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悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”僕達のイベリスをもう一度”~6月
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綺麗なお姉さ……お兄さんは好きですか?③

 涙を浮かべ抗議の声を上げるトリプソンに続き、すでに泣いているベルベッサーが涙声で言った。


「わ、私だって再度、恩師を訪ねるという父について行く前から、父の恩師の手紙で彼女が村の男の子達にからかわれて困っていると書かれていたのを父に聞いていたから、最初に会った時に助けられたお礼に彼女を守ろうとしてただけだよ!


 自国の男爵令嬢に太っていることをさんざんにひどく言われたのが辛すぎて、その後に私は一時痩せていたんだ。……それで彼女にも太っていた私のことを思いだして欲しくないなと思って、名前を伏せて普通の騎士の子だと名乗ってリン村にいた男の子達が、彼女を新参のいじめっこから守ろうと結成した”イヴの兄様隊”にトリプソンと一緒に入隊して、少しの間だったけど、新参者のいじめっこの男の子達からトリプソンと一緒に守ってたんだ!


 ……なのに、すっごく綺麗なミーナお姉さんが私に微笑んで……。ああああっ!!なんてこと!?折角痩せて、二人にカッコ可愛いって言われたかったのに!うぎゃ~~~~~っ!!私の初めての……の時の夢が、うわあああ~!!止めてくれ!私の大人の階段が~、あああ!なんで、この男が私のああああああ!!」


 エイルノンやエルゴールは、トリプソンやベルベッサーの後半の言葉に、思春期に大半の少年達が体験する……あれらを思い浮かべ、何と言って慰めたらいいのかと回りを見回し、イヴの同郷の者達が皆、トリプソンやベルベッサーのように呻き苦しみ悶えだしたので、顔を引きつらせてしまった。


((お前達まで、そうだったのか……))


 とエイルノンとエルゴールは生暖かい気持ちで同情し、罪深い魔性の女……じゃない魔性の男のミグシスを皆が、抗議の気持ちをこめて見やったが、ミグシスは意に返さなかった。


「君達には悪かったと思うけど、あれはあの時、俺に出来る、唯一のイヴを守るための穏便な方法だったのだから後悔はしていないよ。リン村に次々やってくる新参の少年達も”イヴの兄様隊”の者達もベルベッサーも……イヴの実兄のような存在になると誓っていたトリプソンでさえも、内心はイヴと仲良くなりたいし、出来たらイヴに一人の男として好かれたいと思っているのが見え見えだったから、イヴを守るためにイヴの弟達と俺は組んで、念には念を入れたんだ」


 イヴの双子の弟であるロキとソニーは姉のイヴのことが大好きだった。だから大好きなイヴがずっと文通している人がいて、その人のことをイヴが、ずっと恋い慕っていることを二人は知っていたので、姉がその人に再会するときまで、他の男達から姉を守ろうと、護衛をしていたミーナにずっと協力をしてくれていた。


 二人はミーナがミグシスだと知らないまま、9年間家族のように育ったので、真相を知らせたときは、とても驚かれたが、二人も()()()()()の者だったので、すぐに気持ちを切り替えてくれ、今ではミグシス義兄様(にいさま)と手紙に書いてくれている。ミグシスは顔を手拭いで拭い、言葉を続けた。


「……まぁ、トリプソンだけは他の者よりもイヴのことを妹のようだと一番深く思っていて、兄としてイヴを守りたいという気持ちが一番強かったから、イヴの傍にいることを俺達は後で許したんだ。だからイヴは君のことだけは()()()()()として記憶しているけど、他の者のことはイヴは全く覚えていないから、初対面と同じなんだ。しかもイヴは”イヴの兄様隊”には、あまり良い思い出を持っていないから、君達のことを怖がってるんだよ。イヴは普通の女の子だからね。だから今後は後をつけ回したり、馴れ馴れしく近寄ったり、手紙は送らないでくれ。イヴが怖がるからな。イヴを怖がらせたら消すよ。……()()()()()。イヴが覚えていなくても、それは俺のせいなんだから、イヴを恨まないでくれよ。逆恨みで恨んで、イヴを虐めたら本気で消すからな。……()()()()()


 ミグシスの言葉にエイルノンは呆れ声を出した。


「お前ね……何が、なーんてね……だよ!全然冗談に聞こえなくて笑えないよ!お前って昔から、本当に容赦なさすぎ!たった7才の僕に殺気をむけてくるわ、女装して、いたいけな少年だった彼等のハートを奪うわ、冗談には思えない、本気の威嚇や牽制をするなんて……ホントにホント大人げないぞ!」


 ミグシスはエイルノンの抗議にも、平然と言い返した。


「俺がしたことは、サリーさん手作りの補正下着を着て、女性に見える体型と化粧をして、彼らの前でニッコリと一度だけ、微笑んだだけだよ。だって例えイヴを守るためとはいえ、イヴ以外に愛の言葉なんて、言いたくはないからね……。微笑まれたぐらいで心変わりするということは、そこにいる彼等やリン村の男の子達のイヴへの想いは、()()()()()()()と言うことさ」


「「「うっ!」」」


「そ、それを言われると何も言い返せない!」


「確かに俺は胸が平らで幼いイヴよりも、体がボン・キュッ・ボン!な大人な女性の色香の方に惹かれ、イヴのことは小さな妹のようにしか思えなくなってしまったんだ……」


「「「僕も(私も)(俺も)!」」」


「そうだよ、ミーナお姉さんは俺達に極上の笑顔を一度くれただけで、それ以後はイヴの守護獣みたいに、俺達をイヴに全然近寄らせてくれなかった……」


「そういや、そうだった……。巣の中の子どもを守る親みたいだって、村の大人達は笑ってたけど、俺達を追い払う目は尋常じゃなく、マジ怖かったよな……」


 ミグシスの言葉にしょげていく男達に、ミグシスはさらに、牽制は当たり前だと言った。


「それに牽制は当然だろう?あれだけ世界一可愛くて、世界一心が綺麗で、世界一優しくて、何もかもが素敵可愛いすぎる、俺の最愛のイヴなんだぞ!イヴは俺の大事な人なんだ。誰にも奪わせたりするもんか!自分が愛しく思うイヴを他の男から守るのは当然のことだろう!じゃ、もういいかな……、そろそろ風呂を出るよ。あんまり()()()のそばにいると、イヴが心配するから」


 ミグシスの言葉にエイルノンが、ブハッ!と咽せた。


「お、おま!?頼むから、それ、ホントに誤解を解いてくれよ!今日イヴに会ったら、『まだミグシスを狙っていますのね!私、ミグシスが大好きだから、諦めて下さい!!』……って、お前をギュッと抱っこしながら、上目遣いで睨まれた僕を憐れだと思わないのか!」


 ミグシスは、その時の状況を思い出して、相好を崩した。


「うん、あれは嬉しかったなぁ……。世界一可愛いイヴの、世界一可愛いヤキモチ……最高可愛い。俺、愛されているんだなぁって、すっごく幸せだった。ギュッと抱きついてくれるし、可愛いイヴの独占欲が、すっごくすっごく嬉しくて俺、あの時、もう教会に駆け込んでやろうかと思ったよ。……そう、イヴに愛されているのは俺で、君達じゃない!エヘヘ……、俺は本当にイヴに愛されているよな。すっごく幸せだ……、俺。


 この幸せを俺は絶対に何が何でも手放すものか!俺からイヴを奪おうとする者は、絶対に容赦しない!徹底的に潰す!いいか、よく聞けよ!俺とイヴは相思相愛で、二人の絆は永遠なんだ!イヴは俺を愛してくれているし、俺だってイヴだけを愛している!俺は誰にもイヴを渡さない!相手が神だろうが悪魔だろうが、絶対に負けない!わかったな!……じゃあ、な。ああ、エイル達は後で中庭に来てくれ。イヴと二人で待っているから」


 ミグシスはそう言って、先に浴室を出て行った。


「うっ、うっ!ミーナお姉さんがマジハンパなく超怖いお兄さんだったなんて……」


「あれ、絶対に本気だぞ!マジ狼の目してた。俺達これ以上、二人に近寄ったらヤラレルぞ」


「ヒィッ!?ああ、恐ろしい!!」


「あんな魔王みたいな恐ろしい男に俺達は恋をしてたなんて……。今、想いを寄せている人の性別も確認したくなってきた、俺……」


「僕も……」


「エイルったら、あんな怖い狼が好きだったなんて、物好きな……」


「ッ?!だから、誤解だってば!うっ、うっ、うっ……。僕は誤解だって何度も言ってるのに酷い……う、うわあああ~ん!!」


 ミグシスがいなくなった大浴場は、自分達の思春期に綺麗なお姉……お兄さんに恋をしていた事実を知って、衝撃を受けて泣いている者達達であふれかえり、エルゴールは、このうっとうしい男達を……新たに泣き出したエイルノンも含め……、皆を慰めねばならない役回りになりそうな予感に、ため息をつくしかなかった。

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