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悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”僕達のイベリスをもう一度”~6月
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※6月の三者面談と、その後のエイルノン達④

 その後……エイルノン達4人は、彼等の初恋の人であるイヴを見かけると、初心(うぶ)だった少年時代の心がほんの少しだけ疼くものの、彼等は()()()()だと思っている男達の魂を持って生まれてきた心優しい青年達だったので、初恋を貫き通して結ばれている二人を見るのが何よりも幸せだと、強く心の奥深くで感じていました。


 だから彼等はあの時、共同浴場で共に涙した男達と熱い漢の友情を交わした後は、皆と一緒にイヴとミグシスの恋を()()()()()()()()となりました。






 6月も十日を過ぎようかというころの、ある日の夕方。学院の男子寮の談話室に集まった学院生達は、暑苦しい夜を涼しく過ごすために怪談話をしていた。毎日の雨でジメッとしている季節でもあり、その日はムシムシとした暑さがあり、男子寮の者達は涼を感じようと一人一つずつのとっておきの怪談話を披露し始め、そこに集まっている者達が一巡したころには、皆が顔を青ざめさせて、少しの物音にでも飛び上がって驚くほどの効果が出ていた。


 このまま怪談話をお開きにしたら、夜トイレに起きてもベッドから出られなくなる……と思った寮の面々は少し趣向を変えることにして、学院の七不思議について話し始めた。


「じゃ、学院の七不思議その一!兄貴的存在の人物が、熊からイケメンに進化した!」


「……おい、それって俺の事じゃないよな?」


「ああ、それってトリプソンが、イヴと()()()()()()()にカッコ良く思われたくて、お洒落しただけだよね!」


「……()()()。お前、俺の黒歴史をさらっと……」


「学院の七不思議その二!ポッチャリな人物が、一週間で肉団子からイケメンに進化した!」


「うわ!それって、私の事だよね?」


「ああ、それはベルベッサーが……以下同文」


「エルゴール!何だよ、以下同文って!ちょっと前までの博愛精神はどこいったんだよ!なんか最近冷たいよ!」


「そうですか?……ああ、6月の初日から、つい最近まで、ミグシスさんの女装で傷ついた被害者の友の会の皆さんを慰めることに奔走していたので、少しやさぐれてしまったのかもしれませんね……」


「え?あれで慰めていたの?ずっと放置だったのに?」


「学院七不思議その三!皆の妹的存在である人物の胸が一夜にして「わぁ~!ストップストップ!」」


 談話室にいた者達は、()()()を話そうとしていた男子学院生の口を慌ててふさぎ、辺りをキョロキョロと見渡した。


「……大丈夫だよな。女子寮とここは離れているんだ。聞かれていないよな?」


「ふぅ~、危ない危ない!あのな、お前!それだけは口にしてはいけない、とっても怖~い七不思議なんだぞ!……僕達だって、その七不思議の理由を是非とも知りたいところだけどさ。その人物の胸を見ても、胸の話をしても、どこからともなく黒狼が魔王降臨してきて……お前消されるぞ!あいつ、すっごく、すっごく大人げないんだからな!


 だからあの人物については、もれなく魔王がついてくるから、なるべく見てはいけないし、頭の中だけで妄想しても何故かバレて、あいつに容赦なくヤラレルから、最近では僕達は、あの人物のことを危険人物認定しているんだぞ!」


「もしかしたら、もう彼の耳に、この話が届いているかもしれませんよ?」


「エルゴール、それマジ洒落にならないから、それ以上言うの止めてくれ!ミーナお姉さ、いや、ミグシスってさ、本当に地獄耳なんだから!……なぁ、もう最近のことを七不思議にするのを止めて、以前からある話にしようぜ!」


「じゃ、こういうのはどう?学院の七不思議その四!学院にただ一人の特Aクラスの人物の正体!性別と名前しかわからず、誰もその素顔を見たことがないんだ」


「ああ、そう言えばそうだね。でも誰かが興味本位に、あの黒い覆いを取ろうとすると、どこからともなく、()()()()()()()が魔王降臨するから、近寄れないんだよね!」


「それなら最近学院の七不思議その五!に入った話の方が不思議だよ!一年生の平民クラスは15名のはずなのに、数えるたびに人数が多かったり、少なかったりするんだよ」


「そうそう、イヴ以外にももう1人、このクラスにいるピンク色の髪のスタイルの良い美女にも近づくと、これもまた金狼が魔王降臨して……以下同文なことが起こるから近寄っちゃいけないんだよな!」


「おいおい!そんなのばっかりかよ!」


「何だか……怪談よりも怖いから、そろそろ話は止めて、皆で夕食前に共同浴場に行かないか?」


「?ん?お前びびってるのか?大丈夫だよ!あいつら近寄りさえしなければ、威嚇を放ってくるだけで、()()は何もしてこないはずだから……」


「何だよ、一応って!?マジ、こえーよ!」


 男子寮の寮生達は学院の七不思議をその五までしか言わずに、それぞれが風呂の用意をして15分後に共同浴場に集まろうと決めて一時解散した。足早に部屋に戻る寮生の中の誰かが、残りの七不思議を尋ね、誰かがそれに答える声が廊下から聞こえてくる。


「……うん、残りはね、仮面の先生が三人以上いるように見えるとか、老先生が二人以上いるように見えるとか、若先生が二人以上いるように見えるとか、女子寮の防衛が城よりも強固だとか、警備員が3カ国から集まった精鋭騎士達だとか、姉妹校の学院長がバーケック国の前女王そっくりとか、今年の一年生のは実は別名、銀色の妖精の守り手育成クラスと言われているとか、ここの学院長がトゥセェック国の前王にそっくりとか、老齢の教授達が前王の家臣だった国の重鎮達にそっくりとか……だったかな?」


「へぇ~!……って、なんか多くね!?」


 七不思議が七以上あると知った学生達は、何だか怖いと思い、各々が急いで用意して共同浴場に集まった。






 同じ日の夕方、女子寮の談話室でピュアがイヴや他の女の子達と女子だけで話がしたいと言ったので、ミグシスとジェレミーは話が終わるまで食堂で待つと言い、談話室を退室していった。


 しばらく女子達だけで話した後、会話の流れから薬草浴の話になり、ピュアは聞き慣れない言葉を聞いたので、率直に質問をした。


「薬草浴とは何ですか?」


 ピュアの質問に12才で薬草医の資格を所得しているイヴが、簡単な説明をした。


「薬草浴はお風呂に薬草を入れて入浴することですよ。薬草浴はヨモギやショウブ、ゆずやミント等の薬草を湯に浮かべて入浴することで、疲労回復や肌荒れ予防、血行促進などを促すのです」


 ピュアは薬草の入ったお風呂に入ったことがないと驚いたので、そこにいた女子学院生達が、それぞれのお勧めを話し出した。すると、そこにいた一人の女子学院生がピュアに、ある薬草にはくれぐれも注意が必要だと言った。


「まぁ、何の注意ですか?」


「ミントの精油を入れすぎたら、夏場でも尋常じゃなく寒くなるから、決して入れすぎてはいけないのよ!」


「え?夏なのに、寒く感じるのですか?」


「ええ、それはもう……。何枚も毛布をかぶってもブルブルと震えるから、絶対に気をつけてね!」


「わかりましたわ!」






 女子寮で、そんな豆知識が披露されていたころ、共同浴場で入浴を終えた男子学院生達は、再び皆が談話室に集まっていた。


「う゛~、寒い!何だ、これ?」


「わ~、寒い寒い、毛布を横取りしないでよ!」


「何で風呂に入って、こんな寒い目に合わなきゃいけないんだ!怪談話、必要なかったじゃん!!」


「そうだそうだ!誰だ、今日の風呂にミント精油を大量に入れたのは!?」


 歯をガチガチと鳴らせて、部屋から毛布を取ってきて身を寄せ合っているエイルノン達は、一人平気な顔をしているエルゴールをジト目で見た。


「なんで、お前だけ平気なんだよ!」


「ああ、私には神のご加護がありますからね。何だか……妙な胸騒ぎがしたので、共同浴場には入らなかったんですよ」


「!?え?それって……黒い狼的な胸騒ぎ?」


「いえ、黒と金の狼的な胸騒ぎですね」


「「「やっぱり、気づかれてたのか?!」」」


「ヤバい、マジあいつ等、怖すぎる!」


「そういや今日の夕食は、冷やしトゥセェック麺だそうですよ?キンキンに冷やした料理ですから、暑い季節にピッタリの夕食で嬉しいですよね」


「「「ええ~!!本当に容赦ねーな!!」」」


 その日、男子学院生達は怪談話よりも怖い狼二匹への恐怖と、ミント風呂後の寒さのために独り寝が出来ず、皆はそこで雑魚寝をすることとなり、男子学院生達は、その後、さらに結束力が強くなり、()()()()()()()にも、二組の幸せな恋人達の邪魔は、けしてしないと誓い合った。






「ね?これって、もう()()()()()()()()って、言ってもいいわよね?……それにしても()()()イヴちゃんにくっついて来て、異世界を渡ってきた魂だけあって、マジ鬼怖いよねぇ。


 彼は私から9年も隠れ続けられたし、銀の神が私に付き添って下界に降臨したせいで、彼には()()()()()()()()()()()()()という称号がついてしまってね……、イヴちゃんを狙う者の気配には超敏感になってしまったの。イヴちゃんを守るためなら、魔王級の威嚇を放てるようになってしまったんだから、愛の力って凄いわよねぇ……」


「「ま、魔王級って……」」


 兄神達がドン引きしていることにも気づかず、金の神は瞳をキラキラと潤ませて言った。


「ああ!人の愛の力って偉大だよねぇ!やっぱり物語は恋愛物語に限るわよね!よし!私も修行が終わったら、素敵な恋をしようっと!さぁ、兄神様達、修行頑張って行きましょう!」


「「あ、ああ、そうだね、そろそろ行こうか……」」


 ……こうして3兄弟神達は、自分達の修行のためにこの世界から旅立っていき、これ以降、この世界に神が物語を再現させることは二度となかった。

逆ハーレムエンドというよりも、魔王エンドと言うべきかもしれませんね。女子寮での話は、また後日に。

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