の噂で聞いてる」


「それ、マジなの?」


「うん、マジ。でも亜人の社会の話なんてこんなもんだよ?たぶんほかの種族の話も聞けば違和感なくなるんじゃないかな」


「そ、そうなんだ...」


乙十葉はかなり戸惑った様子だった。

恵一は無理ないと思った。


恵一は双眼鏡を教えると宇佐美が持っていた双眼鏡を受け取って目的地を見る。


「かなり大きいキャンプだな。どうするよ」


恵一は双眼鏡で遠方からキャンプを下見する。

するとその双眼鏡を右隣の乙十葉が取り上げて彼女もキャンプを下見する。


「前回みたいに衝突してたんじゃ危なすぎるし、かといって放置するのも良くないのよね。どれどれ、遠過ぎてあんまり見えないわね」


恵一は勝手にとってんじゃねえよと言いたそうな顔をする。

恵一が乙十葉の双眼鏡を再度取り上げてまたキャンプを見る。

乙十葉がムッとし始めた。


「じゃあどうすんだよ?丸腰で送んのかよ。余計危ないぞ」


乙十葉がまたまた双眼鏡を取り上げようとしたところ恵一は手を動かして双眼鏡を避けさせる。

双眼鏡に防衛に成功したかと思われた矢先、それを左隣に来た女性軍人に取り上げられた。


「ここは偽装して近づくのが効果的ではないでしょうか?」


―誰?


恵一と乙十葉はそう言いたそうな表情で目線を送る。


「申し遅れました。私は卯月由香上等兵であります。富野隊長の部下で皆さんの監督役に任命されました。どうぞよろしくお願いします」


堅苦しい口調の女性で実直な印象を受ける。


「あ、...どうも」


「こちらこそ。隊長から前回みたいなのは無しにしてほしいと言われているので装甲車で乗り入れるのは我々としてNGですのでより良い方法を考えましょう」


「より良い方法か...」


恵一はそう言って顎をしゃくって考える。



2分後


「こちらスネーク。これより目標に潜入する」


恵一はどこから持ってきたのかわからない大型の段ボールに身を隠して姿を現した。


乙十葉と卯月上等兵は特段何もリアクションしなかったが両者とも仲良く目が死んでいた。

恵一はその状態でキャンプのある稜線の向こうへとズリズリ移動していこうとする。

だが稜線を超える前に乙十葉が段ボール箱の前フラップを踏みつけてとおせんぼうし、恵一は乙十葉の足に段ボール越しに激突した。


「痛て!」


恵一はそういった後、段ボール箱の手掛け穴から上方を覗く。

そこには乙十葉と卯月上等兵がまるでゴミを見るような目で前に陣取って見降ろしていた。


「こちらスネーク、聞こえるか大佐?!まずいことに.......いや、じょ、冗談っすよ、冗談!ゲームみたいに潜入なんてできないのは知ってますよ?やだなー、もう、ははは」


恵一は引きつった笑顔で段ボール退けて立ち上がるとそれを解体して片づける。

「それ何なんですか?」と宇佐美が恵一に質問するが返答ははぐらかすしかなかった。


「どうしますか?」


「そうね、ここは現地住民の様に近づくのがいいのかもしれないわね」


「でもこの付近のキャンプはほとんど接触がないみたいなので協力してもらえるか怪しいですよ?」


「じゃあ他に適任なのは...」


一方の乙十葉と卯月上等兵は恵一を無視して会話を続けていたが結論として適任者である二人に目線を移した。


「宇佐美ちゃん、お願いがあるんだけどいい?」


「私?」


「そう。できればあのキャンプを訪れてほしいの。この世界の一般人でもあるあなた達なら自然に会うことができると思うの。勿論少しでも危ないと思ったら直ぐに逃げて」


「...私だけ、ですか?」


宇佐美が少し心配そうな表情をする。

内心はもう少し複雑だが。


「...うーん、鵜川君。あなたも宇佐美ちゃんについて行ってもらっていいかしら?勿論、さっきみたいなボケはしないわよね?」(威圧)


「Sir,yes,sir!おむつ持参でお供します!」


「よろしい。宇佐美ちゃん、彼も行くって。ちゃんと見てあげてね」


宇佐美の表情が明るくなる。


「う、うんわかった。恵...恵一、くんもちゃんと見るよ。私、頑張る!」


「頑張ってね、宇佐美ちゃん」


乙十葉はそう言うと恵一をじろっと睨む。

恵一は悪ふざけが過ぎたと自覚した。



ラビアンの難民キャンプ


「誰か来るぞ」


「あれは、難民か?」


「戦士を行かせろ」


「ディーズ、ラウィン、見てこい!」


恵一と宇佐美は日本と接触して以降は現代服を着るようになっていたが、今回はそれまで使っていた異世界の服を着直して出向いていた。

ちなみに宇佐美の現代服はウサギのような尻尾が外に出るようアレンジした作りになっている。


そんな二人の前にラビアンの戦士が二人現れた。


「おい、止まれ!」


「お、俺達は怪しいもんじゃないよ」


「何処から来た?」


「ゾムの近くのキャンプからだよ」


「ゾムの近く?異世界の軍勢が仕切っているところか...何しに来た?」


ラビアンの戦士が少し殺気立つ。


「いや、俺の連れがラビアンだからもしかしたらこっちの難民集落に入れてもらったほうが連れのためにも良いかなと思ってですね...」


「...ずいぶん変わったやつだな。そこの同胞よ」


「はい!」


「この男とお前はどういう関係なのだ?」


「この人は私の...」


―宇佐美、結局のところ結論を委ねたままここに来てしまったわけだがお前は俺にどうあってほしいんだ?


「大事な人です!」


「...」


―?!


恵一は宇佐美を見ながら複雑な表情をする。


「...いいだろ。同胞であるお前が望むのなら許そう」


「お願いします!」


「来い」


「ありがとう!」


「ありがとうございます。えっと、名前は...?」


「...ディーズだ」


「どうも、ディーズさん。俺はケイイチ。こっちはウサミです。よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


「...」


恵一と宇佐美は戦士二人に案内されキャンプ内に入っていく。

そしてキャンプ内のあてがわれたスペースに着くとそこで別れた。

戦士二人はラビアンのテント群に戻る。


「ディーズ、あの者たちをなぜ入れた?」


「ヒトの男は挙動がアレだが同胞はその男を信頼しているようだし誠実そうだ。同胞に免じて入れてやることにした」


「勝手に決めるな!ただでさえ氏族とは関係ない者も無理に抱えているんだ。すぐに追い出せ!」


「私もディーズに賛成だ。我々には余裕がないが同胞を無下にするのも良くない」


「ラヴィン!」


ラヴィンという戦士もディーズを擁護した。


「そんなことを続けていたら切りがないぞ!モンスターと敗残兵崩れの盗賊の襲撃で負傷者が出て移動も困難になってしまっている。このままでは完全に身動きが取れなくなってしまう。それに異世界の軍勢はそこらを徘徊していると聞く。早く居留地へ逃げないとここへ奴ら来るかもしれない」


「確かに陣での戦いでは奴らは恐ろしい力を見せた。だがその後の行動は不可解だ。他の種族のキャンプでは異世界の軍勢は人助けをしていると聞く。侵略と略奪しか能のない悪党とは明らかに違うと思うのだが...」


「だがな...!」


ラビアンの部族で言い争いが起きる一方、恵一と宇佐美は腰を据えてキャンプ内の状況を把握しようとする。


―潜入はできたものの、ここからどうするかなんだよな。


一通り見て思ったことは難民を取り巻く状態が良くないことだった。


―テントが急造のものばかりで持ち物も少ない、心なしかやつれている難民が多いな。

たぶん食糧不足もあるだろう、ここに長居はしていられないはずだ。

何とかしてやりたい。

が、やっぱり事情が分からないからまだ情報集に徹するか。


「宇佐美、ラビアンの人たち何話し合ってるんだ?」


恵一は隣いてもあまり聞き取れないよう小さな小声で宇佐美に話しかける。

宇佐美はうさ耳をピクピク動かして聞き取り恵一が聞こえるよう耳元で話しかける。


「言い争ってますよ。話題は私たちと日本のことでもちきりです」


「どんな感じの流れ?」


「私たちを追い出すか追い出さないかで揉めてて日本が危険かでも意見が割れてます」


―なるほど、だんだん見えてきたな。


そこへディーズがやって来ると座れそうなところに腰を下ろす。

すると下を向きながら持ち物のナイフを研ぎ始めた。

それを見た恵一は恐る恐る声をかける。


「さ、先ほどは、どうも...」


―え、何、何?やっぱり邪魔だからいきなりそれで始末する気?!え?


「...」


ディーズは下を向いたまま黙々と研ぎ石で軽くナイフを研磨する。


「おい、宇佐美!この人何がしたいの?同じラビアンならこういう意味があるってわかるんじゃないの?」


「わ、わからないですよ!私生まれた時から同族なんてほとんど会ったったことないですよ?」


小声で宇佐美とやり取りする。

それに呼応するようにティーズはナイフの研磨を止め、話しかけ始めた。


「ケイイチと言ったか?」


「は、はいっ!」


「付いてこい」


「...」


―どうする、どうする?シチュ的にやる気満々に見えるけどやるなら複数人でやるよな?じゃあなんだ?

とりあえず付いていくしかないのか?とりあえず、待機中の人たちがバックアップに回っていることを期待するしかないな。


その頃、1個分隊規模の選抜射手を含む狙撃分隊がキャンプ近くの背景に同化しやすく見晴らしの良くなおかつ600m以内の地点に布陣していた。

その中には乙十葉の姿もあった。


「キャンプから出ていくわ。どこへ行く気?」


「まだ射線内ですが離れ過ぎたらコイツじゃとても狙えないですよ」


狙撃手は64式7.62mm狙撃銃を構えている。

この64式7.62mm狙撃銃は64式7.62mm小銃と見た目の違いはほとんどないがところどころ違いがあるマークスマンライフルであった。

そしてこの世界の日本軍の64式7.62mm狙撃銃は自衛隊が使っているものと違い、選別品に専用オートシアが内蔵されピカティニー・レールや比較的新式のスコープを装備するなど狙撃に特化していたり近代改修がなされていた。


二人はディーズに連れられキャンプのすぐ近くにある小川にやってきた。


「あ、あのー...それで何かご用でしょうか?」


「お前はここえ何しに来たのだ?」


「さっき言った連れの」


「それは建前だろう。本当の目的があることは何となくだが察している。おそらく異世界人なのだろう?」


「わかってて入れたのかよ...」


「...それでどうなんだ?話す気があるのか、無いのか?」


「...えっとですね。話すと長いのですが....」


恵一は包み隠さず打ち明けることにした。


「ということで食糧の支援と流行り病の防ぎたいので日本の管理下に入って欲しいということなんだよ。もちろん自由を奪う気は毛頭ない。これからは隣人としてより良い関係を目指そうって話な訳で」


「...」


―さて、どう出るかな。この人もトゥナス侯爵代理と同じで話が分かる相手のようだが...。


「...難しいな」


「やっぱり敵対心はあるよね」


「というより恐怖心と言った方がいいな。我々は異世界の軍勢の圧倒的な力を見た。それを再度振るって来るのではないかと心配なんだ」


「はぁ、ちなみにだけどラビアンのこの部族はどういった形で日本と出会ってるの?」


「お前も異世界人だろう?なら知っているはずじゃないのか?」


「まあ、俺は関わってなかったし諸事情でその件はまだあまり知らないんだよね」


「そうなのか?ここに来る異世界人は皆征服に来た兵隊共かと考えていたが」


「よく言われる。でも全然違うんだよね。良かったら教えてくれないかな?何があったのか」


「さっきとは打って変わったようにペラペラしゃべる奴だな。いいだろう。その方がこちらの事情をよく理解できるしな。お前の言うニホンとやらが異世界からやって来た時の話をしてやろう」


ディーズは話し始めた。

改稿するかもです。

ギャグって難しいし書けるギャグのレパートリーが乏しすぎる...。


余談

けものみち、いいぞーこれ。

ヘテロゲニア リンギスティコ、モンスター娘のお医者さんもいいぞー。

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