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悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”僕達のイベリスをもう一度”~7月
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その王はイベリスに永遠の愛を誓い、悪役を選んだ

 "カロン王"というキャラクターは、”僕のイベリスをもう一度”という乙女ゲームにある10通りのハッピーエンドルートの内、9通りのルートでは”善き王”として、スチルに登場します。”真実の眼”という特殊な力のある瞳を持ち、王子と悪役令嬢である公爵令嬢の婚約破棄を認め、本来ならば許されることのない、下級貴族であるヒロインと上級貴族である攻略対象者の身分差のある結婚を可能にさせることが出来る権力を持った、僕イベには欠かせない大事なキャラクターでした。


 ただ……ミグシリアスの復讐ルートの時だけ、カロン王は”善き王”から”悪しき王”に変わってしまうのです。悪役のカロン王は”真実の眼”を持たず、享楽的で傲慢で非情な悪い王として、スチルに登場しするのです。そのルートではミグシリアスはカロン王の隠し子だという事実が発覚し、ミグシリアスはカロン王が母親を捨てたことで、母親が娼婦になったことや、カロン王が母親に暗殺者を差し向けたことを知り、ミグシリアスがカロン王への復讐のために隣国との戦争を起こすというストーリーがスチルムービーで語られ、ラストは血塗られて焦土となった国に、ミグシリアスとヒロインが立ち、崩壊した国を二人で再建していくという未来を暗示させるスチルでエンドを迎えるのです。


 ですから”僕のイベリスをもう一度”には悪役が二人いると言えました。それはイヴリン・シーノン公爵令嬢とミグシリアスの復讐ルートのカロン王です。……ただ、ここは僕イベが再現された()()()()()です。この世界では僕イベの悪役に生まれついた二人ともが、()()()()()()でした。


 イヴリンが悪役不適格者になったのは、アイのおかげでした。イヴリンが悪役令嬢になるきっかけ……、3才で死を意識してしまうほどの頭痛を発症し、独りぼっちで、とても苦しく寂しく、心が闇に飲み込まれてしまいそうになったときに、イヴリンの前世であるアイの魂が、()()()の痛みに反応し、その魂の記憶が揺り起こされてイヴリンを助けてくれたおかげで、イヴリンは悪役令嬢になるフラグをへし折られたのです。


 イヴリンの前世のアイは前世で片頭痛と長く闘っていた、明るく前向きで優しい……普通の日本人女性でした。だからか、その魂を持つイヴリンも明るく前向きで優しい心を持つ、普通の少女となったのです。アイは前世の自分の記憶の共有を拒んだので、イヴリンは前世の記憶を持たずに育ちました。アイは片頭痛を病気とは認めない国に生まれたイヴリンを心配し、自分がいなくなってもイヴリンが前向きな気持ちで生きていけるようにと、イヴリンに片頭痛の知識と、イヴリンは()()()()()()ことを教えました。アイはイヴリンが片頭痛の知識や、自分の周りの人を信じ、愛し、大事にすることを覚え、またイヴリンを信じ、愛し、大事にしてくれる者達が大勢いることに安堵し、再び、永い眠りにつきました。


 イヴリンが悪役辞退出来たのもアイのおかげでした。アイが悪役令嬢のフラグをへし折ったことで、イヴリンがアイの性質をそのまま受け継いだ、明るく前向きで、人を思いやることが出来る優しい少女に育ったことで、イヴリンは大勢の大人達に愛されました。しかもイヴリンの中身がアイだったおかげで、前世でアイの父親だった、イヴリンの母親が、イヴリンの正体とイヴリンが悪役令嬢に転生していたことに気づき、イヴリンとイミルグランの死の運命から二人を守るために奔走してくれました。


 またイヴリンの父親のイミルグランは、自分と同じ体質のイヴリンのために公爵位辞退を決意し、イミルグランを自分達の王と認め、仕えていた影の一族であるセデス達は、自分達の王と姫を守るために、国から出すための工作を施し、前世ではアイの魂の永遠の番で、今世ではイヴリンの義兄になる予定だったミグシリアスは、イヴリンの優しい人柄に前世同様、心が癒やされて、将来大きくなったイヴリンが、他の男と結婚することが何故か(当然)非常に耐えられなくなり、義兄ではなく、一人の男として、将来見てもらえないかと爆弾発言をし……結果的にイヴリンは、自分が悪役令嬢に転生していたことを知らないまま、家族ごと公爵ではなくなったので、イヴリンは何も知らずに悪役ではなくなってしまったのです。





 一方……カロン王が悪役不適格者のまま、悪役を続けていたのは、金の神の力の暴走のせいでした。金の神の力の暴走は、カロン王が生まれるずっと前の、アロン王の時代に影響を及ぼしていたので、カロン王は”善き王”として”真実の眼”を持って生まれたにも係わらず、その身は僕イベに無理矢理入れられていた復讐ゲームの中にあったから、カロン王は()()()()()をしなければ、生きていけない環境で生きることとなってしまったのです。


 幼い頃、短剣で寝ている間に衣服をズタズタにされた死の恐怖から、カロン王は愚かな王子としてクロニック侯爵の傀儡になる道を選んでいましたので、本来ならカロン王は、そのままやがて、身も心も悪人になるはずでしたが、そうはなりませんでした。カロン王が悪人になれなかったのは彼が15才の時に学院の入学式が始まる前に男子トイレで出会ったイミルグランの魂の姿……アイの母親であるユイに()()をしたからでした。


 一目見るだけで嬉しくて、言葉を交わせなくても、そこにその人がいるだけで、幸せだと思ってしまう……。そんな純粋な初恋をしてしまったカロン王は、心が綺麗な少年だったので、ミグシリアスの母親となる少女に、無体なことをするような非道な行為は出来ようはずもありませんでした。


 そこで金の神の力は、3つの物語を再現させるため復讐ゲームの主人公である……()()()()()()ミグシリアスという登場人物を誕生させようと神の力を暴走させ、クロニック侯爵の傀儡と化したカロン王の父親であるナロン王を、ミグシリアスの父としたのです。カロン王は義弟の命を助けた後、自分の初恋のユイを守るために、その後は自ら進んで、悪人のふりをずっと続け、そして10年前に自分の半身のナィールと出会い、全てを知ったのでした。




 10年前、カロン王の”真実の眼”は3つの物語の全てと、3つの未来をカロン王に視せました。


 イミルグランが事故死したことをきっかけに、心を入れ替え(たふりをして)”善き王”となったカロン王は、自分の周りの敵達と戦うものの、孤立無援であえなく暗殺された10年後、へディック国を乗っ取った敵達が隣国に戦争を仕掛け、国中を焦土にし、大勢の民が死に絶え敗戦し、へディック国が滅亡する未来。


 10年後、隣国のイミル将軍となったナィールが大勢の味方を引き連れて、へディック国を滅亡させる元凶として悪人を続けているカロン王と回りの敵達をともに捕縛し、敵達は処刑。カロン王はある施設で一生軟禁されて余生を過ごし、国はナィールが仲間達と協力し、再建させていく未来。


 そして……男女共学となった学院の”卒業パーティー”でカロン王の息子が、イミルグランの16才になった娘に婚約破棄を突きつけて、イミルグランの娘が、その哀しみのまま、心臓発作を起こしたように見せかけることが出来る毒薬を飲まされて、死んでしまう未来。


 カロン王は自分の二つの未来よりも、自分の初恋の人の娘の未来をとても危惧しました。3つの物語のうち、2つの物語がイミルグランの娘を苦しめる物語です。悪役辞退したとはいえ、乙女ゲームのプロローグ……攻略対象者の初恋は、もう二人が……神子姫エレンとミグシリアスがイヴリンに仄かな想いを抱いてしまったために、すでに始まってしまっています。


 ……もしも悪役辞退していても、辞退できていなかったら、ユイの娘のアイは、16才になった日に死んでしまうのです。全てを視て知ったカロン王は、自分の二つの未来の選択なんて、悩む必要もないと()()()()()、イヴリンの辞退した()()()()()()()()することで、僕イベの悪役令嬢の死亡エンドとヒロインのバッドエンドを一手に()()()()()()()()()()()()……密かに、()()()()を手に入れることに成功していました。

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