その乙女ゲームのヒロインも転生者でした(前編)
※この回は、ある転生者が乙女ゲームが始まる前に、日本語で思い出せるだけ日記帳に綴った、という形式で書いています。長文になり申し訳ありませんが、お付き合いください。
読むのが面倒な方に簡単な説明を少し。攻略対象者は通常ルートだと4人、悪役令嬢のイヴリンと隠しキャラのミグシリアスを入れると6人になり、ルナーベルはサポートキャラだということだけ、頭に入れて置いて下さい。
その少女は、学院入学一週間前に高熱を出した。熱に魘された後、少女はあることを思い出した。
(こ、ここは私の一番好きだった、あの乙女ゲームの世界!それに……やったー!私、ヒロインに転生しちゃってる!)
ベッドで寝ていた少女は早速、鍵の掛かる日記帳を取り出し、『 』←ここにはあの乙女ゲームの名前を書くこと!……と少女は最初のページにそう書いた。何故なら少女は前世で大好きだったはずの、その乙女ゲームの名前が思い出せなかったからだ。カギカッコだけを書いた後、次のページをめくった少女は、自分が覚えているゲームの内容をそこから書くことにした。
「このメモ書きは、私がハッピーエンドを迎えるための覚え書き!日本語で書くことにするから、他の人には読むことは出来ないはず!」
そうブツブツ独りつぶやきながら、少女はひたすら書き綴りだした。
〈その乙女ゲームのあらすじ〉
国立学院に入学する男爵令嬢の私は、胸をときめかせすぎて、大事な入学式に遅刻する。大好きなお母様の形見のリボンをうっかり風に飛ばされた私は、それを追いかける。リボンをつかまえてくれたのは、この国の王子様と3人の生徒会役員達!勉強や淑女教育など、学院生活を前向きに頑張る私に上級貴族の彼らは次第に惹かれていく。そしてそれをこころよく思わない悪役令嬢の虐めが始まり……。一年後の卒業パーティーでハッピーエンドを迎えられるように、さぁ、素敵なレディを目指して、ゲームスタート♪
〈その乙女ゲームの登場人物〉
男爵令嬢……この乙女ゲームの主人公。男爵令嬢。私!豊かなピンクの髪をカールさせた髪型に透き通るような水色の瞳が愛らしい華奢な美少女。幼少期に母親を亡くしている。厳しい父の期待を受けて、国立学院に入学が決まるが、前日の緊張のあまり寝不足で入学式に遅刻する。明るく前向きな性格が攻略対象者達の関心をひく。
エイルノン王子……攻略対象者。王子様。国の第一王子。国立学院生徒会会長。金髪碧眼の王道美形ヒーロー。幼少期から我が儘し放題で何でも望んだ物を手に入れていたことから俺様な性格に育つ。実は母親が伯爵家出身なので、貴族の厳しい身分差の処遇に対して、疑問を抱いている。最初は、王子様もしくは生徒会会長呼びで、ゲームは始まるが、(どちらかはランダムで、その法則は不明)好感度が75%を超えるとエイル呼びを強請られる。
→エイルノン王子とハッピーエンドを迎えると、身分差を超えたシンデレラハッピーエンドとなる。男爵令嬢はエイルノン王子への愛を支えに王妃教育を頑張り、ラストのスチルは城の大聖堂でのウエディングドレスでのエイルノン王子との誓いのキスをする姿。好感度MAXの時に出る台詞は、『僕は誰よりも強くなるから、僕だけの女神になって……』
トリプソン……攻略対象者。侯爵家跡取り。国の騎士団団長の息子。国立学院生徒会副会長。赤茶色の髪につり目気味の金色の瞳のワイルド系ヒーロー。幼少期から祖父に鍛えられていたため、筋骨隆々の強面に育ち、性格も寡黙な武人。実は見た目に反し、小さく可愛い物が大好きで、秘密だがウサギのぬいぐるみを持っている。最初は、騎士団長子息様もしくは生徒会副会長呼びで、ゲームが始まるが、(どちらかはランダムで、その法則は不明)好感度が75%を超えるとトリプソン呼びを強請られる。
→トリプソンとハッピーエンドを迎えると、身分差を超えた玉の輿婚ハッピーエンドとなる。男爵令嬢は侯爵夫人と騎士団所属の騎士の妻という、二足を頑張ることとなる。ラストのスチルはトリプソンの武者修行を兼ねた、ハネムーンへの出発のために、馬に二人乗りしている姿。好感度MAXの時に出る台詞は『俺のウサギ、どうか俺だけの可愛いウサギになって……』
エルゴール……攻略対象者。教会大司教の跡取り。国の国教となっている宗教の大司教の息子。国立学院生徒会書記。フワッフワの天然パーマの黄緑色の髪と垂れ目気味の緑の瞳が愛らしい、小動物系ヒーロー。攻略対象者達の中で一番背が低く、線が細い。幼い頃、神子姫エレンとして、舞を舞っていた。儚い見た目に反し、信仰心に燃えており、将来の夢は、魔性の者と忌み嫌われる黒髪黒目の者や顔に怪我を負った者達への差別をなくすこと。最初は、大司教子息もしくは書記の先輩呼びで、ゲームは始まるが、(どちらかはランダムで、その法則は不明)好感度75%を超えるとエルゴール呼びを強請られる。
→エルゴールとハッピーエンドを迎えると、夫婦共に信仰心に溢れるハッピーエンドとなる。男爵令嬢はエルゴールを支えるため、教会の聖女の勉強に励む。ラストのスチルは城の大聖堂の壁面を二人で手を繋いで見ている姿。好感度MAXの時に出る台詞は、『僕があなたを愛することは、神様でも止められない』
ベルベッサー……攻略対象者。侯爵位を持つ宮廷医師の息子。国王の御殿医の息子。国立学院生徒会会計。青い髪にルビー色の瞳で銀縁眼鏡のクール系冷静ヒーロー。攻略対象者の中で一番の長身。父親を尊敬し、将来は医師を目指している。最初は、宮廷医師子息もしくは会計の先輩呼びで、ゲームは始まるが(どちらかはランダムで、その法則は不明)好感度75%を超えるとベル呼びを強請られる。
→ベルベッサーとハッピーエンドを迎えると身分差を超えた玉の輿婚ハッピーエンドとなる。男爵令嬢は侯爵夫人と医師の妻という、二足を頑張ることとなる。ラストのスチルは、男爵令嬢のお腹にベルベッサーが聴診器を当てて、二人で微笑みあう姿。好感度MAXの時に出る台詞は、『私は世界一の医師を目指すけど、君への恋の病だけは一生治せそうもない』
イヴリン……悪役令嬢。後に攻略対象者。(4人の攻略をハッピーエンドクリア出来た時に、隠しルートが解放され、次回ゲーム開始時から彼女も攻略対象者になる)シーノン公爵令嬢。王子エイルノン王子の婚約者。国立学院風紀委員。ヒロインの同級生。銀色の髪をきっちりと高く結い上げた、きつい目つきの青い瞳のクール系美少女。別名は社交界の銀色の薔薇←(隠しルート前)銀色の妖精姫もしくは銀色の天使←(隠しルート解放後)と社交界では呼ばれている。
抜群のプロポーションで、胸の形も尻の形も羨ましすぎる、私と対局の体型の持ち主。多くの使用人を顎で使う高慢で卑屈で嫉妬深い、我が儘な性格。冷酷無比で高慢な父親、卑屈で我が儘な母親の性質を受け継ぎ、義兄ミグシリアスに対しても、その出自を貶し、威圧的に接し、養子としてやってきた彼の黒髪黒目の見た目を嫌い、仮面をつけるように言いつけるというスチルが、ミグシリアスルート解放時に追加される。幼少期に両親の離婚、父親の突然死を経験したため、自分の周囲の人間が離れていくことを恐れるようになり、自身の婚約者に固執するようになる。ミグシリアスルート解放時には義兄にも執着する。
ゲームのオープニングイベントで、入学式に遅刻し、慌てて会場に向かおうとした男爵令嬢の髪を飾るリボンが突風で飛ばされたところを、偶然居合わせ見ていた王子が、自分の傍まで飛んできたリボンを捕まえて、彼女に手渡すところを遠くからイヴリンが見て、王子が彼女に好意があるとイヴリンが誤解して嫉妬したことで、イヴリンの嫌がらせという形で、イベントが始まる。最初は、シーノン公爵令嬢呼びで、ゲームが始まるが、好感度75%を超えると、イヴリン呼びを強請られる。好感度MAXの時に出る台詞は『これからも私の傍にいて』
→男爵令嬢が攻略者達とハッピーエンドを迎えると、イヴリンは一年後の卒業パーティーでエイルノン王子や他の攻略者達に断罪され、王子とは婚約解消となる。そのショックに耐えられず、公爵邸に帰宅後イヴリンは心臓発作を発症し、帰らぬ人になったという、文章がゲーム画面で綴られるが、その描写のスチルはない。
→男爵令嬢が攻略者の誰とも結ばれないが、悪役令嬢の誤解をキチンと解いたノーマルエンドを迎えると、男爵令嬢は誰とも結ばれないが、下級貴族令嬢らしい学院生活を送り、そこで見つけた身分が釣り合う貴族の子息に見初められる。ラストのスチルは、その子息との結婚式に、イヴリンとエイルノン王子連名の花束が届き、二人で驚いている姿。(これはその後の将来が約束されたことを匂わせるラスト)
→イヴリンとの友情エンドを迎えると、身分差を超えた友情を重ね、将来王妃になるイヴリンを支えるために男爵令嬢は女官を目指す。ゲーム時王子以外の攻略者達の中で一番好感度が高かった、キャラクターと結ばれ、二人で王家に仕えることになる。ラストのスチルは城の大聖堂でのイヴリンとエイルノン王子との誓いのキスを二人で暖かく見守る姿。
→男爵令嬢が攻略者の誰とも結ばれず、悪役令嬢の誤解も解けず、勉強、淑女教育のレベルも低い状態のまま、バッドエンドを迎えると男爵令嬢は、誰とも結ばれずに男爵家を追放されて、監禁施設で死ぬまで幽閉される。ラストのスチルは国の外れにあるその施設の外観だけの姿。文章で、男爵令嬢の末路が綴られる。
イヴリンの嫌がらせは、学校行事イベントの合間にあるゲームイベントで、その乙女ゲームでは、どのルートでもイヴリンが障壁となって立ちふさがり、彼女に虐められるからこそ、攻略対象者達との恋愛が進む。
この嫌がらせは、直接イヴリンが行うものではなく、イヴリンの取り巻き貴族達が彼女に命じられて、下級貴族の校舎や宿舎にやってきて、悪口で虐めたり、持ち物を壊したり盗んだり、水を掛けたりする。それに耐えて、勉強や淑女教育を頑張り、攻略対象者達と親交を深めると、好感度が上がる。
イヴリン自体の姿を見るのは最終イベントの前日。階段でヒロインが彼女に押されて、落ちる時が初めてとなる。イヴリンの誤解を解くには、ゲーム時間で半年を迎える前に、攻略対象者への接触を出来るだけ避け、勉強や淑女教育などでイヴリンよりも好成績を取り、夏の夜に行われる舞踏会の始まる前の余興で、神楽舞を踊る神子姫に抜擢されないといけない。これに選ばれるとエルゴールとの親密度が高くなりやすい。
ミグシリアス……攻略対象者。隠しキャラ。(4人の攻略者とのハッピーエンド、ノーマルエンド、バッドエンド、悪役令嬢とのハッピーエンドと、全ルートクリア時に解放される隠しルートで現れるキャラクター。次回ゲームスタート時に仮面の先生の代わりに出てくる)男爵令嬢より10才年上で、黒髪黒目の仮面をつけた剣術指南の教師。シーノン公爵。イヴリンの義兄。実は王の隠し子で、エイルノン王子とは年の離れた異母兄弟。眉目秀麗。文武両道。ナイフ投げの達人。仮面を付けているのは、この国では黒髪黒目は、魔性の者と言われて忌避されているからという設定。彼の場合は、王の隠し子なのを隠す役割も兼ねていた。最初は、ミグシリアス先生もしくは剣術の先生呼びで、ゲームは始まるが、(どちらかはランダムで、その法則は不明)好感度75%を超えると、ミグ先生もしくはミグシリアス呼びを、強請られる。プレイヤーがどちらか選べるが、この選択で二つのハッピーエンドのルートが決まる。好感度MAXの時に出る台詞は複数ある。『俺の愛しい小さな野花』『俺の永遠』『俺だけの癒やし手』……etc.
→ミグシリアスとハッピーエンドを迎えると、ルートが2つに別れる。一つは、自分が実は王の隠し子だと気づかないままの彼と、身分差を超えた大恋愛の末に、令嬢はシーノン公爵夫人となるハッピーエンド。この場合ラストのスチルは、白亜のシーノン公爵邸での結婚式でミグシリアスにお姫様抱っこされている姿。
もう一つは、自分が実は王の隠し子だと気づいた彼が、自分が産まれる前に王が母を捨てた事実を同時に知る。そのせいで母の心が壊れたことを悟った彼は、王を恨んで復讐を考える。前王の時代に王家に陥れられ、多くの仲間を殺されて、復讐を考えている影の一族や、前大司教であった父親を前王に殺された大司教率いる教会、ミグシリアスの母を慕っていた、闇に通じるミグシリアスの後見人の弁護士を味方に引き入れ、公爵家の隠し資産を使って、隣国と戦争を起こし、混乱に乗じて、王家を転覆させる。ラストのスチルは、戦争で傷ついた国土に立ち、国を立て直すために血塗られた王となったミグシリアスと抱き合う姿。
→全ルートと隠しキャラの二つのルート全て攻略時に解放されるハードモード。別名は逆ハーレムルート。条件は、全キャラ(悪役令嬢含む)好感度MAX、悪役令嬢の誤解を半年過ぎる前に解くこと、勉強、淑女教育レベルMAXであること、ミグシリアスの好感度MAXの時に出る最初の台詞が、『君のためなら悪魔にだって勝ってみせる』、であることが必要……らしい。
この逆ハーレムエンドでは、エイルノン王子と結婚後、各攻略者は自分達の恋愛感情を隠したまま、下級貴族の男爵令嬢の後見人になってくれる。悪役令嬢は男爵令嬢のために女官になってくれる。ラストのスチルは皆に見守られながらエイルノン王子に抱きしめられる姿。
ルナーベル……サポートキャラ。保健室の先生。元貴族の修道女。ヒロインが虐められているのをかばってくれる。淑女教育をしてくれて、上級貴族のマナーに詳しい。保健室はゲームのセーブ場所。スチル保存もここで行う。
「う~ん、こんなに憶えてるなんて、私もしかしてチート?うん、これなら楽勝だよね♪お茶してから作戦練らなきゃ!……ちょっと、そこのアンタ!突っ立ってないで、お茶にしてよ!まったく、愚図なんだから!ちゃんとしてよ!今度ミルクティーぬるかったら、また鞭打ちだからね!
……お茶は合格だけど、またパウンドケーキ?コックのお手製だって?しみったれてるわね……、あのハゲに今度会ったら、もっと稼いでこいって言ってやらなきゃ!え?誰のことだって?ハゲって私の親父に決まってんじゃん!ったく、チョコレートケーキくらい、一流店のを食べられるくらい稼いできてほしいわよ!」
少女はブチブチ文句を言いながら、お茶を飲み、パウンドケーキを食べ散らかした後、ベッドに乗り上げ、疲れてきたのか寝転びながら自分が書いたメモ書きを眺めた。




