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最初の異世界交流?3

「きゃああああ」


「うあああああ」


町中から悲鳴や叫び声が響き渡る。


「こ、来ないでえぇぇぇ!!!」


女性がそう叫ぶも襲っているドラゴンには関係がない。

ドラゴンは地面に着地した瞬間に女性をバクりと噛みつき飲み込んでいく。

その際千切れたと思われる腕や足が地面に血だらけで落ちている。


向こうではドラゴンの火で火だるまになった男性が方向もわからずに逃げ惑い、建物の壁にぶつかり倒れこむ。

そして動かなくなり火が収まったところで歩いてきたドラゴンが男性の匂いをクンクン嗅いだ後、またバクりと噛みつき飲み込む。


まるで地獄絵図だ。


「皆さん早く!」


小さな丘の上にある城の城門では先ほどの高貴な女性が城へ逃げ込む領民を誘導していた。


「野竜が来るぞ!」


「アスリー様、城へ!」


女性は歩くのがおぼつかない民を引っ張って城へ連れていく。

そして城内に入ったところでいよいよドラゴンが城を襲い始めた。


「門を閉めろー!」


「まだ外に民が!」


「もう無理です!」


兵士が門を閉めると城の外の人々を襲い始め、さらには城に焼き討ち攻撃を加え始めた。

兵士たちは城壁や城の上に設置されたバリスタでドラゴンを狙い、渾身の一撃で放った矢がドラゴンに刺さり1匹を打ち落とすことに成功する。

しかし次の瞬間、バリスタはドラゴンの炎によって焼かれた。


兵士たちはとにかく弓矢で攻撃するするが効果は芳しくない。

また交戦が続く中で城の至る所から火の手が上がる。

このままでは城内の柱などが焼けて倒壊する恐れもある。


その間、高貴な女性は領民に寄り添っていた。


「ありがとうございます、アスリー様」


「いえ、これも領主一族たるものの務めです」


彼女はそう言うと場を離れると城内の廊下を歩き始める。


「なぜ、なんでこんなことになるのですか...。異世界に繋がった時から全てが崩れ始めた」


外でドラゴンの鳴き声が聞こえる。


―もう我がトゥナス侯爵家に残された兵は数えるほどしかいない。しかも飛竜師もあの忌々しい戦争でほとんど失われ野竜を駆除する術すら残されていない。全ては陣の向こうからやってきた異世界人の軍勢によって...


女性は歩くのを止め立ち止った。

それに呼応するように城の一部が崩れるような音と振動がする。

既に城内は煙の臭いがひどく充満している。


「どうやらトゥナス家はこの代でお終いのようです、父上、兄上方。私も後を追いますゆえ、しばしお待ちを...」


そこへ先ほど恵一たちが遭遇した騎馬兵たちがやってくる。


「報告します。異世界の軍勢を南の街道で確認しました!」


「それは真ですか?」


「はい。おそらくここへ攻め入りに来たものかと...」


「わかりました。ですが対応する余裕なんてありません。あなた達も城の守備に回りなさい」


「ですがアスリー様、奴らはもうすでに城壁までやってきているのです!何か対応を...」


「じょ、城壁に?」


女性は通路を小走りで移動し窓を見つけて戸を開けて外をうかがう。

下に見える城壁の外に数台の装甲車が見えた。

だが次の瞬間、城門が何度も大きな音と煙を上げた破壊され、装甲部隊が城内に入っていく。


女性はそれを見てただただ言葉を失う。



87式偵察戦闘車


自衛隊でいうところの87式偵察警戒車と同一である87式偵察戦闘車の砲塔に搭載されたエリコンKB 25mm機関砲で城門を砲撃して破壊、装甲車部隊の一部がそのまま城内に入りドラゴンに対して即攻撃を始めた。


最初に87式が城の上部でたむろするドラゴンを主砲でとらえた。

仰角に余裕がある87式はそのままガス圧機関砲の連射力を生かし高連射で25mm砲弾をドラゴンに叩き込み発破音と共にそれらを殺処理した。


次いで僚車の83式APCの銃架に搭載されたFN MAG機関銃やM2ブローニングを兵士が目視したドラゴンの生き残りに向け発砲する。

一匹、また一匹と建物にとまっていたドラゴンが地面に落ちていく。


そして滞空していたドラゴンは銃声や新手の強敵に驚いたのか退散する様に飛び去る。


攻撃時間は2分と掛からなかった。

部隊長は反撃を受けないよう前もってどのように攻撃するか指示を出し、結果として迅速に目標を掃討することに繋がったのだ。



その様子を始終見ていた女性は現れた異世界の軍勢をまじまじと見つめ続けていた。


―中型以下とは言え、まともな装備と数がなければやり合うのが難しい野竜をあの短時間で殲滅した?!しかもあのやかましい音をたてた瞬間野竜がバタバタと落ちて死んでしまうなんて、魔術でも使ったというの?見たことも聞いたこともないやり方だわ。魔導士の術式とは根本的に違う。得体の知れない強力な魔術...。


女性は考え続けた。

ドラゴンを一掃した装甲車部隊は戦闘終了時の位置に停車しエンジン音だけをたてたまま動かなかったことに着目する。


―襲ってこない?敵意がないとでもいうの?異世界の軍勢はこの地を征服しに遥々この世界に進軍してきたではないか、一体...。


そう考えている最中、83式APCのハッチが開いて異世界人の女性が姿を現す。


「おい、いきなりお前何やって...」


そんな異世界語が声がかすかに漏れる中、女性は短く城の者たちに呼び掛ける。


「ハジメマシテ、ワタシノナマエハ、山本デス!ホカノセカイ、カラ、キマシタ!ミナサント、オハナシ、シタイデス!」


乙十葉がそう呼びかけると別のハッチから釈然としない様子の恵一と怖いもの見たさな様子の宇佐美も顔を出す。

続いて他の車両のハッチから続々と軍人たちも顔を出した。


互いにじっと見合い続けたのち城主である女性が口を開いた。


「私はトゥナス侯爵家当主代行、アスリー・トゥナス!話の場を持ちたいとの願い、承知した!参られよ!」


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