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リアージュのサポートキャラ(前編)

この回は、サポートキャラクターのルナーベルによる説明回です。


 ※Qはリアージュの質問です


(Q・建物が前より(ゲームより)綺麗なんだけど?)


「ここの学院は王の住む城よりも綺麗だと人気があります。この白亜の建物は学院が男女共学になるときにカロン王が亡き親友を偲んで、彼の屋敷を真似て建て直すように命じ作らせたのですよ、リアージュさん」


(Q・上下貴族は校舎と寮が別だったのでは?)


「はい、昔は上級貴族と下級貴族は校舎も寮も建物は別々でしたけど、男女共学となったので、上下貴族を同じ建物にする必要性が出たのです。ここだけの話ですが、この10年ほどはへディック国は赤字続きで、さらに建物を増やす費用がなかったというのが本当の事情のようですが……」


(Q・じゃあ、校舎で上級貴族に会えるの?)


「校舎は入り口が分けられていて、自分の教室に行く直通の階段があります。校舎内で上下の階には行き来が出来ない構造で、上下貴族が顔を合わせることが出来ないようになっています。校舎は一番上の3階がリアージュさんの下級貴族クラスです。同じ階にはダンスホールや図書室、音楽室や簡易の聖堂、下級貴族の担任室があり、一日の授業がこの階だけで、ほぼ済ませられるようになっています。


 真ん中の2階が上級貴族クラスですが防犯の観点から、違う階の者には教えられない規則になっていますので、中のことは下級貴族であるリアージュさんにはお伝えできません。一番下の一階は平民クラスです。一階には各クラス専用の食堂も併設されています。同じ一階にありますが、ここも中が仕切られて行き来は不可能な構造となっています。防犯のため、校舎の窓は全て曇りガラスとなっており、外からでは中の様子は見えないようになっています。


 校舎の真裏に講堂がありまして、式典やダンスパーティー、剣術大会などは、そこで行われます。上下貴族が顔を合わせるとしたら、この機会くらいでしょう。ちなみに講堂のさらに裏は中庭と、男子学院生用に剣術や体術を学ぶ武道場が設置されています」


(Q・じゃあ、寮でも上級貴族と会わないの?)


「はい、学院の正面玄関に向かって右の男子寮、左の女子寮の建物の居住フロアも身分で分けられ、ここも行き来が出来ない仕様になっています。男女共に寮の設備は同じで、寮の一階は寮監室や食堂、図書室、談話室、応接室などがあります。鍛錬後の汗を流すための共同浴場もありますが、実際に使われているのは男子寮のみで、女子寮の共同浴場は現在閉鎖中です。


 文具やちょっとした生活用品が購入できる購買室は朝の7時から8時30分、昼は14時から18時30分まで営業しています。ここでは洗濯屋に、自分の衣類の洗濯を依頼できます。各自の部屋に備え付けられた袋に入れて依頼できますが、洗濯屋の依頼は朝しか出来ませんので、注意が必要です。また、まれに侍女のいない貴族の方が掃除屋に依頼することがあります。掃除の依頼もここで出来ますが、二日前に予約しなければなりませんので、注意が必要です」


(Q・寮の大人がムカつくんだけど、クビに出来ないの?)


「寮監や厨房のコック、洗濯屋も掃除屋も購買の商人も学院長が直接、雇用契約を結んだ男爵の血筋の者が請け負っています。その理由は学院生の中に、上級貴族や王族がいるからです。


 上級貴族への適切な対応が、使用人教育を受けていない、ただの商人をしている民では難しいため、貴族籍を持ちながらも平民として暮らしている者に学院長が、その対応を任せようとお考えになったからです。ですから、どれだけリアージュさんが気に入らないと思っていても、彼らを辞めさせることは出来ません。


 学院生達の住むのは2階からで、それぞれの居室は広く、中は浴室もトイレも完備され、簡単な料理も出来る、備え付けの小さな台所もあり、身分が高い貴族が使用人を連れてくることから、学生用と使用人用に2部屋あるのが標準設備となっていると、入寮のしおりに書かれています。なお、平民の方は……」


(Q・そんなのより、公爵令嬢にはどこで会える?)


「え?平民に興味はないから、公爵令嬢がどこにいるのかを教えてほしい……ですか?それにはお答えできません。最上階は教師の居住フロアとなっていて、その直ぐ下の階は上級貴族の学院生だけが居住を許されたフロアですが、これも防犯の観点から、違う階の者には教えられない規則になっていますので、下級貴族のリアージュさんにはお伝えできません」


(Q・どうして授業で勉強をしないの?楽で良いけどさ)


「学院という名前なのに、どうして勉強がないのかがリアージュさんは不思議なんですか?元々貴族は5才までに読み書きや簡単な行儀作法を修得し、勉強は5才から12才までに各家庭で貴族教育、淑女教育等を家庭教師から教わるので、本来なら学院での勉強は必要ありませんよね?ここが男女共学になる前は男子校だったことは、ご存じですか?男子校だった頃の学院の目的は、城務めを期待されている優秀な貴族令息の育成だったそうです。だから当時はさらに高度で、より専門的な教育を学生達は学んでいたのだそうですよ


 ……ですが10年前に死病が大流行したことや、カロン王に嫌われ処刑されたり、悪政に耐えられず、民や少なくない数の貴族達も国外へ逃げてしまいました。大勢の貴族がこの国から消え、貴族社会の勢力図が大きく変わりましたことは、リアージュさんはご存じでしょう?……え?ご存じありませんでしたの!それはまぁ、何とも……、何て言うか、世俗に疎くていらっしゃったのですね。……つまりですね、病気や悪政で激減した貴族の力が衰退し、病や処罰により、配偶者を失った貴族や、婚約者を失った令息令嬢が多数出たのです。


 そのため、カロン王が集団見合いの機会を多く得られる集団生活の場を提供してやろうと、気まぐれを思いつかれて数年前から、学院を男女共学に……。それから、ここは学院という名の、国がお膳立てした集団見合いの場となったのです」


(Q・見合いって?婚活のことよね?)


「コンカツ?よくわかりませんが、ここに来る上下貴族の令息令嬢は、言葉は悪いですが()()()()と見なされた方が集められているのです。だから学院の上級貴族と下級貴族のクラスの者は、何らかの事情で、未だ誰も婚約者が決まっていない者ばかりが集められて出来たクラスなのです。


 彼らは朝の2時間の授業で見合いの進め方、相手の考え方を知る方法や、気持ちの伝え方等を学びます。朝のクラスメイトとの茶会は模擬的見合い……、お見合いの練習を兼ねています。そして午後は、実家から持ち込まれた、見合いの茶会や乗馬、夜会に出かけて、多くの者と知り合い、何とか婚約者や配偶者を得ようと励むのです。


 もちろん、朝から乗馬や茶会等の社交がある方もいますので、上下貴族の授業参加は自由形式で、欠席される方も多いです。なお、お休みするときや、欠席早退等の連絡だけは必ず担任に事前にお伝え下さい。」


(Q・学院生の皆が、相手を探しているの?)


「いえ、例外のクラスは1クラスあります。カロン王が命じて作らせた平民クラスです。この10年間であまりに貴族が激減したため、公の見合いの場に学院を使えばいいと、男女共学を思いつかれたカロン王に彼の取り巻きが、貴族を増やしたらどうだろうかと助言をしました。


 この助言を聞き入れたカロン王は、今まで賄賂をくれた者や、後々自分に色々便宜を図ってくれそうな金持ちの平民を貴族にしようと、彼らの子どもをここに入学させて、貴族にするために、貴族教育や淑女教育を学ばせようと考えました。


 身分に厳しい国であるにもかかわらず、平民を貴族にするなんてと、国に残っていた貴族達からカロン王は多く反感を買いましたが、またまたカロン王の取り巻きの貴族たちの助言により、元から貴族である彼らの爵位を一部例外を除き、全体的に()()()()()()をすることで、彼らの怒りを抑えることに成功したそうです。ちなみに、この爵位底上げで、カロン王の取り巻き貴族は皆、上級貴族になることが出来ました。貴族の勢力図はさらに変わり、彼らが今では、貴族達の頂点にいます。彼らの言葉に従い、カロン王は学院を男女共学にするときに平民クラスも作ったのです」


(Q・なら平民は見合いはしないのね?)


「はい、平民クラスに見合いはありません。平民クラスの入学目的は見合いではなく、本来の学院としての目的である、学力の向上なのです。ですから平民クラスでは午前・午後とも普通に授業があり、教室の中には、黒板や各自の机も椅子も用意されています。


 なお、()()()()()()()が学院内の()()の者に()()することは、校則違反として厳しく禁じられています。これは貴族の青い血が汚れると、貴族の親達からの激しい拒絶がありましたし、元々貴族院法でも厳しく禁じると書かれている事柄です。ですので、どうあっても平民の方と婚姻をしたいと思っても、()()()()()()でもしない限りは無理でしょうね。貴族院法を変えることが出来るのは、王だけですから」


(Q・苛ついたときは、ここの平民を嬲ってもいいよね?)


「この学院に入学した平民は貴族予備軍として、一応、()()()()()()()()にいると位置づけされております。なので学院内の平民を、メイドや侍女や侍従として雇うことも、自身のストレスの発散のための道具として扱うことも、一夜の遊び相手や、言葉は悪いですが、妾やツバメなどの相手として学院内の平民の者を求める等のことは、()()()()()()()()()()()()()


 学院内にいる平民は上下貴族……、例え王族でもその求めを拒絶出来ると、カロン王が()()()()()()()で許可を出しています。そして学院長も学院内での貴族と平民の衝突を避けるために、徹底して貴族と平民が顔を合わせないように階を分け、行き来出来ないようにし、自分のクラス以外の教室の行き来も校則で禁止しています」


(Q・じゃあ、苛ついても鞭打ちしに行ってはダメなのね!つまんないから、平民クラスには頼まれたって行かないわ!他にクラスはないのよね?)


「もう一つクラスがあります。それは特Aクラスと名付けられたクラスです。これはカロン王が、男女共学や平民を学ばせると決めた時に学院長が独断で、王侯貴族・有力者に対して配慮した……忖度したとも言えるクラスで、特別に護衛が必要な者や、高貴な身分の学院生やVIP待遇に相応しい能力を持った才能がある学院生をそこに集めています。


 しかし、今ここに在校している王侯貴族や有力者の男子学院生達は、特別扱いは嫌だと言って、彼等は上級貴族クラスに在籍していますので、今、特Aクラスにいるのは……、これも防犯上の理由でリアージュさんにはお伝え出来ません」






 本当にリアージュのサポートキャラである、ルナーベルは物知りだった。……でも情報量が多すぎて、リアージュには全てを把握出来なかった。何度聞き直しても覚えられず、しかもここは現実の世界だから、保健室の先生でもあるルナーベルは、リアージュ以外の学院生の相手もしなければならず、上級貴族が来ると、リアージュは退出しなければならないのが、リアージュには我慢ならなかった。


(これだから男爵令嬢なんて嫌なのよ!)


 と、腹を立てながら一旦退室し、彼等がいなくなってから、また保健室に戻った。


(まだ行事イベントの説明を聞いていないもの……)


 次は親睦会があったはず!それを聞かなきゃとリアージュは、自分のサポートキャラのルナーベルに、それを尋ね……、またゲームと異なる、現実(リアル)の世界にうんざりするはめになった。



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