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地球側の様子


キャンプ・新地から50km内にある仮設の埠頭


ここは日本から派遣されている日本海軍とアメリカ合衆国から派遣されているアメリカ海軍の艦艇が停泊する仮設の軍港があった。


ワスプ級強襲揚陸艦


甲板ではF-35Bが発艦準備を行っていた。


「スタンバイ」


「Go」


F-35Bは甲板を滑走して200m以内の滑走で空に飛びあがった。

エレメントを組む僚機も続いて発艦し、空へと昇って行った。


今現在、キャンプ・新地では仮設の野戦飛行場が設置されてはいるものの戦闘機が飛び立てるような舗装滑走路は建設中であり、もっぱらC-130やヘリしか運用されていない。

そのため哨戒、制空、航空支援はすべてワスプ級に搭載されたF-35Bが担当している状態であり、言わば出張航空基地として使われていた。


恵一が最初に見た戦闘機はこのワスプから飛び立ったアメリカ海兵隊のF-35Bだったのだ。


ワスプから少し離れたところにはロサンゼルス級原子力潜水艦すら係留されていた。



アメリカ合衆国ワシントンD.C. ホワイトハウス


「それで、日本の議会はどうなっているんだね?」


「相変わらず紛糾しておりますが近いうちに議会で採決に入ると予想されます」


「そうか、ではいよいよだな。私はてっきりもう少しスムーズにいくもの考えていたが」


「仕方ありません。アフガニスタン紛争以来、日本国内では対テロ戦争に対しての懐疑論が渦巻いていたんです。あの戦争では日本軍も100名に上る戦死者を出しているので我が国ほどではないにしろ、それなりのトラウマが植え付けられているのですから当然です」


「それもそうだな。だがそれでも日本には俄然とした対応を期待しよう。ならず者には相応の罰を与える。そうでなければ国家のあり方が問われるし、日米同盟の今後にもかかわる。それにスクエア(陣)の出現で繋がった新世界を見据えて広い視野で物事を考えてもらいたい。あの世界の資源や情報、オブジェクトは地球の今後を大きく左右する代物だ。我が国の意思もくみ取って行動してもらわなくては困るよ、ハハハ」


「その通りです、大統領閣下。実はその件でキーパーソンになりそうな人物が日本政府にいるのです」


「誰だね?」


「山本正十郎という日本政府の安全保障首席補佐官です」


「その人はどんな男なんだね?」


「経歴は日本陸軍退役中将で、湾岸戦争時には日本陸軍第4機械化歩兵師団の一番槍の前線指揮官としてアル・サディー・フセインのイラク軍に大打撃を与える功績をあげています。当時の我が軍でいう第2機甲騎兵連隊のマクマスター指揮官のような人物です」


「ほう、陸軍のエキスパートか。その人物が今回、何をどうすると言うんだね?」


「どうやらかなり野心的な助言、提案を正村首相に行っているようです。しかも彼の娘は参謀本部事務官で今回、我が軍の事務方との調整役です。つまり彼は我々の意向の代弁者というわけです。なんでも我々の考え方に共感して代弁をかって出たとか」


「面白い男だね。お手並み拝見といこうじゃないか」



日本国東京 首相官邸内の国家安全保障会議議場


首相や各大臣、総参謀部長などが出席していた。


「以上が今回の総参謀部事務局作戦課が作成した新手の勢力の接近に対応したプランです」


参謀部長の出した資料に大臣から意見が飛ぶ。


「この対応案、改めて資料を見ているとやはりいささかやりすぎではないかと思うのだが。もっと穏便に事を運べないのかね?」


「今のところ向こうとのコンタクトができておらず、対話の模索が難しい現状があります。直近では有力な現地協力者を幾人か確保していますが、今の段階で彼らに協力を取り付けるのは難しいかと。ですので軍事作戦のプランをまず説明させていただきました」


「それはわかった。問題は国会に持ち出せばどれだけ荒れ狂うか目に見えるということだ。野党は審議再開を手ぐすね引いて待っている。これ以上、支持率にかかわるようなことが続けば政権の維持が危うくなる。そもそも占領まで行う必要はないだろう」


「総理。総理はやはりこの案で行くと?」


「...私もこの案を追認したいと思う」


「やはりアメリカからの圧力なども考慮に入れてでしょうか?」


「確かにアメリカの意向もあるが今回は軍ができると言っているんだ。万全を期すためにも先制攻撃も致し方ないと思っている。当然、単独での先制攻撃となれば国民の反発は必至だ。だが比較的安全かつ速やかな対応を考えた時、軍事オプションも真剣に考慮しなければならないだろう」


首相の視線が山本補佐官に向く。


「山本補佐官、今回の件とこれから話し合う新橋事件の実行勢力に対する対応策。君の意見は大変参考になった。それでだ。軍事作戦については重々検討するが当然のこととして平和裏に解決できることに越したことはない。安全を確保しながら対話し、確実に問題を解決できる案も検討したい。どうかね?」


補佐官は問題ない様子で返答する。


「はい、十分可能と考えています。現地協力者の活用を積極的に行いこちらの意図と意思を明確に伝えることが重要になるでしょう。またその方向へ持っていく時にインテリジェンスを活用した工作を行うとより確実性が上がります。さらに踏み込んだ対応によっては最大限の成果も期待できます」


「なるほど」


他の大臣が補佐官に問いかける。


「補佐官、君のやり方はいささか性急に過ぎないかね。ベトナム戦争や湾岸戦争、アフガニスタン紛争でもこれほど我が国がここまで何かをしたことはない。日本は敗戦国だ。日本の防衛を担うアメリカに寄り添うのはわかるがこちらが主体になって戦争を主導するのは筋が通らないとまではいかないが過去の反省を踏まえれば違和感を覚えざるを得ないよ」


「もちろんです、大臣。ですからこの会議ではそういった観点からも慎重に議論することが重要になるでしょう。総理、議論の方向性はそれでよろしいでしょうか?」


「もちろんだ」


「ではどのように対話する検討していきましょう」


そんな話が進む議場の脇にいる別の大臣は聞こえないようとても小さな小声を漏らした。


「ふん、A級戦犯の家の出の分際で偉そうに...」


この世界の日本の行方が話し合われていく。

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