表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”僕達のイベリスをもう一度”~7月
230/385

ピュアと学院の真実(中編)

 しかしピュアは10才のときに”奇病”になり、顔に赤い水玉模様がいくつもある、とても醜い少女になってしまい、王弟殿下はピュアに幻滅した。さらには日に日に女性らしい体に成長するピュアが、王弟殿下の理想とする姿とドンドンかけ離れていったので、それが嫌で嫌で堪らなくなり、王弟殿下は王に何度も婚約破棄を願ったが、子どもがいない王は、女性らしい肉付きならば、必ず子が産めるだろうと言って、それを了承してはくれなかった。


 苛立った王弟殿下は、また自分好みの美少女を物色するために人身売買と誘拐と、昔に気に入っていた少女を探すことを再開させ、5年が過ぎようかというころ、ある日、王弟殿下は一つの教会に足を踏み入れた。何十年も前に少女が、その教会を訪れたという情報を確かめるために訪れた教会で王弟殿下はバッファーから持ち込まれたという壁画を見て、そこに描かれた”銀色の妖精”の姿に衝撃を受けた。


(何と美しい!)


 国際的な犯罪集団の中にバッファー出身の男がいて、その男が昔、壁画の”銀色の妖精”にそっくりな父娘を一度温泉がある保養地近くで見かけたと話しているのを聞いた王弟殿下は、その父娘が欲しくなってしまった。


「王弟殿下が探していた少女って、もしかして……ジェレミーのお母様のことかしら?……それに、あの教会の壁画に描かれていた”銀色の妖精”にそっくりな娘って、もしかしなくてもイヴさんのことよね?王弟殿下は、イヴさんとイヴさんのお父様を攫おうとしたのね」


「ええ、そうです。イヴ様のお父様は平民の薬草医だったのですがとても美しく、しかも聡明な方で3つの国の王達から”銀色の妖精王”、もしくは”王位を持たぬ王”と呼ばれて慈しまれていました。イヴ様のお父様の助言を聞き入れて、善政を行った3つの国は今まで以上に富み栄え、さらに強大国となり、その国の民の生活を豊かなものにしたので、彼は3つの国の民達から感謝され、()()として尊敬されています。


 またイヴ様の伯父にあたるスクイレル商会の会長やイヴ様のご親戚の方々が、”片頭痛”のイヴ様のためにと色々尽力されたことがきっかけで、バッファーの子どもの死亡率は激減し、犯罪も少なくなったりと、とても栄えただけではなく、民の幸福度を倍増させることとなったので、バッファーの多くの民達が、それを大いに喜んで、スクイレルに大層感謝し、国民達もまた、イヴ様達を守る”スクイレル”になっていったそうです。だから三年前に王弟殿下達は、バッファーに密入国したものの、スクイレル化した民達にすぐに見つかって、住民全員に追いかけ回されて捕縛されたのです」


 ジェレミーの話に固唾を飲んで耳を傾けていたピュアは、驚きで目を丸くさせた。


「そ、それって、爵位のない一平民を守るためだけに国民も国も動いたってことよね!?そ、そんなことが本当に起きるなんて……まるで()()みたいだわ」


「本当に信じられない()()のようですが、これが真相なんです。だからもうすぐ貴族ではなくなるホワイティ家の公爵令嬢よりも、3つの国を動かせる平民のイヴ様が狙われることになってしまったのでしょう」


 衝撃の事実を知り、これでもかと目を見開かせて驚いたピュアは、ハッとした表情になった。


「あっ!イヴさんが特Aクラスの居住フロアにいる理由は、そのせいだったのね!でも、それならどうしてイヴさんは平民クラスにいるの?も、もしかして……イヴさんは私と同じように、この学院の真実を知らないまま、ここに?そして私と同じで狙われていることを……知らないのね?」


 ジェレミーはピュアに同意し、さらに補足を付け足した。


「ええ、ピュアの推理の通りです。三年前の大事件の時、イヴ様は12才のいたいけな少女でした。イヴ様のご家族は片頭痛で苦しんでいるイヴ様に、悪者達に狙われているとは言えなかったそうです。ですからイヴ様のお母様が、我が子可愛さに暴走した……という態を装って、性犯罪者達を一掃するついでに我が国も救ってくれたそうなんです。


 今年イヴ様に治験をするために学院に行くようにイヴ様の家族が勧めた元々の理由は、イヴ様から聞いた片頭痛の治験に最適な条件が学院生活に合致していたからなんですが、1月に行われたイヴ様の入学試験後に王弟殿下が逃げて、行方がわからないとの連絡を受け、それを不安に思ったご家族はイヴ様を守るために、学院の先生方や寮の者に扮して、イヴ様の傍にいることにしたそうです」


 ジェレミーがそう話すと、ピュアは新たな疑問を口にした。


「そうだったのね。道理でルナーベル先生とイヴさんのお顔がよく似ているはずだわ……。え?若先生がお父様なの?賢者と言われる”銀色の妖精王”?茶髪の鬘をかぶっていたから、全然わからなかったわ。ええ!?リーナちゃんはイヴさんの弟?男の子だったの?あんなに可愛らしい女の子だったのに、男の子だったなんて、衝撃的すぎますわ!……あら、でも賢いイヴさんやミグシスさんが、自分の家族達に気づかないわけがないと思うのだけど?自分達が学院にいる理由を二人にどう説明したのかしら?」


「はい、当然イヴ様達は、ご家族やスクイレル会長達が、自分の周りの先生や施設の者に扮していることはご存じですが、スクイレルの家訓の一つに『死して屍拾う者無し』と言うものがあって、ご家族が自分達で、それを打ち明けるまでは、黙って見届けなければならない掟があるから、イヴ様とミグシスさんは黙って静観をしているそうです。そして多分……イヴ様達のご家族は、自分達がここにいることの説明に、()()()()使()()のではないかと僕は推察しています」


 ジェレミーの言葉にピュアは少し考え、「……ああ、それが一番、無理のない理由になるでしょうね……」と呟き、ジェレミーの意見に同意した。


「……そうね、悪者達はネルフの者だもの。三年前に私を救ったイヴさんのお母様達が、再度、彼等に私が狙われているという情報を知って、イヴさんとは違う”奇病”で苦しんでいた私に同情して、私を守るために、ここに潜入したと説明すれば、イヴさん達に真意を気付かれずにすむわね。もしイヴさんが家族からの言葉だけでは信じ切れないときは、私も口添えをしますわ。


 ……それにしても、どうして平民クラスの皆とイヴさんは一緒にいるのかしら?イヴさんを守ることを考えるなら、教室が一階にある平民クラスよりも、学院長室の奥にある特Aクラスの教室の方が、日中は安全なはずなのに?」


 ジェレミーは、ピュアの疑問は最もだと頷いた。


「この学院にいる生徒達の上下貴族クラスの三学年と平民クラスの二年と三年生のクラスの本当のクラス名称は、”()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”といいまして、そこにいる人達はピュアが前に言っていたように、卒院後、直ぐに城の執務官や騎士等になって国を支えられるようにと、学院で勉学に励んでいる学院生達なんです。


 そしてピュアが一番、その能力に驚いていた、一年生の平民クラスは、本当のクラス名称を”()()()()()()()()()()()()()()()()”と言いまして、彼等は皆、国宝級の才を持つと言われているイヴ様のお父様と、そのご家族を欲深な権力者や悪者から守る忍者集団の住む、スクイレル村という所の若者達なんです」


「!?」


 驚きすぎて言葉が出ないピュアにジェレミーは、実は彼等は本来、ここの学院の入学生では()()()()のだと言った。


「実はイヴ様のお父様を守るスクイレル村の者達は、イヴ様やイヴ様のご家族を守る者達ではあるのですが、実際に彼等の主君一族の顔を知るのは、極々一部の人間だけなんだそうです。スクイレル会長の目に適い、彼等の”銀色の妖精の守り手”の後継者となるであろう上忍だけにしか、その正体を明かさないそうなんです。


 そして銀色の妖精の守り手上忍育成クラスの試験は、毎年トゥセェックにある学院の施設を()()()()()()()()()()()()()で、本当ならば、今ここにいる平民クラスの一年生達は、試験合格後はバッファーの学院で学ぶはずだったのですが……」


 ジェレミーは仮面の先生をしていたセデスから、その詳細を聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ