※その乙女ゲームの悪役は片頭痛でした
※新年あけましておめでとうございます。皆様にとって良い一年でありますように。今年もよろしくお願いします。今回の話は、自分自身が内容を忘れかけているために、リハビリを兼ねて書いています。
金の神が最初に見たいと思った物語は、”僕のイベリスをもう一度”という乙女ゲームの10番目のルートで、誰も攻略した者がいないと言われていた、幻の逆ハーレムエンドでした。
金の神は僕イベを父神の世界に再現させ、逆ハーレムエンドをクリアしたと言った”お姫様”をこちらの世界に召還転生させたものの、お姫様が嘘をついていたことを知り、とても強いショックを受けて落ち込みました。金の神は自分の落ち込んだ心を癒やすために僕イベのファン情報サイトに載っていた僕イベのイースターエッグである”隠された物語”を見て心が癒やされ、感動しました。心は初心な中高年男性ファン達に”初恋エンド”と呼ばれ愛されていた”隠された物語”の存在を知った金の神は、逆ハーレムよりも”隠された物語”が見たいと強く思ってしまいました。
そこで金の神は”隠された物語”のモデルである、可愛い恋人達の魂を探したところ、すでに二人は、この世界に転生していることがわかりました。可愛い恋人達の一人であるアイは銀の神によって、”英雄のご褒美”として、この世界に魂の召還転生されていました。そしてアイの恋人であり、魂の永遠の番であったマコトは、自力で愛しいアイを追いかけて、異世界を渡ってきていました。
金の神は大喜びで二人が初めて出会った雷鳴の夜に、二人を金の神が本当に見たい”隠された物語”の”英雄”と認定し、自分が見たい物語に夢中になってしまったので、自分が何を父神の世界に再現させてしまったのかをよく理解していませんでした。
父神が創造した現実の世界に、三人の兄弟神達が許されていたことは、一つの物語を再現させることでした。金の神は”隠された物語”は”僕のイベリスをもう一度”に隠されていましたから、見たい物語が変わっても困ることはないだろうと安易に考えていたので、”隠された物語”の恋人達が、誰に転生していたのかを深く考えていませんでした。
金の神が再現させたのは物語ではなく、物語を遊ぶ遊戯……いくつもの結末がある乙女ゲームであり、銀の神が自分の見たい物語の”英雄”のライトの褒美のために魂の召還転生させた、彼の姪であるアイをライトが見つけやすいようにと気を利かせた銀の神が、この世界で最も自分に似た容姿を持つ人間にアイを転生させたことにより、アイは”隠された物語”が隠されていた”僕のイベリスをもう一度”の悪役令嬢イヴリン・シーノン公爵令嬢として生まれ、そして少しでも早くアイの傍に行きたいと思っていたマコトは、僕イベの悪役令嬢であるアイに王子よりも先に出会う隠しキャラのミグシリアスとして生まれていたのです。
さらには……金の神が選んだ”僕のイベリスをもう一度”というゲームは、普通の乙女ゲームではありませんでした。”僕のイベリスをもう一度”にはイースターエッグとして”隠された物語”が隠されていたことの他に、もう一つの秘密が隠されていたのです。それは、このゲームが元々……乙女ゲームではなかったことでした。僕イベは元々、復讐ゲームでしたが大人の事情で、乙女ゲームへと変更を余儀なくされ、悔しい思いをしたスタッフ達が、僕イベに復讐ゲームのキャラクターとシナリオを無理矢理乙女ゲームに入れていたのです。
父神に許されていたのは、たった一つの物語を再現させることだったのに、力不足の金の神がゲームを再現させたことで、”僕のイベリスをもう一度”に入っていた3つの物語全てが、”僕達のイベリスをもう一度”という3つの独立した話で構成された一つの物語として、この世界に同時に再現されてしまい、今、へディック国は滅亡の危機を迎えていました。金の神は6月の三者面談で父神に叱られるまで、へディック国のことを視ていなかったので、その復讐ゲームを、まだ一度も視ていませんでした。
一月前の三者面談で、父神に叱られた金銀の神達は、その日から三日間、人間界に留め置かれることとなり、三者面談で父神の理解と協力を得られたスクイレル達は父神が帰った後、早速僕イベの3つの物語を全て終わらせるようにと、金の神に求めました。スクイレル達は悪役令嬢イヴリン・シーノン公爵令嬢に生まれたイヴの死亡フラグを早急に消滅させることを望んでいたので、金の神は彼等の見ている前で、僕イベの強制修了の認定を行うことにしました。
"隠された物語"はたった5分間の物語です。物語の内容は自分自身を好きではなかった少年とある病を抱えながらも前向きに生きる少女が出会って初恋し、二人でゆっくりと愛を育てながら、最後には幸せな結婚をするという、穏やかな恋人達のお話でした。
黒髪黒目に生まれ、誰からも愛されない魔性の者として忌み嫌われる自分を好きではなかったミグシスと、片頭痛を抱えながらも前向きに生きるイヴは雷鳴の夜に出会いました。その出会いが、二人の"隠された物語"の始まりでした。その後、二人は10年以上掛けて、ゆっくりと愛を育てて、この4月に婚約しました。金の神は、その4月に婚約した二人が皆に祝われながら、中庭で昼食を食べた時点で、金の神が見たい”隠された物語”のハッピーエンドと認めました。
”僕のイベリスをもう一度”の乙女ゲームは、10通りの恋愛が出来る物語です。悪役辞退したイヴが片頭痛の痛みを抑える鎮痛剤の治験のために学院で入学試験を受けた日から、乙女ゲームは始まりました。
何故ならイヴの受験した学院には、イヴに初恋したエイルノン、エルゴール、トリプソン、ベルベッサーの4人の攻略対象者達と、イヴと同じようにヒロインと悪役令嬢の立ち位置にいるピュアが、すでに在籍していて、おまけにイヴの死亡フラグを打破しようと、サポートキャラの保健室の先生の修道女のルナーベルや仮面の先生に扮していた銀色の妖精の守り手達が学院にいたからです。
イヴが学院に入寮した日に保健室の先生はアンジュに代わり、仮面の先生はセデスとグランが兼務し、またグランは若先生も兼務し、スチルには出てくるがセリフは一切ない老先生は、セロトーニとライトが代わり、同じく名前は出てくるがセリフのないリーナはソニーに代わり、名前のない寮監夫婦はマーサとノーイエ夫婦に代わり、二名のコックはリングルとアダムに代わり、……ついでにグランを”王位を持たぬ王”と慕うトゥセェック国の一線を退いた前王と重鎮達が、孫娘のように溺愛しているイヴの傍にいたいと、学院長と老齢の教授達に……勝手に代わっていました。
神に見せる物語の登場人物達は、大衆劇の役者と同じように名前と見た目が同じなら、中身が誰であろうと問題ないと1月の入学試験で捕獲された金の神がスクイレルの大人達に了承させられたので、問題なくイヴは大勢の味方達に守られながら入学式を迎えました。(注※イヴはイヴのままですが、僕イベのヒロインは”あなた”なので名前変更が出来、またイヴと同じようにヒロインと悪役令嬢を兼務するピュアがオリジナルネームのままの”ピュア”という名前なので、問題なしと判断されています)
ただ……この僕イベという乙女ゲームではヒロインが恋愛を成就させるには、悪役に虐められることが必須条件だったのですが、イヴもピュアも悪役不適合者であり、また学院にいる全ての者達も、彼女達を虐める者ではなかったので、金の神は持病を悪役と位置づけました。
イヴは入学式前にハプニングイベントに遭遇した時、動かないを選択して、攻略者4人と出会うフラグをへし折って、助けをミーナに扮したミグシス一人だけに求めていました。また攻略者4人もイヴがハプニングイベントに遭い、苦しんでいたとき、誰もイヴを助けなかったことで、イヴと4人とのルートは完全に消滅してしまいました。悪役に苦しめられていたイヴを助けたのは、入学式前に体調を崩したイヴを心配し、セデスに頼んで、隠しキャラの仮面の先生に扮してイヴを見守ろうとしていたミグシスただ一人だけでした。
イヴは3才から片頭痛によって10年以上も苦しめられ、片頭痛と戦い続ける戦士でした。そしてミグシスは健気に片頭痛に立ち向かうイヴをずっと傍で支えていたので、僕イベの乙女ゲーム内で発生するハプニングイベントの回数を余裕で超えるイベントを二人でクリアしたと金の神は認め、4月の婚約でミグシリアスルートのハッピーエンドを迎えたと認定しました。
同時にイヴと同様ヒロインと悪役令嬢を兼務するピュアは幼い頃から蕁麻疹を煩い、その事で長年、自国の王弟殿下と貴族に苦しめられていたピュアが、王弟殿下の血を引くジェレミーと婚約したことで友情エンドも終了したと、金の神は認定しました。
さらには、この6月の初日に攻略対象者達の謝罪を受け、彼等にもイヴとミグシスの婚約を祝してもらったことで、逆ハーレムエンドも終了したと認めた金の神は、4つのハッピーエンド同時終了を持ってして、イヴは”僕のイベリスをもう一度”の乙女ゲームを完全に終了させたと認定したのです。




