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そのゲームは、乙女ゲームではありませんでした

 その乙女ゲームは、ヒロインが入学式に遅刻しそうになり、慌てて走っていると髪を結っていた母の形見のリボンが風で飛ばされてしまい、それを追いかけた先で、リボンを男性達に拾ってもらうところから、ゲームが始まります。


 ヒロインが遅刻しなければ、ゲームは始まりません。慌てて走らなければ、ゲームは始まりません。母の形見のリボンが飛ばされなければ、ゲームは始まりません。誰かにリボンを拾われなければ……ゲームは始まらないのです。


 ゲームの中のキャラクターは、プログラムで決められた行動や言動しか取れません。プログラムで決められ限られた選択肢以外の行動や言動は、キャラクターには許されていないのです。だからこそ、その乙女ゲームの中のヒロインは必ず入学式に遅刻しそうになり、母の形見のリボンは必ず男性達に拾われてしまいます。


 ……でもここは、その乙女ゲームに酷似しているだけの()()()()()なので、そこに生きる人達の行動や言動は、プログラムではありません。そこに生きる人達の行動や言動の選択肢は無限大で、彼等は自らの意志で行動することが出来るのです。


 なので悪役令嬢に転生した少女が、その乙女ゲームの悪役だと気づかないまま、自分は片頭痛だから公爵令嬢をすることは出来ないだろうと辞退することだって出来ます。


 隠しキャラであるはずの少年が、悪役令嬢だった少女を好きになり、一生をかけて守ると誓い、隠しキャラを辞退することだって出来ます。


 名前なき者(モブキャラ)だった弁護士が恋人の復讐と……衰退する国を憂いて悪役志願し、自ら、そのために策を練り、味方を増やし、謀略を張り巡らせ、その目的のために20年以上暗躍することだって出来ます。


 名前なき者(モブキャラ)だった大司教が、亡き父の復讐と……衰退する国を憂い、弁護士と共に悪役志願し、そのために策を練り、味方を増やし、謀略を張り巡らせ、その目的のために10年近く暗躍することだって出来ます。


 サポートキャラクターであるはずの修道女が、世界で一番好きだった叔母の愛した夫と娘を死に追いやり、自分を修道女にした者達への復讐と……衰退する国を憂い、弁護士達と共に悪役志願し、彼らの暗躍をサポートし、3年前から学院に潜入することだって出来ます。


 ……だからヒロインに転生した少女は、入学式に間に合うように行動することも出来ましたし、リボンを拾われないようにする選択だって、彼女は出来たのですが、彼女はそれを選択しませんでした。


 だって彼女は……知らなかったのです。彼女がスタートさせたゲームが、乙女ゲームではなくなっていたことを……。






 そのゲームは、乙女ゲームと呼ばれるモノでした。乙女ゲームとは、ヒロインが恋愛をするゲームです。その乙女ゲームは、ヒロインが入学式に遅刻しそうになり、母の形見のリボンを男性達に拾ってもらうところから、ゲームが始まります。


 ですが、そのゲームに酷似した()()()()()では、悪役令嬢に転生した少女が、片頭痛だったので、その乙女ゲームの悪役だと気づかないまま、ゲームが始まる10年も前に、公爵令嬢を辞退してしまったため、すでに悪役令嬢が、へディック国にいなくなってしまいました。


 その乙女ゲームでは、ヒロインと男性達のと身分差のある恋を進めるには、悪役令嬢の存在が必要不可欠でした。その乙女ゲームでは、どのルートでも悪役令嬢が障壁となって立ちふさがり、ヒロインが彼女に虐められるからこそ、男性達との身分差のある恋愛が進むようになっていました。


 悪役令嬢が存在しなければ、その乙女ゲームは成立しません。だから悪役令嬢のいなくなった、そのゲームは乙女ゲームでは、なくなってしまったのです。


 今、へディック国にいるのは、復讐にとても長い時間をかけた一人の男と、彼と同じように復讐に命をかける者達です。彼らはその乙女ゲームでは名前なき者(モブ)でしたが、悪役がいなくなったへディック国で復讐を誓い、悪役志願したため、この国を舞台としたゲームは、()()ゲームとなってしまいました。





 その乙女ゲームは、ヒロインが入学式に遅刻しそうになり、慌てて走っていると髪を結っていた母の形見のリボンが風で飛ばされてしまい、それを追いかけた先で、リボンを男性達に拾ってもらうところから、ゲームが始まります。


 ヒロインが遅刻しなければ、ゲームは始まりません。慌てて走らなければ、ゲームは始まりません。母の形見のリボンが飛ばされなければ、ゲームは始まりません。誰かにリボンを拾われなければ……ゲームは始まらないのです。


 その乙女ゲームは復讐ゲームに変わりましたが、そのことをリアージュは知りませんでした。……知りませんでしたが、リアージュは入学式に遅刻したので、ゲームは始まりました。リアージュはリボンを拾われてしまったので、そのゲームは始まってしまったのです。


 その乙女ゲームの名は”僕のイベリスをもう一度”と言いましたが、今リアージュがスタートさせたゲームは、乙女ゲームではありません。



 ”名前なき(モブである)彼らの復讐”をスタートさせてもいいですか?



 はい  ←

 いいえ



 決まりましたら、” ← ”のカーソルを選択し、スタートボタンを押して下さい。


 ……とは、誰もリアージュに尋ねませんでした。だって、ここはゲームの世界に酷似しているだけの……現実(リアル)の世界でしたから。








 ここは3人の兄弟神が、それぞれ一つづつ、自分達の見たい()()を父神の創造した世界に再現させることを許された現実の世界です。


 3人の内の一人の神様が選んだのは、”僕のイベリスをもう一度”という名前の乙女ゲームです。僕イベは、乙女ゲームです。そして神様が見たいのは、もちろん復讐の物語では……ありませんでした。このままでは、神様は見たい物語が見られません。


 でも、何も問題はありませんでした。”僕のイベリスをもう一度”は、何の問題もなく、既に始まっていたのです。何故なら……。



 その神様の見たい物語のスタートはリアージュが、まだぐっすりと眠っていた時間……入学式が始まる5時間も前から、すでにスタートしていましたから。


 その神様が見たい物語の()()()()()()は、早朝4時から始まった、()()()()()()()()()()()()()に、()()()()()()()果敢に立ち向かっていたのです。

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