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悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”僕達のイベリスをもう一度”~7月
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ピュアと学院の真実(前編)

※この回から、ピュアがイヴに汗疹の相談をした日まで、時間が戻ります。

 ピュアはジェレミーと恋人となった日の午後にはネルフ国のホワイティ公爵家に、ジェレミーと結婚すると決めたことや公爵家からの除籍を請う手紙を早馬で出していた。それに対してのホワイティ公爵家からの手紙が届いたのは、ピュアがイヴに汗疹の薬を処方してほしいと頼んだ日の正午前のことだった。その手紙にはピュアの手紙への返事の他に、ピュアのいない間のネルフ国のことや、ピュアの一生の親友であるイヴの危機を知らせる内容が書かれていた。





「!?ああ、ジェレミー!私、どうしたらいいの?どうやって()()()()を守ろうかしら?」


 その日の午前中、寮監をしているリーナの父親から重たい荷を運ぶ手伝いを頼まれたジェレミーは、同じく寮監に手伝いを頼まれたミグシスと一緒に中庭で作業をして、昼前に作業が終わり、部屋に戻る際にリーナから手紙が来ていたと、一通の手紙を渡された。部屋で待つピュアと共にその手紙を読んだジェレミーは、体を震わせはじめたピュアを宥めるようと背を摩った。


「大丈夫ですよ、ピュア。何も心配はいらないんです。この学院にはイヴ様やピュアを守るための設備も人員も全て配置されているんです。……実はね、ピュア。ここの学院はネルフにあるような学院とは違うんです。今まで黙っていてすみませんでした」


「?どういうこと?」


 ジェレミーは親友を心配して不安がるピュアに、この学院の()()を話した。


「実はね、ピュア。ここの学院は3つの国が共同で経営し、将来の国の担い手達を育成している学院なんです。そしてピュアがいる特Aクラスというは、要人保護を目的としたクラスでね、今、この学院にいる先生も生徒も……学院にいる全ての人々が皆、ピュアとイヴ様を守っているんですよ」


 ジェレミーがそう言うと、ピュアは目を丸くさせた。


「イヴさんはともかく、どうして私を守っているの?私がネルフの公爵令嬢だったとしても、3つの国にとって、私はそれほど重要人物ではないはずよ?」


「ピュア。あなたがこの学院に来た理由は、前に少しだけ説明しましたね。僕はあの時、僕の事情しか話しませんでしたが、他にも理由があったんです。……実はあなたがここに()()()()本当の理由は、あなたが悪者に狙われる立場だったからなんです」


 ジェレミーはそう言った後、三年前の騒動後の裏事情についてピュアに語った。


「ピュアの実家のホワイティ公爵家は、代々篤志家として民に私財を投じて、長年、民の生活向上に大きく貢献していたことは、すでに知っているでしょう?ほら、昔、僕と一緒に行った教会を覚えていますか?あの教会が経営している孤児院も、ホワイティ家の支援で成り立っていたんですよ。それで三年前の大事件で民達が立ち上がった時に、王や全ての貴族達は、貴族を辞めるようにと民達に迫られていたけれど……長年、民に尽くしていたホワイティ公爵だけは、民達から次の王にと請われていたのです。


 ですから特権階級として贅沢な生活をしてきた貴族達が、それを失いたくないと、民達に王になって欲しいと望まれているホワイティ公爵に擦り寄りたいと考えるのは当然のことで、何としてもホワイティ公爵と縁を持ちたいと考えた貴族達が目を付けたのは、”奇病”を患っているために未だ未婚でいるあなたでした。


 王弟殿下と婚約破棄したあなたと強引に婚姻を結ぶか、攫って人質にするか。どちらにしても、ろくでもない方法で、あなたを利用しようとする動きが、あの騒動の後にあったそうなんです。ホワイティ公爵は、あなたが貴族を嫌っていたこともあり、この機会に進んで貴族を辞めようとされて、民主制に国を変えていこうと自ら動こうとされていました。だから3つの国の王達に、国が落ち着くまでピュアの保護を頼んだのです。


 彼等はホワイティ公爵や僕の話を聞いて、ネルフ国が落ち着くまでピュアを悪者から守るために……、そしてネルフ国の噂をピュアが聞いて、またピュアの体が自国を心配する心から奇病を起こさせないようにと、ネルフの話が聞こえてこない、国を一つまたいだ、安全で静かな生活を送れるトゥセェックの学院に入れることにしたのだそうです」


 ピュアはジェレミーの説明にフゥ~と深くため息を着いた後、ソファに力なく座り込んだ。


「そうだったのね……。私、全然知らなかったわ。でも……それなら何故、今回狙われているのは私ではなくて、イヴさんなの?だって敵はネルフ人の一部の貴族達で、彼等は民主制に反対していて謀反を企てようとしているんでしょう?民主制にしようと先頭に立っているのはホワイティ家なのだから、彼等が狙うのは私で、イヴさんは関係ないはずよ?」


 ピュアはホワイティ公爵家からの手紙が置いてあるテーブルに目をやった。テーブルの上には便せんが置かれていて、ピュアはそれを忌々しげに睨み付けた。


『……というわけで、ネルフ国は王制から民主制になることが決まり、貴族制度も廃止されることに決まったのは、民のために法律に詳しい我がホワイティ公爵家が先頭になって、それを推し進めたからだが、貴族の特権階級を惜しむ、一部の者達が王制復活を企み、今年の()()にネルフの離宮に軟禁されていた王弟殿下を解放して、海へと出奔してしまった。このことは3つの国の()の王達には報告済みで、彼等は海に監視を置いて捕縛のために動いてくれたが、船が沖に出てしまったようで捕縛はされていなかった。


 彼等はネルフ国の王制を復活させるために、3つの国を脅迫しようと()()()()()()()()()()を狙うだろうと3つの国の今の王達は考え、娘を学院で保護することにしたらしい。だが、ピュアの手紙が我が家に届いた()()()()()()()過ぎた同じ日に、バッファーの海上で怪しい船が見えたという報告の手紙が届いた。


 彼等はスクイレルの娘がバッファーにいると思い込んでいて、バッファーに上陸するつもりだと3つの国の今の王達は考えているが、念のため、さらに海のないバーケックに、7月中に彼女を避難させたいので、彼女に事の真相を知られないように、学院の者達と協力をしてもらえないだろうかと、3つの国からピュアに協力依頼が打診されている。勿論、ピュアの体調が悪ければ、断っても構わないらしい。


 なお、今回の標的はスクイレルの娘だが、万が一があってはいけないので、ピュア達も7月中にバーケックの学院にいるルナティーヌ様の所へ避難しておくようにと通達があったので、ピュア達もバーケックに行くように。向こうでピュア達が困らないようにバーケックの最新情報を書いた報告書を添付しておく』


 そう書かれた手紙を見つめたまま、ピュアは言った。


「イヴさんを守るためなら、いくらでも協力はするけれど、どうして私ではなく、イヴさんが狙われているの?」


 ピュアには、いくら考えてもイヴが狙われる理由が思いつかなかった。ジェレミーは思い悩むピュアの横に座り、ピュアの頭を撫でて、イヴが狙われる理由を話すことにした。


「実は王弟殿下が捕まるきっかけが、イヴ様……正確には”銀色の妖精”を王弟殿下が欲したことが原因だったからなんです……」


「えっ!?」


 ジェレミーはある人物から聞かされた、王弟殿下捕縛の真相について語り始めた。






 国中の美少女を攫って自分の醜く身勝手な欲望をぶつけていた王弟殿下が、国際的な誘拐や人身売買に手を出すようになったのは、特別に気に入っていた少女に逃げられてしまったことが、きっかけだったらしい。王弟殿下は自分が一番気に入っていた少女を探すために、余所の国の奴隷商人や誘拐を生業にしている悪党と手を組み、少女を探しつつ、外国の美少女達も物色し、我が物にするようになったと捕縛した3つの国の事情聴取で語ったようだ。


 十数年悪行を重ね、私生活でも王に宛がわれた妻達に無体を強い、幾度も暴行をしたことにより、妻達を不審死で失い、幾度も婚姻を繰り返していた王弟殿下に、未だ子がいない兄である王は甘く、今度こそ絶対に子を持てるようにと、次の婚約者は子が多くいるホワイティ公爵家の令嬢を王弟殿下の婚約者にと宛がった。


 王弟殿下は行方不明の少女よりも美しい少女である、国一番の美少女の7才のピュアとの婚約が決まったとの知らせを受けたときは、それをとても喜んだ。何故なら特殊な性的嗜好を持つ王弟殿下にとって、7才の美少女と婚約というのは何にも勝る至福で、とても喜ばしい出来事だったからだ。でもピュアは、この国で二番目に身分が高い公爵家の者だったから、いつものようには直ぐに手が出せず、王弟殿下は苛立ちながらも、ピュアを我が物にする機会を狙っていた。

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