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悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”名前なき者達の復讐”最終章~7月8月
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”名前なき者達の復讐”最終章~最終幕⑧

 ヒールは各国の使いの者達が集まっている中の内の5人の者達の顔を順に見つめた後、一つの小瓶のコルク栓を抜いた。すると小さな小瓶から出ているとは思えない位の強い刺激臭が辺りに広がり、使いの者達の内、二人の男性が眉間に皺を寄せ、周りにいた者達が彼等の体を気遣う姿が見られた。二人は額に手をやり、「大丈夫です。あの新種の薬草で作った治験の鎮痛剤と彼女独自の調合法が合わさったことで、直ぐに頭痛の痛みが起きそうな刺激臭にも耐えられています」、「うむ、まだまだ改良は必要かもしれんが今までの鎮痛剤にはない即効性が加わっているようだ」などと話しながら、ヒールが青い瞳の王子の傍に近づいていくのを見守っていた。王子は先ほどかばってくれなかった祖父を一瞬恨めしげに見たが、祖父が持っている小瓶から臭ってくる、()()()()()()()()に気付き、若干身を引きながら、祖父に尋ねた。


「?何ですか、お祖父さ……うわぁ!?何を?臭ッ……!今は()()なんてしている場合ではないのに、一体何を考えているんですか!そんなことをする前に、この失礼な外国人達を捕まえてくだ……さ……えっ!?」


 祖父に小瓶の液体を頭からかけられて、怒った王子は直ぐに祖父を咎め、自分を王子失格と断じる使いの者を捕まえるようにと頼もうとしたのだが、ポタポタと前髪から滴り落ちる液体の色が、先ほど祖父にかけられた小瓶に入っていた液体の色とは同じではないことに気づき、その液体を手の平で触ってみた。


「……え?何なんですか、この臭い液体は?何で無色透明だったのに金色に変わっているんですか?」


 縛られている王子の取り巻き貴族だった3人は、顔を引きつらせている王子の頭を見て、目を丸くし、猿轡を咬まされている口がモゴモゴと動き、この騒動を遠巻きにして見ている者達からも驚きの声が上がった。


「おい、見てみろよ!王子の髪を!()()だぞ!王子は銀色の髪だ!」


「そんな馬鹿な!?カロン王の子に銀髪の子がいたなんて聞いたことがないぞ!」


「それはそうだろうさ。カロン王は女好きだが、銀髪の女性だけはダメなんだ!だから後宮の側妃達の誰一人として、銀髪の持ち主なんていないはずだ!」


「確か王子の生母であるアキュート侯爵の娘はピンク色の髪に青い瞳の持ち主だったはず。カロン王は今はともかく昔は太陽の光のような輝く金髪に穏やかな春を思わせる碧色の瞳だった。でも王子は碧が申し訳程度に入った青い瞳に銀髪とは……これは一体どう言うことなんだ!?」


「クンクン……これ、この匂いは……あの匂いだわ!そうよ、どこかで嗅いだことがあると思ったら、この匂いは、髪の色を元に戻す薬の匂いよ!そう、()()()()の匂いよ、これ!そうよ、髪を染め直す時に染めムラが出ないように、髪は染色する前に一度、髪の色を元に戻す必要があるから、私も毎回鼻をつまみながら染料抜きをしてるから間違いないわ!」


「本当だわ!これ、あの嫌な匂いだわ!確か染料の液体は、染めたい色がついていて、染料抜きの液体は無色透明だったから、これは染料抜きの薬で間違いないわね!二つの液体とも、小さな子どもが誤って飲まないようにわざと臭い匂いをつけていると聞いたことがあるわ!」


 へディック国の貴族女性達は皆銀髪に髪を染めているので、そうだそうだと囁きの声が大きくなり、その中にたった一人だけいるピンクの髪の中年女性が同じ位の年の銀髪の男性に伴われて、ヒールの元にやってきた。


「は……母上?これは一体何なのですか?どうして私の髪は……?」


 王子の母は王子の質問には答えず、ヒールの目の前に立つとヒールからもう一つの小瓶を受け取って、中の液体を自分の頭にかけた。すると王子の金髪の髪が銀色に変わったように王子の母の髪もまた銀髪へと変わっていった。自分の母親の髪も銀髪だと知った王子は口元を手で覆い、目を見張って驚いた。ザワザワとざわめきが広がっていったが、ヒールが二人の髪の事について話し出すと、皆理由が知りたいと耳を欹てたので、あっという間に静寂が戻った。


「クローニック侯爵は王家乗っ取りを企み、自分の血を引くナロンを王に据えるために、ナロンの父を暗殺し、その罪を異母弟のライト様の母親の実家になすりつけ、ライト様も追放しました。そしてナロンを自分の意のままに動く操り人形にした後は、自分の栄華を極めるために国の資源をナロンに横流しさせていました。


 儂はクローニック侯爵が儂の親や仲間達に言っていた、あの偽りの言葉を信じていたので、始祖王の血を引く王家を憎むようになっていて、クローニック侯爵の目を盗んで王家の人間全てを暗殺してやろうと考えるようになっていました。でもクローニック侯爵は抜け目のない悪人だったから、ナロンを暗殺することは出来なかったし、クローニック亡き後のカロンも毒を飲ませても死なないし、直接手にかけ暗殺しようと思っても、まるで企んでいることがわかっているかのように、のらりくらりと逃げられてしまって暗殺することが出来ませんでした。


 復讐が上手く行かなかった儂は、王家の人間を殺せないなら、せめて王家の人間の嫌がることをしてやろうと思いついたんです。皆もご存じの通り、カロン王は昔から銀髪の女性が嫌いだと言われていましたが、特に銀髪と青い目が合わさった女性が大の苦手だというのは一部の者しか知らない事実でした。……それにカロン王は女好きだという割には性欲が薄く、飽き性で一人の女性を一度しか抱かないし、後宮に入れた女達の元に通っても、顔を一度凝視して見た後は、何もせずに帰って行くということも、多くの者が知らない事実でした。


 だから儂はトゥセェック国の荒くれ者達の子の中にいた、銀髪青い目の女を養女に迎え、髪を儂の色に染めさせ、同じ悪者達の仲間の中にいた、彼女の恋人である銀髪青い目の男性との子を宿させてから後宮に送り込み、カロン王にしこたま酒を飲ませ寝ている隙に、関係を持ったと思わせることに成功して、カロン王の血を全く引かない子を王子として育てることにしたんです。


 復讐心に駆られていた儂は10年前の流行病でカロン王の血を引く子ども達が次々亡くなり、たった一人残ったカロン王の本当の子が王籍を剥奪され、母子と母の親戚一同が外国に追放になったときは、ざまあ見ろと大喜びしました。このままずっと王家の人間を暗殺出来ないのなら国を滅ぼしてやる……と願い、儂が生きている間に、それが叶わないのなら、最後に残ったカロン王の実子を暗殺し、始祖王の血を一滴も引かない悪者達の子の間に生まれた悪人の血を引く子を王に据えてやろうと思っていたからです。


 これが儂が隠していた最後の真実です。そこにいる王子はカロン王の本当の子ではありません。そして儂の本当の孫でもありません。彼の血には一滴だって始祖王の血は入っていません。彼は偽物の王子で、そこで縛られている大司教子息や騎士団長子息や宮廷医師子息と同じで、彼もまた悪人達の子なのです」


 そこまで告白したヒールは一旦言葉を切った。講堂内にいる者は皆ヒールを見て驚いた表情のまま呆然としている。ヒールは自分の罪の多さに人々が驚いても無理はないと思っていたので、ここまで言ったのならば、最後まで包み隠さずに自分の罪を告白しきろうと思いながら、自分がした最後の罪の告白を続けた。


「儂のご先祖様を悪人に仕立て上げ追い出した国を滅ぼすために、王子として育てることにした彼には”王となるのに必要な、ありとあらゆる教養”を教えないようにと、儂は家庭教師に指示していました。”神様の子ども”時代から彼は努力するのが嫌いな子でしたから、普通の貴族教育も落第が多かったので、学院に入ってから家庭教師が呼び出されたときは、それがバレないかとヒヤヒヤしましたが、()()()()()()()()()が来ているだけだと言わせて誤魔化していたのです。カロン王、ここにいるへディック国の貴族の皆様、並びに各国の使いの方々……そして王子や上級貴族の息子だと信じ込まされていた若者達、全てのことはクローニック侯爵の野心と儂の復讐心が招いたことでした。本当に申「っざけるな「危ない!!」!」」


 罪を告白し終え、もう一度謝罪の言葉を口にしようとしたヒールの体めがけて王子の凶刃が襲いかかったが、咄嗟にヒールを抱きかかえた仮面の弁護士が、そのまま後ろに飛び後ずさったことで、間一髪ヒールの体には王子の持つ短剣は届かなかったが、ヒールの額に巻かれていた白いリボンだけが二つに分かれ、ハラリと床に落ちていった


「っざけるな……。何だよ、それ……。いい加減にしてくれよ」


 そこには短剣を持った王子……だった者が涙を滲ませながら立ち尽くしていた。

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