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悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”僕達のイベリスをもう一度”ゲームスタート
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入学辞退と、もう一つのハプニングイベント(前編)

 イヴの主治医であるセロトーニとグランが、治験2年目を迎えるイヴの環境に選んだ条件は3つ。


 ①治験を受ける場所は、人が多い場所。

 ②今までの生活と異なる生活を過ごせる場所。

 ③痛みを感じた場合、すぐに休める環境であること。


 この3つの条件に当てはまる環境に、学院入学を推したのは()()()()()()()()()()()()()だった。何故なら学院ならば、学生や教師達が一定数集まっているし、皆、身元がわかっている者ばかりであることや警備の者もいるので、安全性も保証されているというのが彼らの言い分だった。


 イヴは今まで学校というものに一度も行ったことがなく、()()()()()()()()()()()()()()()身であるものの仕事は実家でしているために、リン村から出ることもなかったから、他国での学院生活はイヴにとって、異なる生活を過ごせる場所だと言えるだろうとも主張した。今までイヴは、マーサ達の家事手伝いの他に父であるグラン達の研究……”鎮痛剤”開発の助手や、セデス達のしているスクイレル商会の商品開発の仕事も手伝っていた。


 ようするにイヴは家業……お家のお手伝いを手伝っているのだが、今の仕事場である実家では①と②の条件にあてはまらない。だからといって、都会でどこかの薬局に勤めた場合、今までのように片頭痛を起こしたからと簡単には休めないし、責任感が強く、生真面目なイヴは痛みを発症させても、無理をして仕事を休まずにいることが容易に想像できたので、他の場所での仕事勤めは皆に猛反対されてしまったのだ。


 その点、学院生活なら、痛みで学院を休んでも誰にも負担がかからないため、責任感が強いイヴでも遠慮や無理をしないで休める。……と皆が()()()()()ので、イヴはそれならと素直に学院の試験を受けたのだが……。





「よく考えたら学院は、自分の目標のために勉強を学ぶ場所なんだから、他の人の人生がかかっている大事な場所に、私が割り込んだら迷惑になってしまうわ」


 イヴは城勤めなどの出世は希望していない。学院は平民にとっては、出世への道に繋がる入り口なのだから、それを望んでいない自分が入ってはいけないところだ。


 イヴの保護者達は、イヴを愛してくれている。とても愛してくれている。すっごく愛してくれている。ただイヴの保護者達は時ど……度々……イヴへのあふれかえるほどの愛情を思いも寄らぬ方向へと暴走させることが……多々あったのだ。


 例えば……サリーは平民になったイヴ達親子を美しく着飾りたいからと、バッファー国中の民の衣服を派手に着飾れるようにと画策し、それを実現させてしまった。例えば……アイビーはリン村の子ども達に、イヴの短い髪やハチマキ姿をからかわれないようにとサリーと組んで、髪型の自由や髪の染色文化の多様化を衣服の多様化と同様、バッファー国中に広めてしまった。


 他にも……乗り物酔いをしやすいイヴが大人になったときに、どこの馬車に乗っても乗り物酔いをしないようにと、国中の馬車を安全帯付きの馬車にしてしまったり、小さい頃のイヴがアイに教えてもらった”忍者”になりたがっているのを知った皆は、イヴが他の子達と忍者ごっこ遊びが出来るようにと、国中の子達に忍者体操を広めてしまったり、可愛いイヴが安全に外で遊べるように、国中の犯罪者を騎士団詰め所に放り込んだり……と、イブの保護者達の過保護や溺愛は、イヴの周辺だけには留まらずに、国中に影響を及ぼしてしまうことが頻繁にあったのだ。


 そんなイヴ中心の考え方をする保護者達だから、学院の本来の意味を忘れて、学院を薦めてくれたのだろうけど……よく考えたら、ちょっとどころか、すごく他の受験者に失礼で、迷惑な行為だとイヴは気づいてしまったのだ。


「私、()()()退()をしてきます」


「え!?お嬢様?」


「だって治験は、学院でなくても出来ますもの!」


 学院でなくとも、治験は出来る。大勢の人がいるところなら、王都だっていいはずだし、イヴの持っている()()があれば、どこでだって働けるはずだとイヴはミーナに言ったが、ミーナは慌てて、それに反対した。


「それは賛成しかねます!理性を失った男どもが、お嬢様を襲うに決まっています!こんなにお美しく、お可愛らしく、心根がお優しく育ったお嬢様を世の男どもが、放っておくわけがありません!お嬢様はまだ14才です!未成年です!まだ子どもです!そんな男達の集まる所へ行くなんて、()は許しません!()だって……許さないはずです!」


「もう、いつもミーナもミグシスも私を子ども扱いして!そりゃ私は3月生まれですから、まだ14才ですが、3月になったら15才ですし、一年経てば成人になるんです。それに平民の子は、皆、12才で独り立ちしますわ。私だって資格を持っているのは、いつだって、それが出来るようになんですよ?」


 ()()()()()()から人間の子どもになる5才になると皆、簡単な文字なら読み書きできるようになり、6才になる前に生活に困らない一般的な文字を扱えるようになる。平民の子は、家の手伝いをしながら、月に2回の寺子屋通いを12才まで続け、算術も簡単な四則計算までなら扱えるようになり、その後、家業を引き継ぐための見習いや、丁稚奉公などに出て独り立ちする。イヴは幼き頃からセデスの教育を受け、グランと同じ道を志してからは、グランとセロトーニの教育を受けて、彼らと同じ資格を12才の時に得ていた。イヴは学院の門の前までやってきて、話を続けた。


「……だから学院には行く必要がないのに、私が行っては夢のために努力している人の邪魔に……」


「「「やっぱり、ここにいた!」」」


「え?」


 イヴが振り返ると平民クラスの受験生16名が、()()()()()()で立っていた。イヴを待ち構えていた受験生達は、イヴがいなくなったことに気づいて、探していたらしい。イヴが彼等に頭を下げて、自分の事情について説明すると受験生達は一斉に、抗議の声を上げ始めた。


「ねぇ、考え直して!私、あなたと、この学院に通いたいの!あなたが私を助けてくれたのよ!とても感謝しているし、あなたと学院生活を送りたいなぁって思ってたの!」


「俺も!君の優しさのおかげで、俺は試験に全力を注げたんだ!君と友達になりたいって思ったんだ!今度は俺が君を助けられたらって思ってた!辞めるなんて嫌だよ!」


「何で君が入学辞退なんてする必要があるんだ!?辞めなくたっていいじゃないか!君と学院に通えるの僕、楽しみに思ってたのに!」


「そうよ!私も学院に合格できたら、あなたと一番の友達になろうって、思ってた!一生の親友になりたいって思ってたのよ!」


「私もよ!パジャマパーティーしたり、可愛いあなたを着飾ってみたりして、うんと愛でてみたかったのに!」


「僕は、ずっと弟と君のことを見てた。君があんまりにも頑張り屋で良い子だから、今日は弟の誘いに乗って、君に会いに来たんだ!午前中を一緒に過ごして確信したよ!君は本当に素敵だ!僕はこのまま、君と学院生活を過ごしてみたくなった!見ているだけじゃなく、実際に、この物語(世界)で君と同じ時間を過ごしたくなったんだ!


 君の傍で過ごせる学院生活は、きっと永遠とも言える長い長い僕の生きる時間の中で、唯一の貴重な宝物の時間になるって確信したんだ!僕は君に永遠の番がいても、傍にいられるだけでいいって、思ってたんだ!」


「好きな人の話でキャーキャー言ってみたり、お菓子だって一緒に作ってみたりしたかったわ!」


「私だって、あなたみたいな可愛い子は、どんな物語(乙女ゲーム)乙女(ヒロイン)でも、かなわないくらいに、魅力的な素敵な存在だって思ったわ!本当にあなたは私の()()()()()だったわ!この15年兄さんとあなたを見ていて、すっごく大好きになったの!


 今日はあなたの()がどこにいるのか、知りたくて聞きに来ただけだったのに、なんだかこのまま、あなたとここにいたくなっちゃったの!もっと、あなたを知りたいし、私の事も知って、仲良しになって欲しいって思ったの!こんな事は生まれてはじめてよ!」


「俺、学院に行ったら、君とうまいモンの食べ歩きでデートして、恋人になれたらいいなって思ってた!」


「あ、俺も俺も!!恋人枠を狙ってた!」


 イヴはいっぺんに大勢の受験生に口々にそう言われて、何をどう言われているのかわからなくなった。とにかく皆は、イヴに入学辞退を思いとどまらせようとしているらしいことはわかったので、自分の意志は

 変わらないと言おうとした時、


「ああ、8番さん!まだいてくれて良かった!少しお時間いただけますか?学院長が試験のことで話があると、あなたを探していたのですよ!」


 と学院の方から試験官がやってきて、イヴにそう言った。


「宿舎まで呼びに行く手間が省けて助かりました!」


 と言われて、イヴも受験生達も首をかしげた。


「試験が、どうしたんですか?」


「ええ、実は8番さんの試験が……そのですね、その、全教科満点だったものですから……、院長や他の教官達が……」


「「「もしかして……8番の不正を疑っているんですか!?」」」


 受験生達は試験官に、目を剥いて怒りだした。

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